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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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深淵世界

 竜人の魔力を探索しながら移動を続ける。やがて岩場の裂け目のような場所が視界に入り、そこからはっきりと気配を感じ取った。目当ての竜魔石はそこにあるのだろうか。


「さて……」


 俺は裂け目の入口に近づき中を窺う。明かりの魔法を使ってみるが、少し先に曲がり角があって、奥がどうなっているか外からはわからない。


「魔力は感じられるから、ここに入ったのは間違いないんだけど」

「踏み込むにしても……どうしましょうか」


 ソフィアが言う。ここで俺は、少し思案した末に口を開いた。


「二手に分かれよう」

「二手?」

「俺が洞窟内に潜入する。ソフィアは入口で見張りを頼む」

「わかりました。ただ、あの速度は驚異的です。お気をつけて」

「ああ」


 頷いた後、足を踏み出す。全てが岩で構成された洞窟。一本道なのか、それとも迷路なのかわからないが……決戦の時が近いのは間違いないだろう。


 曲がり角まで進んだところで、竜人の雄叫びが聞こえてきた。竜魔石により力が活性化し高ぶっているのか、それとも俺の存在に気付き警戒を始めたのか。


 神経を尖らせ、竜人を探す。一本道なのだが、曲がりくねっており姿を捉えることができない。

 警戒しながら歩を進め――やがて終焉に差し掛かる。明確な気配。そして先ほどと比べても明らかに魔力の高い、竜人。


 一つ角を曲がると真正面に竜人が見えた。そればかりでなく、竜人の近くには薄紅色に輝く竜魔石が岩に埋め込まれるようにして存在している。


「ここが、終着点……いや、違うな」


 よくよく見ると、奥にさらなる道がある。エクゾンは自身が近づけば逃げると言っていたが、地底へ逃れるための道だろうか。

 できればここで仕留めたいが……竜人は警戒している。これ以上踏み込んだら、竜魔石を手に取り後方へ逃れそうな雰囲気だ。


「どう動くか……」


 逃げても追いつける自信はある。ただ入り口にいるソフィアのこともあるし、できれば短期決戦で終わらせたい。


 呼吸を整え、踏み込む準備を始める。竜人がどういった行動をとるかわからない。あらゆる状況を頭の中で想定し――そして、


 竜人へ、駆けた。


 どう反応する……直後、竜人は洞窟内に反響する奇声を上げ、俺へ向かってきた。

 反撃に転じるつもりらしい。俺としてもこれなら決着をつけられると思い、剣を薙ぐ。使い慣れていない剣による攻撃だったが、それでも竜人を打ち破るのに十分な威力を持っていたはずだ。


 だが次の瞬間、予期せぬことが起きる。

 いや、より正確に言うならば、竜人からあふれ出た力。それが、異常だった。


 竜魔石のものとは明らかに違う。けれど感じたことがある力。それは、魔王との戦いで遭遇した――


『これ、は……!?』


 ガルクでさえ驚愕する魔力に一瞬、気をとられた。斬撃自体速度は変わりなかったはずだが、その行動が、戦いに影響をもたらした。

 剣は竜人の爪を易々と弾き飛ばしその身を確実に抉ったが、一撃必殺には足りなかった。武器に乗せた魔力が少なかったか、あるいは剣のスペックによるものか――どういう理由にせよ、倒すことは適わなかった。


 しかし竜人にとってダメージは深いはず。途端、後退しまたも吠えた。俺の気を一瞬でもひこうとするような態度であったが、こちらは臆することなく間合いを詰める。

 一撃とはいかなかったが、これで勝負あり――と思った直後、竜人は再度魔力を膨らませる。まるで洞窟内を魔力で押し潰すような勢い。


 その魔力が原因か――竜人は一気に後ろへ下がり、竜魔石を手にして奥の通路へ移動を開始した。


「待て!」


 呼び止めても効果なし。一瞬のうちに竜人の姿が消える。

 追う――心の中で唱えた直後、駆ける。身体強化をフルに用い、洞窟内を疾走する。


 そして見えた竜人の後ろ姿。けれど次の瞬間、またも視界から消えた。人が立って通れるくらいの大きさを持った穴を抜けた。

 先に何があるのか。そこへ足を踏み入れようとして――


「――っと!」


 寸前でブレーキをかける。道の先は、奈落の底だった。


 より正確に言えば、広大な地下空間。俺が顔を出しているのは岩壁の上部、といったところか。

 そうした漆黒の中で、竜人の姿を捉える――この場合は竜魔石の薄紅色が漆黒の中ではっきりと見える、という感じか。


「……このまま飛び出したら、出口がわからなくなって帰れなくなるな」


 俺は一つ呟くと、鞘に光を当てた。すると剣の切っ先に光りがまとわりつき、やがて剣そのものが発光を始める。

 空中に漂っている魔法の明かりはしばらくしたら消えるが、こうして物に付与しておけばしばらくはもつ。この道が下に行っても見えるようにしておき……闇に身を躍らせる。


 次に明かりの魔法を行使し周囲を照らす。そして移動魔法を使い、竜人を追う。目標は暗闇の中で凜然と輝く薄紅色。移動魔法を行使しているためか、徐々に光が大きくなる。

 このまま一気に――そう思い光が間近に迫った直後、地面が見えた。即座に足をつけると、竜人もまた動きを止めた。


「さすがに、ここまで来るとは思わなかったか?」


 言っても意味がないと思いながら問い掛ける。竜人は気配だけで反応。感じられる魔力としては、振り切れず苛立っているといった感じだろうか。


「決着をつけようじゃないか。その竜魔石を賭けて」


 告げた直後、咆吼が周囲を包んだ。甲高いそれは空間内に反響。音の流れから、ここが途轍もなく広大であるのがわかる。


 俺は地面の感触を確かめつつ剣を構え――直後、竜人が飛び込んできた。最初の戦いと同様、一歩で間合いを詰める。速度はたいしたものだが、反応できる俺にとっては意味がない。

 爪を剣で弾き反撃。こちらが攻勢に出ると、竜人はさばき切れないのか後退を始めた。


 先ほどのようなことにはさせない――そう思いながらさらに前に出た。


 竜人は反応できなかった。持ち前の速度で攻撃しようとした瞬間の出来事であったため、回避が遅れたのだろう。

 剣が竜人へしっかりと入る。腕に感触が伝わると同時、俺は一気に振り抜いた。


 竜人は斬撃を受け吹き飛び、倒れる。そしてか細い鳴き声のようなものを発すると同時、竜魔石が竜人の体からこぼれ落ちた。

 先ほどのような驚異的な魔力も発しない。二度やって打ち止めだったのか? 理由はわからないが、ともかく討伐は完了した。


「悪いな」


 竜魔石を拾い上げる。竜人は反応し微かに身じろぎしたようだったが、やがて力をなくし、息絶えた。その光景を見て、俺は嘆息する。


「……どこまでも、竜魔石に取り憑かれていたというわけか」

『ともあれ、作戦完了だな』


 ガルクが言う。俺は頷き、上を見回す。

 広大な空間であったが、俺が入り込んだ道は明かりによって確認できた。よかった、戻ることができる。


「早くしないとソフィアが心配する。さっさと帰ろう」

『うむ、しかし、山の中にこうした空間があるとは』

「大きすぎて何がなんだかわからないけどね」


 人為的に生み出された空間とは違うだろう。自然洞窟……規模としては相当なもの。侯爵がやってきた時、ここに逃れていたのだろうか。


「山にいる厄介者も消えた以上、周辺の山々も少しは落ち着くだろ」


 竜魔石を手に入れたこともあるが、人助けしたというのも大きいかな……そう思った直後、


『む?』


 ガルクが声を上げた。何事かと思った矢先、俺の意識は背後に向けられた。

 気配がする。


「……そんな馬鹿な」


 こんな場所に人がいるはずがない。竜人だって倒した。では、一体――


 ありえないと心の中で呟いた瞬間、靴音すら聞こえ始めた。即座に振り返って凝視し……やがて、相手が暗闇の中から姿を現した。


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