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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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風の剣

 ソフィアはまず間合いを詰める前に『エアリアルソード』を放った。風の刃はゴーレムに吸い込まれ、一時動きを鈍らせる。

 そこへギルバートが仕掛ける。横薙ぎを放ち、さらに続けて縦に一閃。これは技ではなく単なる連続攻撃だろう。


「硬いな……ルオンさんの言った通り、一筋縄ではいかないようだな」


 ギルバートが言う。声音に相当な警戒の色。


 ただ連携攻撃によりゴーレムは確実に怯んでいる。この事実を踏まえれば断続的に攻撃を仕掛け続けることにより相手に攻撃を行う暇を与えることなく撃破――という可能性も考えられる。

 その手段でいくのもありか……と思った直後、ライツとミラが前に出て、剣を放った。動きを鈍らせたゴーレムは彼らの攻撃を受け……直後、反撃しようという目論見からか、腕を上げた。対するライツ達は即座に引き下がる。その動きはグリーンゴーレムと比べてずっと俊敏で、こちらが一方的に攻撃というのは難しいと悟る。


 ライツ達が後退したことで、ゴーレムも動きを止める。その間にソフィア達が体勢を整える。気付けば俺以外の四人が並んで剣を構えるような状況となった。その中でゴーレムと真正面から対峙するのはソフィア。ギルバートは援護するためか、ゴーレムが来たらソフィアを庇おうという意思が窺える。


 ゴーレムも様子を見るつもりか、一時硬直する……さっきの攻撃、そこそこのダメージは与えられているだろう。

 例えばゲームでは十とか二十くらいしかダメージを与えられていない場合、ゴーレム種は攻撃を受けても怯むことがなくなる。だがソルジャーゴーレムはライツ達の攻撃にも動きを鈍らせた。このまま戦った場合、一気に片付けることはできないにしろ、攻撃が通用せず倒せないということはないようだ。


 問題はゴーレムの攻撃だろうか。全員魔力による障壁を構成しているため、一撃受けて即死なんてことは当たり所が悪くない限りは大丈夫だろう。だが戦線を離脱することは間違いなく、攻撃を食らわないよう細心の注意を払うべきだろう。


 思考していた時、今度はゴーレムが仕掛けた。ソフィアは前に出るか後ろに下がるか一瞬迷った様子で――直後、ギルバートが割って入った。


「任せろ!」


 彼が発したと同時にゴーレムの拳が放たれる。それをギルバートは剣を盾にするようにして構え防いだ――結果、


「うおっ!?」


 彼は声を上げ、後退を余儀なくされる。衝撃を殺しきれなかったらしい。

 そこへソルジャーゴーレムが追撃を浴びせるべく動く――が、横からライツとミラが同時に仕掛け、ゴーレムの動きを縫い止めた。


 彼らにすれば吹き飛ばすくらいのことをしたいのだろうけど、そこまではいかない。だが隙を作ったのは事実であり、すかさずソフィアが足を前に踏み出した。


 放ったのは『疾風剣』だ。風をまとわせた一撃はゴーレムの体にしっかり直撃し、さらにライツ達の追撃が加わることでようやく相手を大きく後退させることができた。


 確実にダメージを与えることはできている様子。この様子なら大技を使えば倒せるかも……とはいえ、ここまでの戦いでそこそこ疲労も溜まっている。レーフィンはソフィアが大技を使えるのは二度と言っていたが、これ以上戦闘が長引けばさらに魔力を消費し、使えなくなる可能性だって存在する。


 このまま下級技を駆使して攻撃し続けても倒せそうな雰囲気ではあるのだが――そう考えた直後、ゴーレムがまたも先に動いた。


 しかも、先ほど以上に速い突撃――ライツとミラは反射的に引き下がった。まともに受ければ吹き飛ばされと思ったのだろう……ゴーレムはその狙いをソフィアに定めたのか、真っ直ぐこれまでにない俊敏さで迫る。

 援護に入ろうかと俺は思ったが、刹那――ソフィアがゴーレムに相対するべく動いた。


「レーフィン!」


 そしてシルフに呼び掛け――彼女の握る剣の刀身から魔力が生じる。ゴーレムの突撃に対し、大技で対抗するつもりだ。

 ゴーレムが突き進んでくる。このままでは衝突すると思った直後、ソフィアの剣が縦に薙がれた。


 ゴーレムは避けることができず食らう。もしかすると一撃を受けても構わず突き進みソフィアに攻撃するつもりだったのかもしれない――だがそうはならなかった。ゴーレムがさらに足を踏み出す寸前、風が炸裂した。


 部屋に旋風が吹き荒れる。衝動的に大技を使ったため、周囲に風が拡散する。技の威力が大きすぎて制御も上手くできていないかもしれないが……それでもゴーレムに風の塊とでもいうべきものが着弾。炸裂し、風の刃が幾重にも叩き込まれる。


「――やあああっ!」


 掛け声と共にソフィアはさらに足を前に出す。風の力を利用して攻撃速度を上昇させた彼女は、そのまま三連撃。ゴーレムはその間風に捕らわれ身動きをとることができず、剣戟を食らって大きく吹き飛ばされた。


 それと共に、俺は気付く。今のは『風華(ふうか)霊斬』――風属性の、上級魔導技だ。


 本来は斬ると同時に風が炸裂しダメージを与える単発技だが、ソフィアは風の力を利用してそのまま追撃も加えた形……まさかこれほどの大技を使えるとは。シルフの女王の恩恵とはいえ、驚きだ。


 ソフィアは大技を使用したことにより、息が上がる。けれどまだ戦う意志はあるようだ。


 ソルジャーゴーレムは、相当効いた様子。単に上級技を使うだけではなく、全力で放ったため本来の技の威力よりも上がっていただろう……あと一撃同じ技を加えたら、倒せるかもしれない。

 だが、ソフィアも目に見えて疲労しているのがわかる……ここでギルバートが叫んだ。


「一度退くぞ!」


 ソフィアの体力を回復させるのが狙いだろう。ライツとミラは即座に後退し始めた。ギルバートも言葉通り後ろに下がり、ソフィアもまた彼に同調するように動き出す。

 しかし、ゴーレムが動き出す。ダメージは相当食らったが、退く俺達を見て好機だと思ったらしい。アーティファクトを守る者にしてはずいぶんと好戦的……そんなことを思った瞬間、俺は一つ悟った。


 ソフィアの動きが予想以上に鈍い。このままでは、逃げ切れずゴーレムからの一撃を食らう。

 よって、俺は反射的に足を前に踏み出した。


「――ルオン様!?」


 突然の行動にソフィアが叫ぶ。だが俺は構わず進む。向かってくるゴーレムに対し、ソフィアの壁となる……ここで倒してしまおうか、それとも最後までソフィアと戦わせてみるか……思考しながら前に出ようとした時、横から気配。


 ソフィアだ――確信した直後、先ほどと同様の……いや、さっき以上の魔力を感じ取った。


 俺が前に出たため、彼女は残る力を振り絞り技を放とうとしている。その行動がどういう意味なのか――理由なんかなくて、ただ衝動的に動いただけかもしれない。ともかく、彼女は前に出た俺を横から抜き、ゴーレムへ猛然と走る。


 俺は止めるべきか、それとも……横から彼女を顔を覗き、闘志秘める表情を目にした時――俺は決断し、叫んだ。


「いけっ――ソフィア!」


 声と同時にさらに魔力が膨れ上がり、彼女の叫びにも似た声と共に――横薙ぎが繰り出された。

 剣戟は、ゴーレムに見事直撃した。魔物にとってもソフィアの行動はおそらく予定外で、避ける隙がなかったのだろう。


 風が炸裂する。先ほど以上に技が暴走し、風の刃すら室内に拡散。床や壁を傷つける。俺は風を見極め避けたため無事だが、これほどまでに力を収束させた攻撃を受けたゴーレムは、無事では済まなかった。


 その体が吹き飛ぶ。そして風が収まり始めた時、ゴーレムはボロボロと崩れ始めた。


「……勝った、か」


 後ろからギルバートの声が聞こえた。ライツ達は声を発さないが、ソフィアの技の威力に目を丸くしているのだと理解できる。

 そしてソフィアは剣を握りながらへたり込む。風の刃で自身が負傷することはなかったが、レーフィンが言った通り二度技を使って、限界が来たのだろう。


 俺は彼女が放った技を振り返る……森の戦いといい、本当に驚かされる。


「……ひとまず、守護者は倒した」


 俺は言う。次いでギルバート達がいる後方に目を移す。


「魔物もこれ以上はいないようだ。とりあえず、少し休んで……アーティファクトを確認しようじゃないか」


 言うとギルバート達は頷き、俺達へ近寄って来た。


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