表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/1082

悪魔の襲撃

 賊の根城へ向かう用心棒達は総勢四十名少々。砦を守る人員もいるためこれで全員ではないが……キャルンの話によると最高で百人くらいはいたらしいが、色々あって減ったらしい。減った人数としては正規の兵士になったケースもあったようだが、盗賊に戻り今から成敗される人間も含まれるのだろう。


 行軍する間に盗賊団について話を聞く。ゲームで内情を把握する俺としては新鮮さはカケラも無かったし、ソフィアも推測していたのかそれほど驚いていない。だが疑問は感じたようで、口を開く。


「なぜ、彼らは裏切ったのですか?」

「さあね。テオルさんは実害が出ている以上交渉の余地なしとしているから、結局わからないままね」


 ……まあ、深い理由などないのだろう。


「わかりました。それで、私達はどう動けば?」

「相手の本拠は洞窟なんだけれど、入口付近で逃げ出すのを防いでほしいってテオルさんは言っていた。場合によっては前線に立つことがあるかもしれない。その場合は改めて言うって」

「わかりました……頑張りましょう」


 ソフィアの言葉にキャルンは「うん」と答え……突如申し訳なさそうな顔をした。


「えっと……改めてなんだけど、財布を盗ったりしてごめんなさい」


 言及に対し、ソフィアは真剣な表情となる。それと同時、俺はソフィアの視線がキャルンを見据えながらも別の「何か」を捉えているように感じられた。


「……あなた方は一定の信頼を得て用心棒として給金をもらっているはずです。あなたの行為はその信頼を崩す行為……もうやめるべきだと思います」

「はい、もうやりません」


 キャルンは言う。ソフィアの言葉は叱責というより忠告という雰囲気……心の底から怒っているのならこうして悠長に話をすることもないだろう。盗んだ行為を軽んじているわけではないが、それ以上にキャルンに対し何か感じている様子。


 これはキャルンがゲームで仲間になるキャラだから何かがあり、ソフィアがそれを察しているということなのか……? 財布を盗られた時点であまり言及がなかったのは、その辺りの事と何か関係があるのだろうか。


 そう仮定した場合、ギルバートはどう感じられたのかが気になるな。この辺り詳しく聞いておけばよかったな……戦いが終わった後訊くことにしよう。


 そうしたやり取りを行う間に、用心棒達の空気に変化が。どうやら目標とする場所が近いらしい。

 ソフィアもそれを感じ取ったのか押し黙る。やがて見えたのは、山を背にして存在する、ぼっかりと空いた洞窟だった。


「行くぞ」


 テオルは声を上げると同時に用心棒達が一斉に動き出す。それはまさしく戦争の先陣を切るようなものであり――洞窟入口近くにいた見張りの盗賊が、慄き慌てて洞窟の中に引っ込む姿が見えた。


 それが演技であることは、イベント内容を把握している俺以外は悟れなかっただろうと思う。そもそも魔族と繋がっているという発想がテオル達にあるはずがなく、この後レッサーデーモンが仕掛けてくるなんて、想像の埒外だろう。


 テオルに続き他の面々も洞窟の中に入っていく。誘い込んで中でテオル達を食い止める間に、レッサーデーモンが入口から挟撃するというのが敵の作戦のはずで、俺達は洞窟入口で敵の群れを食い止めることになる。


 周囲を見回すと、キャルンを含め用心棒が五人、入口周辺を見張る。ノグは洞窟内に入り込んだらしく、見知った人物は彼女だけだ。


 しばらくの間は洞窟奥から金属音が聞こえ、さらに掛け声のようなものも聞こえた。ゲーム上洞窟内の敵はテオル達が片付けていたので、それに関してはたぶん心配いらないだろう……そう思っていた時、気配を察知。場所は俺達が進んできた森。


「……ん?」


 ソフィアもまた気付いた。さらに残っていたキャルンも同様の表情を見せ、入口を守っている他の面々も視線を送る。

 その瞬間――森からレッサーデーモンが出現した。


「な……!?」


 ソフィアは驚く。いや、彼女以外も……というか俺を除く全員が予想外という顔つきだ。


「なぜ、悪魔がここに……!?」


 誰かが叫ぶ。次いで森の奥からさらにレッサーデーモンが出現する。

 さて、戦闘だ……ゲームでは犠牲者は出なかったはずだが、気をつけた方がいいだろう。


 俺はソフィアを見る。剣を構え臨戦態勢に入ったので、アドバイスを伝えておく。


「今までの実力を出せれば撃破するのはそう難しくない。ただし、持っている得物には注意だ。何も持っていない場合は爪が武器のはず」

「わかりました」


 頷いた直後、レッサーデーモンが仕掛けてくる。迫るのは三体。しかし森から後続が出現しており、断続的に来るのは明白だった。


「このっ!」


 キャルンが先んじて動く。投げナイフを取り出すと、それをレッサーデーモンの足元に放る。それは地面に突き刺さったが――どうやら外したようで彼女は呻いた。


 今のはおそらく下級短剣技の『影縫い』だろう。影に魔力を込めた武器を突き刺すことによって一時的に動きを止める……ただ成功率はそれほど高くない。今のは影を刺すこともできなかったわけだが、当たってもきちんと成功したかどうかはわからない。


 三体のうち一体は洞窟入口にいる俺達へ向かってくる……ここで俺はソフィアに告げる。


「ソフィア、一体食い止めてくれ。俺は別の一体と戦う」

「はい!」


 言葉と同時、二体のレッサーデーモンが動いた。真正面に突き進んでくる奴に加え、残り二体は左右に逃げる。だから俺は左へ回った奴に狙いを定め、足を移す。一方ソフィアは剣を構え、右の奴を迎え撃つべく動き出す。


 そして用心棒達は残った中央を……そうして戦闘が始まった。防衛戦だが、さすがに片っ端から俺一人でなぎ倒すとあまりに目立つ……危機的状況になったらやむを得ないが、それはあくまで最終手段。ニードルウルフとの戦いを思い出し、部位破壊をして倒すように動くとしよう。


 まずは左手をかざす。そして放ったのは『ホーリーショット』――結果、迫ろうとしていたレッサーデーモンは右腕に直撃。肩から先が消失する。

 さらに向かってくる間に魔法を詠唱し、再度同じ魔法。今度は足元を狙い、左足の膝から下を吹き飛ばす。だがそれでもなお、悪魔は接近する。


 けれど動きが明らかに鈍い……俺は剣により一撃加え、今度こそ滅した。


 よし……心の中で呟きながら視線を転じる。ソフィアはレッサーデーモンと真正面から交戦。相手は持っていた長剣を振り下ろしたが、彼女は見極め避けた。

 彼女の反撃。風をまとわせ『疾風剣』を放つ。剣戟と風の刃が炸裂し、レッサーデーモンを大きく怯ませた。


 ここから彼女の動きは流れるようであり――素早く近寄ってもう一撃加えた後、左手を向け『ファイアランス』を放った。

 途端、業火にレッサーデーモンが飲み込まれる。それと共に体が崩れ消滅。問題ないようだ。


 そして用心棒達だが……キャルンが今度こそ『影縫い』を成功させ、さらに残りの面々が連携で剣を決める。連続攻撃によりレッサーデーモンはあっさりと滅し、無傷で勝利した。

 この場にいる用心棒達は、レッサーデーモンと単独で戦える能力を保有してはいない様子。だが連携により十分対処できている……これなら大丈夫そうだ。


 とはいえ断続的に悪魔はやってくる。長期戦になるのは間違いなく、能力の問題というよりは体力の勝負になってくるだろう。


「次、来るぞ!」


 誰かが叫び、素手のレッサーデーモンが近づく。援護しようと思った時、用心棒の一人が前に出て悪魔と対峙。真正面から攻撃を受け止める。


「ぐっ……!」


 呻くも彼は押し返し反撃に成功。そこでソフィアがフォローに入る。彼女もまた一撃入れ、さらに用心棒の前に出ながら立て続けに『疾風剣』を放ち――倒した。


 だが、その彼女へ悪魔が二体迫る。武器は長剣と槍……放っておけばまずいことになると直感した俺は、即座に動いた。


 ソフィアが長剣を持つ悪魔と戦い始めた直後、俺は走りながら『ホーリーショット』を放った。狙いは、俺から見てソフィアの奥にいる……彼女の横へ回り込もうと動く槍持ちの悪魔。


 弾丸は山なりの軌道を描きソフィアの頭上を通過し、見事悪魔の左肩に直撃。そこでソフィアは戦っていたレッサーデーモンを『エアリアルソード』で吹き飛ばしつつ後退し――間髪入れず、俺が割り込んだ。


 左腕を失くしたレッサーデーモンが向かってくる。ここで俺は魔導下級技『聖光剣』を使用。刀身に光を集め斬撃を叩き込む技で、放たれた悪魔の突きを避けると間合いを詰め斬り込み――滅した。


 そしてソフィアが吹き飛ばした相手だが――キャルンが再度『影縫い』を成功させ、ソフィアが『サンダーボルト』で撃破した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ