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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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三つのこと

 俺の言葉に、全員が一時沈黙し――こちらはなおも語り出す。


「天使の遺跡の中には、今回の敵に関与していた場所も存在していた。よって、あの敵がなんなのかを調べるには天使について調べるのが一番いいと思う」

「それは存命している天使を探すのか、それとも遺跡を調べるのか?」


 アナスタシアの問い掛けに、俺は少し悩み、


「できることなら、天使に直接聞いてみたいけどな」

「……可能性があるのは、マータッド大陸じゃな」


 俺の言葉に対し、アナスタシアが腕を組みながら語る。


「あの大陸とは国交もある故、船で行くことができるぞ」

「確か帝国って、鎖国していたよな?」

「ネフメイザがこの戦いに際し行っていたことである以上、すぐにでも解除できる」


 それなら移動手段については大丈夫だな。


「そしてルオン殿、魔王について調べることは可能なのか?」

「魔王がどういった存在なのかを含め、調べるには魔族が本来住んでいる場所に行かないといけない」

「魔族が住む場所、ですか」


 ソフィアが神妙な顔つきで呟く。


「この世界にいる、というわけではないんですよね」

「そういう奴らもいるけど、魔王はおそらく違うと思う……天使が住む世界を天界と言うけど、魔族が住む場所は魔界……この世界とは違う、彼らが作り出した世界だな」

「その魔界の入口が、どこかにあると?」


 リチャルの問い。俺は即座に頷いた。


「そういうこと……俺は物語を通して、その場所を知っている。で、もしできれば天使や魔族達が力を結集した武器も得たいな」


 ま、手に入れられるかは実際現地に行ってみないとわからないところがあるので、今はなんとも言えないな。


「なら、どちらを先に?」

「正直、どっちでもいいんだけど」

「ならば、ルオン様のご判断で」


 ソフィアの言葉。俺はそれに頷き、


「わかった……どうするかは、帝都に滞在中考えるとするよ」


 ――それで話は終わり、夜は更けていった。






 結果から言えば、ネフメイザが時を巻き戻した時点に来ても、何も起きなかった。

 その間に帝都の復興は進む。俺やソフィアがやることは特になく、とりあえず腕がなまらないように訓練をする程度で、暇を持て余すような状態となっていた。


「ま、その方が俺としてはいいけど……」


 呟いた時、部屋にノックの音が。


「どうぞ」


 返事をすると、ソフィアが入ってきた。


「失礼します、ルオン様。ロミルダのことについてお話が」


 ――ソフィアはロミルダと話をして、今後の身の振り方を共に考えていた。そしてようやく、結論が出たらしい。


「まず、ロミルダは戦う意思を持っています……この大陸にいられないことについては理解しているようですし、私達と共に行くことも考えているようです」

「……協力してくれるということか」

「はい」


 ――ロミルダの能力は俺にとっても魅力的ではある。将来どういう形で敵と戦うのかはわからないが、戦力は多いに越したことはない。


「ロミルダがどう考えているのかはわかった。けど――」

「わかっています。無理矢理つれていくようなことはしませんよ。城を出る日をロミルダには伝えていますから、それまでに答えは出すかと思います」

「わかった。なら俺もロミルダの意思に従うことにするから」

「はい」


 ソフィアが部屋を出る――そして俺は、ふうと息を吐いた。


「神霊と竜人……そして次は天使と魔族のどちらか、か」


 ――天使が関わった話はシリーズものの物語で二作目。そして魔族については三作目に当たる。特に二作目は人気で、ファンも多かった。だからこそ五作目まで続けられたのかもしれない。


 ただ二作目の本編は時系列的に言うと今から二十年以上前だ。よって既に本編は終わっている……また三作目は通常のRPGとは少し趣が違うため、どうなるかは現地へ行ってみないとわからない。


『どちらを先にする?』


 ガルクが突然俺の右肩に出現。


『天使に関する情報集めと、魔王の真実……どちらも重要だが、魔界に行くというのなら戦力増強は必要か?』

「俺とソフィアは問題ないだろう。ロミルダも皇帝の竜魔石の力を所持している以上、そう問題にならないと思っている」

『リチャル殿は?』

「……魔界というのが俺達にとってどれほど危険なのかによって考えも変わってくるな。まずは魔界の入口がある現地へ行って、調べないと」


 とはいえ……俺達は魔王を打倒した存在。魔界に住む者達がその事実を知っているかどうかわからないが、警戒はすべきだろう。


「魔族に対抗する武具は持っておきたいところだが……ガルク、その辺りどうだ?」

『可能ではあるが、多少なりとも時間を要する』

「そっか。ま、天使達から武具を得られる可能性もあるし、そっちを先にしようかな」

『決まりだな』


 ガルクの言葉には、どこか期待するような雰囲気があった。


「ガルク、何かあるのか?」

『いや、単に天使という存在がどういうものなのか興味があるだけだ。マータッド大陸にいるという天使……しかし過去には我らの大陸にもいた』

「ああ、そうだな。なぜ天使達がいくつもの大陸を離れたのかは……特に明かされていないな」


 ゲームならば仕様上、といってしまえばそれまでだが、現実になると……何かしら理由があるはずだ。


「その辺りを詳しく調べるのもいいか……」

『うむ。しかし、今回の戦いを通し敵が明確になったのはいいが、相当難しい戦いとなりそうだな』

「ああ」


 返事をした後、俺は『彼』と斬り結んだ最後の瞬間に見えた、青年を思い出す。

 あれは『彼』本来の姿なのか? それとも、もっと別の……可能性として考えられるのは――


「……賢者の存在」

『うん?』

「この物語の重要人物である賢者についても、調べた方がいいかもしれない」

『賢者か……魔王を封印した存在であり、ソフィア王女の先祖だな』

「そうだ」

『彼もまた、関係していると?』


 ガルクの言葉に、俺は肩をすくめる。


「この賢者という存在は、実を言うと物語の根幹で色々と関わっている」

『関わっている?』

「一作目の物語の中で、精霊や竜などの様々な武器を得たわけだが……そうした物には賢者の力が大きく関わっている」

『賢者の?』

「賢者の力が封じられた宝玉が、そうした武器を生み出すきっかけとなった……賢者は生前様々な種族と交流を持ち、なおかつ自身の力を宝玉に封じたらしい。つまり賢者は、精霊を始めこの世界に住む様々な種族に関与していることになる」

『興味深いな……しかし我々が住むこの時代においても賢者は過去の存在だろう? そうした宝玉がこの世界のどこかにあるかもしれんというのか?』

「その可能性は十分ある……よって、ヤツを倒すために賢者のことを調べる必要があるかもしれない」


 もしかすると、彼は俺達が遭遇した『彼』のことを何か知っていて対策を……そういった可能性も考えられる。


「まとめると、俺達がやることは三つ。天使、魔族、そして賢者のことについて調べること。場合によっては、天使や魔族の力を結集した武具を得る」

『武具の方は厳しそうだな。特に魔族の方は』

「正直、こればっかりは相手方と話をしてみないとわからないな」


 魔族から武器を提供されるなどというのは、想像もつかない……さらに言えば、俺達の方だって大陸を蹂躙されたわけだから、心理的な抵抗もある。


「ま、これについてはなるようにしかならないな」


 結論を呟くと、俺は席を立った。


「体でも動かそう……近いうちにこの城を離れることになる。旅に向けて準備もしないと」

『うむ』


 ガルクの返事を聞いた後、俺は部屋を出た――


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