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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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アーティファクトを守る存在

「ふむ、奥には到達したのか」


 ギルバートの言葉にライツ達は首肯。彼らは俺達の方が実力的に上だと思っているらしく、言葉に発しないがこちらの動きに従いそうな様子を示している。

 それは先ほどの戦いを振り返ってみれば間違いないだろう。アルトと別れてレベルはそのままなのかもしれない。その実力ならば外にいる魔物はどうにかなるにしても、遺跡内部で遭遇したグリーンゴーレムなんかには手を焼いて当然だ。


 考える間に、ギルバートが続ける。


「で、最奥には強力そうなゴーレムがいて、一度引き返そうとしたというわけか」

「気配的に俺達で対処できなそうだったからな」


 ライツが言う。するとギルバートは肩をすくめた。


「リスクがあっても、ここは向かうのがトレジャーハンターじゃないのか?」

「引き際を見誤ったら即死ぬんだから、用心するに越したことはない。実際、そんな無謀なことをしていた奴は生きていないさ」

「なるほど、確かに……というわけだが、ルオンさん。どうする?」

「俺達はどちらでもいいけど」

「ふむ、そうだな……」


 ギルバートはしばし思考した後、答える。


「ゴーレム相手なら、連携すれば逃げることだってできるだろ……先に進もう。ライツさんたちはどうだ?」

「そっちに従うさ。その方が生存確率が上がりそうだ」


 というわけで、大所帯となってしまったが俺達は改めて建物内の探索を開始。途中ギルバートがライツ達へ宝の分配話などを行いつつ……先へと進む。


 敵は数がそれほどいないらしく、それなりに歩き回っても敵の姿が見えない。罠もどうやらない様子であり、探索自体は楽に進む……奥へ向かう途中、幾度となく見つけた小部屋からそれなりのアクセサリなどが手に入る。とはいえゲーム上に存在していたような効果のある物ではないため、俺としてはまったく必要ない。分配する時になったら彼らに押し付けよう。


 小部屋に何回が入った後、グリーンゴーレムと遭遇。以後奥へ進むほど出会う頻度が多くなったが、その全てが単独であるため、連携により無傷で倒すことができた。

 ここまではひとまず順調……残る問題はアーティファクトを守る魔物か。ライツ達によるとゴーレムだそうだが、見たことのある魔物だろうか。


 やがて、最奥に到達しそうになる。ここでギルバートはライツへ確認を行った。


「一番奥にいるのはゴーレムだそうだが、見た目とかはわかるのか?」

「ああ、大丈夫だ」


 ライツは答え、説明を始める。


「見た目はゴーレムだったが、色が灰色だった。あと大きさは今まで戦った緑色と比べると小さい……最初単なる低級のゴーレムかと思ったが、近づくと雰囲気というか気配がちょっと違うと直感して、俺達は引き返したわけだ」


 ……その説明だけで俺は何が待ち受けているのか明確に分かった。間違いなく『ソルジャーゴーレム』だ。


 このゲームはゴブリンやゴーレムを始め色によって魔物の強さが段階的になっているケースが結構あるのだが、亜種的なものも存在している。その一つがライツの語るソルジャーゴーレムである天使が作り出した存在であり、中盤以降天使の遺跡を訪れると雑魚敵として出現する。


 だが、ここではアーティファクトを守る存在となっているようだ……確か天使の遺跡は周囲に存在する魔力量によって出現する魔物の種類が変わるという設定があった。魔族達が今よりさらに侵攻すると魔力量が増える。結果、同じ天使の遺跡でも後半の方が強力な魔物が出るようになる……この場所も放置しておけばいずれグリーンゴーレムがソルジャーゴーレムになっていたのかもしれない。


 そして、中盤に出てくる雑魚がボス……天使の遺跡の中には今後雑魚として出てくる魔物がボスというケースがあったので、それだろう。しかし、相手がそのゴーレムだとすると厄介だ。


 現状、ゴーレムと戦い続けソフィアやギルバートも強くなっている。ライツ達は二人と比べれば成長が遅いようだが、それでもNPCとしてアルトに関わるためか、それなりの能力を持ち連携をこなせるようにはなっている……が、ソルジャーゴーレムだとどうだろうか。防御力は結構高いため、攻撃がほとんど通用しない場合だって考えられる。


 これはアドバイスしておいた方がいいだろう……俺は口を開いた。


「アーティファクトを守る、特殊なゴーレムだな……今まで遭遇してきた緑色とは別物だろう。戦い方を変えた方がいいかもしれない」


 こちらの発言に、いち早く反応したのはソフィア。


「戦い方を……ですか。しかし、どうやって――」

「アーティファクトを守護するゴーレムである以上、その強度は今まで以上だろう。連携して攻撃するのはこれまでと同じでいいと思うが、攻撃面をより強化しないとまずいかもしれない」

「なら、ソフィアさんが攻撃の中心となった方がいいだろうな」


 ギルバートが俺の提案に続く。


「ソフィアさんの方が戦法にバリエーションがある。打てる手は多いだろ」

「しかし、緑色以上に強度があるかもしれないゴーレム相手では、決定打になるかわかりませんよ」

『なら、私の出番ですね』


 レーフィンの声だった。この時点でシルフについては説明済みなのでギルバート達は彼女の声に驚かないのだが、告げた内容に全員が眉をひそめる結果となる。


「出番?」


 聞き返したのはギルバート。するとソフィアの近くにレーフィンが出現する。


「私の能力をフルに活用すれば、威力十分な技が使えます」

「ほ、本当ですか?」

 ソフィアが聞き返すと、レーフィンは首肯。

「ただし、現在のソフィアさんが使うと相当消耗してしまいます……魔力を多大に消費しますから。よって使用できる回数は多くて二度くらいでしょう」

「二度……それで倒せるかわかりませんが、やるしかなさそうですね」


 ソフィアの言葉にライツ達は小さく頷いた。ギルバートも彼女達をサポートするつもりか「頼む」と告げる。


 ふむ、シルフの女王がそう語る以上、彼女と契約した恩恵により強力な魔法か技を使えるということだろうな。俺はゲーム上に存在していた風系の魔法や技を思い出す……ソフィアのレベルを考えると、中級クラスの技だろうか。


 どういう技にしろ、危なくなったら俺がフォローに入ればいいし、やらせてみるか。


「わかった。ならレーフィンの言葉に従おう……ソフィア、いいか?」

「もちろんです」


 承諾する彼女。さて、ここからどうなるか……俺達はゴーレムのいる最奥へと歩み始める。

 やがて通路の先に見えてきたのは、明らかに今までの場所とは異なる魔力を感じる空間。ちょっと気配を探るだけでそこが最も特別な空間とわかる。


 さらに通路からも灰色のゴーレムが一体見えた。うん、間違いなくソルジャーゴーレムである。


「全員、準備はいいか?」


 ギルバートが問い掛ける。ソフィアが剣を構えなおかつ攻撃力強化の魔法を使用。さらにライツ達も剣を構え臨戦態勢に入る。


 一方俺は周囲の状況を窺う……ここまで罠などはなかったし、ライツ達が引き返したこともあるため仕掛けがあるとは思えないが……それでも一応警戒しとかなければならないだろう。

 同時に他の面々の一挙手一投足を観察し始める。さすがに目の前で死なれるのも目覚めが悪いから危なくなったらすぐフォローできるようにしておこう……やがてギルバートを先頭にして最奥の部屋に入った時、ソルジャーゴーレムが動いた。


「来るぞ!」


 彼の言葉と同時、ゴーレムが構えを見せる。能力的には間違いなく苦戦する相手。レーフィンの言う技がどれだけ通用するかわからないが……やるしかない。

 思ったと同時、ソフィアが駆け出す。次いでギルバートが続き――戦闘を開始した。


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