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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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強行突破

 騎士達の魔力を感じながら、俺は攻撃を受ける――背中に叩き込まれた拳と、正面には氷の刃。前後から同時に仕掛けられ、俺にとっては逃げ場がない。


 次いで、後方にいる風の騎士ジュリアから風も飛来する。それは俺の右肩口を捉え、パアンという破裂音が生じた。

 地の力と氷、さらに風というまさしく精鋭の騎士の攻撃を一身に受けたわけだが……ダメージは皆無。


 そして、俺は何もなかったかのように足を前に出す。


「――何!?」


 背後にいるアレキアスが叫ぶ。渾身の一撃を叩き込んだはず――そういう声が聞こえてきそうだった。

 俺は構わず突き進む。衝撃は多少なりともあったが、動きに影響はまったくない。


 目の前にいるコンラートが剣を構え直し、対抗しようとする――俺は即座に踏み込み、相手が攻撃を開始する前に間合いを詰めた。

 刹那、コンラートも反撃するべく向かってきた。こちらとしては予想していた動作なので、先読みして剣を薙ぐ!


「くそっ!」


 悪態をつくコンラート。こちらの攻撃に対応しきれないと確信してのことか。


 すると、目つきに変化が。鋭く、また歯を食いしばるような表情をした。ダメージ覚悟で剣を受け、再生能力を活かして反撃に転じる、といったところか。


 この再生能力は、竜魔石の力で間違いない。俺が使う竜魔石の武器でも容易く再生することを鑑みれば、エクゾンの竜魔石効果と大きく異なり、再生特化の能力なのだろう。


 俺の剣戟を受けてどの程度応じられるかは不明な点も多いが……俺は構わずコンラートに狙いを定める。背後からアレキアスがなおも追撃しようとしているのが気配で認識しながら――『清流一閃』を繰り出した。


「っ!」


 短いうめき声を上げながら、斬撃をその身に受けるコンラート。すれ違いざまの攻撃に、彼は対応できない。

 精鋭の騎士からしてみたら、アベルの能力と合わせ挟撃する気か――そんな風に考えたかもしれない。だが、俺はその予想を覆す行動をとる。


 次の瞬間、『清流一閃』の勢いを殺さぬままさらに前進する。その狙いは、シャード。


「こいつ――!?」


 コンラートが声を上げた瞬間、ゴウッ、と魔力が渦巻いた。バルヴォの炎とアベルの『ラストオーシャン』の勝負――その結果は、アベルの勝利。


 首を一瞬だけ背後に向けると、青い波が一挙に騎士達へ注がれる光景が。ただそれは彼らを直接狙うとは少し違う。彼らの進路を妨害し、動きを制限するような意味合いだ。


「――分断する気か!」


 こちらの目論見を察したアレキアスが叫ぶ。とはいえ、気付いてももう遅い。

 俺は迷わず突っ走る。後方にいたジュリアとシャードの二人が迎撃態勢を整え、その直後俺が一挙に間合いを詰めた。


 剣が届く範囲……ジュリアが最初に斬りかかったが、俺はそれを風の刃で応じた。


「このっ――!」


 彼女はそれに対抗するべく風を放ったが、見事相殺。いや、俺の刃が残り、彼女は風にあおられて後退を余儀なくされる。


 よって、俺とシャードの間に阻むものがなくなった。


「狙いはこっちか――!」


 叫びながら果敢にも迫るシャード。影の力を用い、地面から黒き刃が生まれる。

 金縛りのような技以外に、自分の周囲にこうして刃を生やすといったこともできるようだ。他の戦士からすれば攻めあぐねる能力であり、面倒には違いない。


 けれど、俺にとっては何の障害にもならない。


 刃を無視するようにさらに間合いを詰める。結果、影が俺の体に突き刺さったが……当然、ダメージはゼロ。衝撃もほとんどなく、俺の動きに変化は一切なかった。

 驚愕するシャード。横からジュリアが風を収束する気配を感じ取ったが、それを無視するかのように、俺は容赦なく目の前の騎士へ向かって上段からの振り降ろしを――決めた!


「がっ!」


 苦悶の声。崩れ落ちるようなことにはならなかったが、動きを止めることには成功。これで周囲の人々の動きを止める、という最悪の事態は避けられる。

 しかし、油断はできない。ネフメイザがこの戦いを見ているとしたら、明らかに前回とは異なるものだと認識するだろう。もし魔力におかしな変化があったら、すぐにでもヤツの所へ向かえるようしたいところ。


「レスベイル!」


 ここで精霊を生み出す。瞬時に生まれた鎧天使は、攻撃を受け倒れようとしているシャードに追い打ちを掛ける。

 そこで、轟音が響いた。見れば、地の騎士アレキアスにカトラの創奥義『クリムゾンホーク』が直撃し、横手に吹っ飛んでいるところだった。


 さらにユスカがコンラートに肉薄し、氷を砕きながら攻勢に出ている。次いでエイラドが風の騎士ジュリアを狙うべく疾駆する姿。アベルもバルヴォを押さえており、連携をまったくさせず、戦況を有利に進めている。


 俺はそこで他の戦士達へ叫ぶ。


「住民達の避難を!」


 同時にレスベイルに周囲の魔物を倒すように指示を出す。俺の指示に多くの人間が従い、民衆達を守りながら後退しようとする。


「させるか……!」


 シャードが言う。見れば魔力を腕に集め能力を発動させようとしている。

 だが、俺はそれを許さなかった。さらなる剣を叩き込むことで相手の動きを制し、能力を封殺する。


 それによって相手も、俺の考えが理解できたようだ。


「貴様、こちらの能力を読んで……!?」


 そうだ――と返そうか迷ったが、返答は横薙ぎで応じた。苦しそうな表情を浮かべながら後退するシャード。一方ジュリアは援護しようと俺へ迫ろうとしたが、そこへエイラドが到着し、動きを止めた。


「君の相手は私だ」

「なっ……!?」


 即座に風を放つ。だが彼はそれを見切って避けた。


 状況は一気に優勢となった。当初の目論見通りに進んでいる。カトラは遠距離技によりアレキアスを封じているし、ユスカも衝撃波を駆使し氷を砕きながら戦っている。バルヴォについては不安もあったが、『ラストオーシャン』が彼を取り囲むように放つことで、その炎の力を満足に出せないようにしている。


 この状況で、あとはロミルダの魔法が完成すれば――しかし逆を言えばその魔法が完成しなければまずいことになる。

 再生能力を持つ騎士達を抑えるには、どうしてもそれを封じる必要がある。戦況はこちらが優勢だが、持久戦になればアベル達の力がもたないだろうし、第一ネフメイザの目論見通りとなってしまう。


 だからこそ、彼女がここで――そう考えた時、ロミルダの周囲から魔力が溢れた。


「発動したか――」


 まだそれほど時間は経っていないが、彼女もまた戦いに呼応するように魔法を構築できたのかもしれない。

 精鋭の騎士達がにわかに動揺する。さらなる追撃に警戒するような雰囲気だったが、誰も対応できない。


 一番近くにいるのはバルヴォだが、彼の炎は全てアベルの青い波によって阻まれる。炎が幾重にも放たれ壁となった青を焼こうとするが、全てかき消える。


「この力……何故だ!?」


 そして彼は叫ぶ。疑問を呈するのは、ネフメイザから何か聞かされていたからか?

 俺を含め色々と情報を持っていたのは事実だが、こちらが想定外の動きをして……いや、初動の時点で予定とは異なる状況となってしまったため、対応が後手に回ってしまったと考えるべきだろう。

 そして想定以上の力をアベル達が持っていることも理由に入るだろう……これは間違いなく、彼らが努力した成果だ。


 やがてロミルダの魔力が解放される――同時、この広場一帯に濃密な魔力が生じ、一気に拡散した。


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