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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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一斉攻撃

 動いたと同時、感覚が鋭敏になり集中力が増した――精鋭の騎士五人を視界に捉えながら、アベル達がどう動くのかも頭の中で理解できる。


 あらかじめ全員に騎士の特徴は伝えてある。よって自分がどの騎士と戦うのかというのは既に判断がついているようで、アベル達の動きはその目標を捉えている。


 対する騎士の布陣は、影の騎士シャードを一番後方として、その近くに風の騎士ジュリア。前衛には二人で火の騎士バルヴォに、地の騎士アレキアス。そして二人のすぐ後ろに、援護役として氷の騎士コンラートがいる。

 以前受け持つ人間として決めたのは、風の騎士をエイラド、火の騎士をアベル、氷の騎士をユスカにカトラが地の騎士。そして残る影の騎士を俺が先んじて討つ。


 いち早く影の騎士シャードを捉えたいところだが、その近くに風の騎士ジュリアがいることに加え、前衛三人を素通りとはいかないだろう。俺のことについては彼らも把握していると考えていいはずなので、まずは分断を図りたい。


「アベル――」


 名を呼んだ直後、彼の魔力が膨れあがった。一気に魔力が高まるのを感じ取り、騎士達も警戒する。


 それと共に、俺は足に魔力を込めた――ネフメイザはまだ俺達が情報を持っているのには気付いていないだろう。だが、俺が機先を制する形でシャードを倒せば、さすがに気付くはず。


 自らの手の内をさらし……そこからは、時間との勝負になる。アベルが技を放とうとするまでのわずかな時間の間に、俺は横にいるロミルダに視線を向けた。


 大丈夫か――そう伝えようとしたが、それを察した彼女は視線で俺に返答してきた。魔法は問題ない……そう語っていると、俺は確信できた。


 騎士達がこちらを迎え撃つべく体勢を整え始める。その中で一際先に動こうとしているのがシャード。その目的は、周囲にいる逃げ惑う人々を拘束し、俺達の動きを制限すること。これをやられると俺も本気で戦うのが難しくなるため、倒すのに時間が掛かってしまう……前回はこの策にはまったわけだ。


 とはいえ、こちらはできるだけの準備をしてきた。俺もそうだが、アベル達も騎士に合わせ鍛えてきた。もしシャードの策が実行されても巻き返せる可能性はある――ただ、ここは当初の予定通りにいきたいところ。

 そしてソフィアは――竜と対峙し、それを維持したまま。人造竜がどんな行動をするのかつぶさに観察できるが、まだ双方動かない。


 アベルの魔力収束が終わる。放つのは創奥義である『ラストオーシャン』だが、アレンジを施し自由に操作できるようにしている。騎士達の配置を見て、どう撃つのか判断し――


「来るぞ」


 騎士……アレキアスか。アベルがいち早く攻撃するのを察し、警告を発した。

 それに応じるべく動こうとしたのが、コンラート。アベルと同じように魔力を発し、その氷の力で俺達を足止めしようとしているのがはっきりとわかる。


 そうした中で俺は騎士を見据え、体勢を完全に整える――刹那、


「アベル!」


 名を呼ぶ。それに応じるかのように、彼は剣を――振った。


 魔力が迸り、青い波のような魔力が生じた。騎士達の中でコンラートが対抗するように魔力を収束させる。アベルの『ラストオーシャン』を相殺しようという魂胆なのか。

 そして青い魔力が一挙に騎士達へ放たれ――俺は足に集めた魔力を解放し、跳躍する勢いで足を踏み出した!


 アベルの『ラストオーシャン』が轟く中で、俺は騎士へ向かって疾駆する。その動きは騎士達にとって少々予想外だったか、一瞬注意をこちらに向けた。

 ユスカ達も動く。その動きに迷いはない。いける――


 ここでシャードが険しい顔つきを見せた。どうするべきか悩んでいるのか――本来、この時点で機先を制するように周囲の人々の動きを止めるはずだが、俺達に注意を向けそれが実行されていない。


 当初の目的を果たすか、それとも俺やアベルに狙いを定めるか――ネフメイザから事前に作戦を伝えられているはずだが、目の前の戦況にどうすべきか躊躇った様子。


 その時間は、間違いなく俺達にとって非常に価値のあるものだった。


 さらに間合いを詰める。俺はこの時点で前衛三人の間合い寸前にまで到達。前衛はこちらを見て――そしてアベル『ラストオーシャン』を見て、シャードと同様選択に迫られ、迷った。


 そうした中でコンラードがいち早く氷を放つ。狙いは、紛れもなく俺。

 好都合だった。俺ならば、どれだけ攻撃を受けようとも耐えられる――!


「無駄だ!」


 こちらは対抗するように剣を振る。使用する剣は、右手に封じ込められている物ではなく、竜魔石が含まれている物。

 騎士達が竜魔石を含んだ武器でなければ通用しないとわかっているため、常にこちらで戦えるようにしてあるわけだが……魔力を調整し、剣が破損することなく対抗できるだけの力を加える。


 氷が迫る。俺を凍らせようとする意図があるようで、アベルの創奥義と同様、まるで大波のように襲いかかってくる。


 ――こうやって俺に仕掛けてくるということは、ネフメイザからそれほど多くの情報をもらっていないということなのか? もし詳細をつぶさに聞いていれば、正面から攻撃せずに別の手段を用いてもおかしくないが……ただまあ、この戦況となってしまってはどんなことをしても基本、俺を止めることはまず無理だが。


 剣をかざす。魔力が十分に乗った斬撃を放ち、押し寄せる氷を正面から砕く!


「っ!?」


 コンラートが呻くのを、俺は即座に感じ取った。そして剣を差し向けようと――無論狙いはシャードなので、狙うフリをする。


 結果、バルヴォとアレキアスが釣られた。片や刀身に炎を生じさせ、もう一方は両腕を強化しながら俺を叩きつぶそうと拳を振るう。


 こちらとしては、最高の形と言える……さらに後方にいるジュリアが風を放とうと剣の切っ先を俺に向けていた。なおかつシャードも決心したか、俺に狙いをすませ剣を構える。


 まずは、特攻してきた俺から片付けるといったところか。騎士達が『ラストオーシャン』を放ったアベルに対しても視線を送っていることから、どちらが本命の攻撃なのかを、見極めようとしているのかもしれない。


 その間に俺はさらに踏み込む。次いで『ラストオーシャン』の波が騎士達へ迫る。一方の相手は俺へ攻撃を仕掛けようとしている――いや、バルヴォについては創奥義の進行速度を見て、そちらに炎を向けた。


 俺に迫るのはアレキアスの力と、さらに攻撃しようとするコンラートの氷。できればバルヴォも引きつけたかったが、仕方がない……さらにコンラートへ間合いを詰める。


 アレキアスが背後に回る。気配から拳に魔力が収束しているのが如実にわかった。


「――死ね」


 冷酷な言葉と、コンラートが氷を生み出す姿。そして後衛にいるジュリアが風の力を発揮しようとしている。

 バルヴォの炎が『ラストオーシャン』を抑えるべく放たれ、青い波が騎士達へ襲いかかる。そしてユスカ達もまた騎士達に仕掛けるべく駆ける。


 状況が混沌とし始める中で――騎士達の攻撃が、俺へと襲来した。


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