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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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集う候補

 ガルクに指示されながら俺は庭園に魔法陣を書き始める。結構複雑で、リチャルの手伝いがあっても時間がそれなりに掛かってしまった。


「えっと、これで完成か?」

『うむ、ちょっと待ってくれ』


 ガルクが魔法陣を凝視する――こういう魔法陣は、発動させる魔法の難易度によって精度が要求される。小規模な攻撃魔法とかだとアバウトでも結構発動するが、今回のような長距離転移となると、書くだけで結構大変だ。


『……うむ、大丈夫だろう』


 ガルクが言う。まあ失敗したら書き直すだけでいいんだけど……時間の無駄になるし、やりたくはないな。


「それじゃあどうすればいい?」

『我が陣の中心に立つ。ルオン殿達は魔法陣を囲うように立ってくれ。そして、魔力が生じた時点で魔法陣へ魔力を注ぐように』


 ――ガルクが言うには、相手側とこちら側で同じ魔法陣を起動させ、なおかつ転移させる側が魔力を注ぎ剣を引っ張りこむという感じらしい。相手側……つまり神霊の剣を転送する側は、こういう魔法陣を常時起動させて待っているとのこと。


『よし、いいぞ』


 ガルクが告げた瞬間、魔力が発せられる。俺達は全員同時に魔法陣に魔力を注ぎ――刹那、ズグン、と一度だけ魔法陣を中心に地面が鳴動した。

 さすがに長距離だから、地面にも影響が出るらしい……さらに軋むような音が生じ、大丈夫なのか不安に感じた、その直後、


「……あ」


 ソフィアが呟く。見れば、ガルクの真正面に光が生じた。


 成功したようだが……これで別の物が出てくるとかになったら笑うしかないな……そんなことを考える間に、剣が形を成した。

 それは紛れもなく見覚えのある、ソフィアが魔王を討った剣。


「これが、神霊の剣か」


 アナスタシアが呟く。じっと剣を見つめ、


「しかし……意外に普通じゃの」

「何を期待していたんだよ」


 ツッコミを入れると、侯爵は肩をすくめた。


「仰々しい剣かと思ったのじゃが……感じられる魔力も、それほど目立たんな」

「武器なんだから、装飾過多だと使いにくいだろ……ともかく」


 俺は剣を手に取り、ソフィアへ渡す。


「竜魔石の武器とは違うけど……どうする?」

「状況に応じて使いたいところですが……」

『それについてだが、案が一つ』


 ガルクが話し始める。


『ルオン殿が剣を封じ込めているように、この神霊の剣ならば封じ込めることができる』

「え、本当か?」

『ルオン殿が持つ剣は、魔力に分解されルオン殿自身の魔力と一体化している……それと同じようなことがこの神霊の剣でできるぞ』

「それは……俺が持っている剣を多少なりとも調べたからできるのか?」

『まあそうだな』


 それなら――


「ガルク、頼んでいいか?」

『ああ。少し時間が掛かるから待っていてくれ』


 ということで、ガルクに任せ……俺はその間にアナスタシアと相談を行う。


「俺達はエクゾンの屋敷へ行くが……何かやっておくことはあるか?」

「わしからは何もない。それとエイラドについてはきちんと引っ張ってくるから心配するな」

「ならいいけど……」

「ルオン殿、約束は忘れるなよ」


 戦いが終わった後のことかな。俺は小さく頷き、


「最後まで油断はするな」

「わかっておる」


 そうした言葉を交わし……やがて作業が終わったソフィア達と共に、エクゾンの屋敷へと向かうべく準備を始めた。






 翌日――リチャルの使役する竜で移動を行い、エクゾンの屋敷へ到着。中はずいぶんと慌ただしく、決戦が差し迫っていることを如実に物語っている。


 そして俺達が来たことでとある一室に通された。そこに――


「久しぶりだな」


 四竜侯爵の一人、シュオンだった。エクゾンと向かい合っている状況。


「色々と話は聞いている……前回の戦いで、私は基本的には静観していたようだな」

「しかし、今回は働いてもらうぞ」


 エクゾンの声。シュオンもそれに頷き、


「というわけで、ルオン殿。よろしく頼む」

「……ちなみに、何をするんだ?」

「シュオンには少し別の角度から動いてもらう。無論、ネフメイザに悟られないように配慮はする」


 エクゾンが言う。首を傾げると、シュオンが説明した。


「私がザウルの動きを観察することになった」


 ……なるほど、こちらの味方のフリをしているザウルを彼が抑えようということなのか。


「あいつは密かにネフメイザに協力しているんだろう? ならばそれを監視する役割が必要だろう」

「シュオンが裏切らない、ということについては私が保証しよう」


 エクゾンが続く。俺は彼らにしばし視線を向けた後、


「……わかった。ただし、何かあったとしても俺達が動けるかどうかはわからないぞ」

「自分の不始末は自分で拭う。心配するな」

「そうか……俺達としてはやれるだけのことはやった。あとは、決戦の日を待つだけだ」

「ルオン君、ユスカ君達と話をするか?」


 エクゾンの言葉に、俺は小さく頷く。


「ああ、そうだな……屋敷内にいるのか?」

「うむ、共に戦う面々だ。話をして今以上に友好を深めておくのも悪くないだろう」


 その言葉の後、俺達は部屋を出た。


「ソフィア、リチャル、俺はユスカ達と話をしに行くけど……どうする?」

「ついていきますよ」

「俺も同じく」

「ロミルダは……」

「ついていく」


 決定、ということで俺達四人は彼らがいる場所へ。前と同じく庭園で訓練をしているらしく、近づくと音が聞こえてきた。


「おーい、ユスカ」


 近づくと、カトラと剣を交えるユスカの姿。傍らにはアベルがいて、審判でもしているのか腕組みをしながら眺めている様子が。

 いち早く俺達の存在に気付いたのはユスカ。突如剣を止め、


「ルオンさん、どうも……ここにはどうして?」

「決戦前で、こちらに移動しておいた方がいいという結論が出てね」


 俺はそう言うと、ロミルダを手招きし、俺の前に立たせる。


「今回の戦いについて……この場にいる面々が鍵を握る。今のうちに一度しっかりと顔を合わせておこうと思ったんだ」


 ロミルダを見たユスカは――どう思ったかはわからないが、大きく頷いた。


「頑張ります……どこまでできるかわかりませんけど」

「期待しているからな」


 ――この場に、皇帝候補となる三人が集っている。今回の戦いの後、皇帝の玉座に座るのはおそらくアベルになるはずだが……他の二人だって座ることができるほどの力を有していると考えていいだろう。


 その中で、特にロミルダは既に皇帝の竜魔石の力を所持している……戦いの後、彼女をどうするかも問題か。この世界に二人のロミルダがいるわけだけど。


 ま、これについては戦いの後、相談することにしよう。


「――決戦前ということで、会食くらいはセッティングするか」


 ここでエクゾンの声が後方からやってきた。振り向くとどこか楽しそうに俺達を見る侯爵の姿。


「私が準備をしよう。前のように組織の人間達が集まるという形ではなく、君達だけで色々話すといい」

「……確かに、個々について色々と知っておくのも悪くはない」


 アベルも同意。ならば――


「それじゃあ頼んでいいか?」

「ああ。今日の夜、執り行おう」


 というわけで決定。その後侍女がやってきて、部屋に通される。その中で、俺は時間が来るまで、体を休めることにした。


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