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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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NPCの出現

 遺跡内部はそこかしこから太陽の光が差し込んでいたりするのだが、それを光源とするには心もとない。よって俺が明かりの魔法を使用し、探索を始める。


「罠なんかは俺が注意するよ……先行している奴らが引っ掛かっていたらありがたいんだがな」


 ギルバートはそう言いながら先頭を歩く。ゲーム上では魔族の居城に罠はあったけど、天使の遺跡にはなかったんだが……ここはゲームで出てきていない場所なので、罠が存在する可能性はあるか。

 もし罠に遭遇したら、魔法か何かを使って強行突破することもできるが……魔法を使った罠なら発動寸前で気付ける可能性は高いが、落とし穴などの物理的なものだと難しい。そういうのに引っ掛からないよう、俺も警戒しつつ進むことにしよう。


 俺達三人は周囲を見回しつつ進む……それと共に、奥から発せられる金属音が近づく。


「魔物と交戦中なのは間違いないな」


 ギルバートが言う。次いで彼は俺やソフィアに一度首を向けた後、話す。


「もし、戦っている連中と遭遇した場合……そこで起こる可能性がある出来事は二つ。邪魔者として敵対の意志を示すか、協力を持ち掛けるか」

「競争相手である俺達と手を組むという可能性は低そうだけど」


 こちらが言うと、ギルバートは肩をすくめた。


「苦戦しているようなら、その限りではないはずだ……そいつらを出し抜いてアーティファクトだけを持って帰るという方法もあるが、どうする?」

「それをやったとしたら、そっちの実入りがゼロだな。よって勘弁して欲しい、だろ?」

「察しが良くて助かるよ……ここは対面してみようじゃないか。相手次第でどうするかは決めよう」


 もし敵対するようなら戦闘する可能性も――できれば避けたいな。場合によっては交渉する必要もあるだろう。


 どうやら単純なダンジョン探索とはいかない様子。まあこういうのも経験か、などと思ったりしつつ……音のする方向へと進む。

 やがて、金属音が間近まで迫って来た。その数はおそらく二つ。


「二人組だな」


 俺の考えを裏付けるようにギルバートが呟く。


「こっちは三人……能力がどうかはわからないが、どうにかなるかな?」

「いきなり襲いかかるわけじゃないよな?」


 不安になって問うと、ギルバートは意味深な笑みを浮かべた。おいおい。


 さすがにソフィアも緊張した顔つきとなる。そんなことになったら私達は戦わないとでも言いたげな様子。とはいえそれはギルバートもわかっていたようで、表情を崩すと俺達へ言った。


「大丈夫だって、とりあえず様子を――」


 そこまで言った時だった。突如、男性の叫び声が上がる。


 聞いた瞬間、俺達は表情を戻し現場へ向かう。到着すると、そこには戦士らしき二人組の男女が、一体の魔物を目に前にして窮地に陥っていた。男性の方が尻餅をつき、女性の方は慄き動けない様子。

 彼らが相対する魔物は、石でできたゴーレム……硬いゴツゴツとした岩が人間の形を成した存在であり、なおかつ目の前にいる奴は体が緑色だった。


 ゴーレムにも種類があり、その強さはゴブリンなどと同様色によって変化する……目の前のこいつは緑色。名前は安直な『グリーンゴーレム』というやつなのだが……現段階のソフィアやギルバートの攻撃力だと少し倒すのに時間が掛かるくらいの防御力を持っている。これは、警告しておいた方がいいな。


「ゴーレム――防御もそうだが攻撃力も高そうだ。気を付けろ!」


 俺の言葉にギルバートとソフィアは表情を引き締め戦闘を開始する。対する俺は、戦士に駆け寄りつつ二人へ言う。


「俺は戦士二人を見る!」


 その言葉と同時、ギルバートが魔物に仕掛けた。素早く相手に連撃を浴びせて見せる……これは下級汎用技の『二連斬り』だ。

 途端ゴーレムはたじろぐ。次いでソフィアは腕をかざし、


「弾けなさい!」


 風属性下級魔法である『エアリアルソード』を使用。風が炸裂しゴーレムを大いに吹き飛ばす。

 連携は上々。とはいえゴーレムは倒れない……ゴーレム種の弱点は種類ごとに変わるのだが、グリーンゴーレムの場合は確か水。とはいえそれをアドバイスしてもソフィアは使えるのか――


「っ……」


 その時、男性が呻いた。目の前の戦いを見て驚いた様子。男女を見れば同じような種類の革鎧を身に着けた、双方とも茶髪の地味な印象の人物達。とりあえず目立った外傷はなさそうな感じ。

 容姿を確認した後、俺は特徴が少ないながら理解した――彼らはゲーム上で出てきたNPCだ。


「やっ!」


 ソフィアの声。視線を戻すと彼女はゴーレムに対し『疾風剣』を放っていた。シルフを仲間に入れたことにより威力も上がっているはずだが……それでも倒せない。

 物理攻撃主体より、魔法攻撃の方がよさそうか? アドバイスした方がいいのかなと思った矢先――ギルバートが追撃を加えた。


 技ではなく単なる横薙ぎだったが、ダメージが累積したことによってかゴーレムが多少なりともよろめいた。チャンス――ソフィア達は瞬時に思った事だろう。即座に両者はさらなる攻撃を仕掛けるべく動く。


 ギルバートが横薙ぎを決めた勢いを殺すことなくさらなる剣戟を加える。次いでソフィアが再度『疾風剣』を放つ。風の一撃がゴーレムに叩きつけられ……ようやくゴーレムの体は砕け、崩れ落ちた。


 敵はほとんど何もできなかった……上手く連携し反撃の隙を与えなかった。ゴーレム自体動きが緩慢だったことにも救われたはずだ。


「……さて」


 俺は男女を見る。先ほどの表情とは一変し、二人はきょとんとしていた。


「少し場所を移すか……自己紹介くらいは済ませないといけないよな」






 俺達は手近な小部屋に入り、まずは自己紹介。加え、遺跡内の情報交換を行う。


 男女の名前は、男性がライツ。女性がミラ。この名前は俺が考えていたNPCの名前とまったく同じだったので、想像していた通りの相手なのだと確信する。


 ――彼らは三人目の主人公であるアルト=ムーンレイトの同業者という形で、序盤のダンジョンで遭遇。お宝争奪戦を繰り広げる間柄である。


 三人目の主人公であるアルトはトレジャーハンターを生業(こんな職業があるのか一考の余地はあるが)としており、魔王の軍勢が大陸にやってくる前から、今俺達がいるこの建物のように天使が残した遺跡を探し、その中にあるお宝を求めていた。


 こうした遺跡は魔族が襲来する前は立ち入ることも難しかった。そもそも遺跡のある場所の特定だって難しいため、様々な文献などを読み漁り調べないといけない。さらに遺跡の場所がわかったとしても、入るために複雑な手順を踏まなければならず、それが実ることも少ない……正直、割に合わないと断言できる。


 だが、人はロマンを求め――というか、こうした遺跡を見つけ出し一獲千金を成し遂げた人とかが大陸各地にそこそこいたりするので、富を得る可能性を求め日々傭兵をしながらお宝を漁る、ということを結構な人がしているわけである。アルトや目の前にいるライツ達が、その代表例だ。


 今の状況はトレジャーハンターにとっては絶好の機会と言える。魔族達が侵攻したことにより遺跡が顔を出しているケースが多い。アルトも序盤、魔王襲来の影響で見つかった遺跡を回ることになるし、大陸各地にいるトレジャーハンター達は、魔族に目もくれず精力的に活動しているのかもしれない。


 そしてライツ達だが……アルトが序盤のダンジョンを抜けると別の場所のお宝を探すと言って去っていく。後半彼らは魔王と戦うアルトを見て驚くというイベントがあるのだが……彼らは大陸各地を回り、アルトと別れこの遺跡を発見し、俺達よりも探索していたということだろう。


 ふむ、今度はNPCとの出会いか……これがどういう意味を持つことになるのか思考している間に、ライツ達と情報交換を終えた。


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