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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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用心棒達の戦い

「申し訳ありません。非常に助かりました」


 魔物を倒した後、兵達に礼を言われる。俺は「当然のことです」と返答。それから彼らは町の中を確認するべくこの場を去った。

 一方、ノグとキャルンは俺達のことを見た後またも相談を開始した……ゲームでは戦闘を見た彼らが協力して欲しいと申し出るのが……果たしてどうか。


「なるほど、結構な使い手のようですね」


 ノグが言う。視線を送ると驚き半分、興味半分といった顔つきだった。


「お二方とも腕は十分のご様子……ちなみに、旅をしているとのことですが、その目的は?」

「魔族と対抗するため……とだけ言っておきます」

「なるほど。今はどちらに行こうとしていたのですか?」

「精霊との契約に東へ」

「となると、ノームですか……なるほど」


 俺とソフィアを交互に観察するノグ。キャルンもまた同様に観察しているのだが……少しばかり彼女は視線が鋭い気がする。

 少しの間沈黙が生じていたわけだが……やがて、ノグが口を開いた。


「……協力の件、少しばかり話をさせてもらってもいいですか?」

「どうぞ」


 というわけで俺達はこの場で話し合い開始。結果、俺とソフィアは彼らに協力することになった。






 ノグがリーダーに説明するということで本拠へ先に帰り、俺とソフィアはキャルンと共にゆっくりと当該の場所へ向かうこととなった。方角的には宿場町から北東。山岳地帯にある小さな砦が彼らの本拠地だった。


「元々、山岳地帯で演習をするために建設したらしいよ。今は使われていないみたいだから、私達が許可を得て使っているけど」


 キャルンが説明。ソフィアは財布がスラれたというのに彼女の話を親身になって聞いていたりする。用心棒という活動をしているためなのか、それとも他に何かあるのかわからないが……彼女達と協力して戦う以上その方がありがたいので、俺は角が立たないよう言及は控える。

 やがて俺達は本拠地に辿り着いた。この時点で時刻は昼前といったところ。


「よし、到着」


 キャルンが門番の男性に挨拶を行い、俺達はその後ろを追随。中に入ると真っ直ぐ進み、一番奥の扉に到達。キャルンは入らないらしく、扉を開け俺達を中に入れる。そこには――


「待っていました」


 まず目に入ったのは、声を掛けたノグ。次に見えたのは彼の立つ横で椅子に座る人物が一人。

 灰色の髪に、柔和な笑みを伴った男性。優男という感じではないが、威圧感があるわけでもなく……気さくなお兄さんという感じがする。年齢は二十歳を少し越えたくらいだろうか。


 顔立ちはごくごく普通で綺麗なくらいの二重まぶたが特徴と言えば特徴だが、こんな砦でリーダーをしているようには見えないくらい肌が綺麗という……ずいぶんとアンバランスな人物だった。

 そういえば、肌が綺麗というのは攻略本の設定資料か何かに記載されていたな……そんなどうでもいい設定まで反映されているとは驚きだ。


「ようこそ、客人。話は聞いていますよ」


 ニッコリと、笑みを伴い彼は言う。おそらくこちらを少しでも安心させるためのものだろう……目の前の男性こそ、仲間キャラの一人であるテオル=オージェンである。


 キャルンとは異なり盗むなどのスキルは持っていないが、いくつか所持する固有技は全てが連撃系という手数で勝負するタイプであり、その特性上序盤は比較的使いやすい。ステータスもそれなりで、中盤くらいまでは主力の一人に据えてもいいくらいの人物である。実際、この一連のイベントはキャルンではなく彼を仲間にするためにやる人が多いのは間違いない。


 ただ、中盤以降はややステータスも見劣りし出す上、連撃系の技も火力不足になっていく。強力な武器を装備し補助魔法を駆使すれば手数で勝負できる場面も多いので物語後半も活躍はできるのだが……連撃系の技がメインというのが問題である。


 現実世界になってしまった今ではどうなのかわからないが、ゲームでは『三強』という、システム的に優遇され規格外の強さを持った仲間がいた。その内一人が連撃系の技で反則的な攻撃力を持つ人物であり……なおかつそちらは他にも強力な固有技を持っているため、中盤以降はテオルを外しその人物を仲間にするプレイヤーが多くなる。そうでなくとも上位互換に近い仲間が後半どの主人公でも加わってしまうため、さらに使用する可能性が減る。


 現実世界の今となってはその辺りの特性が同じなのかはわからないが……ともかくゲームにおける彼は、序盤に仲間になる戦士系で使いやすい部類なのは間違いない。


「それで、早速で悪いのですが……もしお二人がよければ、今すぐ盗賊団攻撃に加わって頂きたいのです」

「今から、ですか?」


 ソフィアが聞き返す。するとテオルは小さく頷き、


「無理を承知で言っています。実はノグ達が町へ赴いている間に盗賊団と戦闘があり、決戦という流れとなったのです」


 これはゲームの流れと同じだったので俺は驚かないが……ソフィアは驚き、ノグはなんだか申し訳なさそうにしている。


「現状、戦力は拮抗……しかしニードルウルフの群れを一蹴するあなた方が加われば、こちらが大きく有利になります」

「わかりました。話も早いですし、構いませんよ」


 俺は快諾。ソフィアを見るとこちらに従う気なのか小さく頷いた。


「では、早速準備にとりかかります。砦内には商人もいますので、必要な物があればそこで用意してください」


 テオルは席を立つ。俺とソフィアは退出し、砦内を歩き始めた。


「急ですね」

「そうだな。でもあっという間に解決しそうだし、旅に影響もなさそうな雰囲気だからいいんじゃないか?」


 応えつつ、ゲームにおける流れを記憶から引き出す。砦を出ると場面が変わって敵の本拠地へと辿り着く。盗賊の拠点は洞窟で、テオルを中心とした精鋭が踏み込む。主人公の役目は少数の用心棒達と共に、洞窟入口で逃げようとする敵を確保することなのだが……テオル達が攻める間に、悪魔が襲来してくる。


 盗賊達は魔族と手を組んでおり、今回の戦いは悪魔を利用しテオル達を一網打尽にする罠だった。そして主人公は洞窟内に悪魔が侵入するのを防ぐ……というのが、今回の戦いだ。


 悪魔、といっても俺が風の渓谷で遭遇したクリムゾンデーモンとは違う。確か一番能力の低い青いレッサーデーモンだったはず。人間の形をしているが頭部には口も耳も鼻も無く、ただ不気味な真紅の瞳だけが存在している。武器は爪を利用する者もいれば、剣や槍など武器を使う者もいる。一番厄介なのは弓を持っている奴。そいつは野放しにしておくと後衛を狙うため、ゲームでは優先的に倒していた。


 能力が低い、といっても序盤の敵と比較したら強い。とはいえ今のソフィアなら一騎打ちで戦っても十分倒せるはずだ。


 俺達は建物から出て、周囲を観察。用心棒達が準備を進めており、その中にはキャルンの姿もあった。

 そこで彼女は俺達に気付き、駆け寄ってくる。


「同行するってことでいいの?」

「ああ、よろしく」


 挨拶するとキャルンは「どうも」と答え準備のために戻っていく。用心棒の面々を見れば盗賊あがりにしてはずいぶんと理路整然とした動き。軍とまではいかないが、統制はとれているようだ。

 端の方にはテオルの言っていた商人らしき人物もいる。ソフィアになんとなく話を振ってみれば「必要ない」と返された。俺も同意見なので商人は無視しよう。


 やがて用心棒達は準備を整え門前で態勢を整える。するとテオルがやって来て、まずは俺達へ一言。


「準備は?」

「大丈夫」


 こちらが返答すると彼は頷き、


「全員、進むぞ! 今回の戦いで奴らに引導を渡してやれ!」


 用心棒達は吠える。士気の高さを肌で感じつつ……俺とソフィアは、用心棒達と共に移動を開始した。


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