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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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遺跡で得た物

 ロミルダの攻撃により、天使の体が傾く。俺やソフィアの魔法の効果も途切れ、やがて天使は消滅した。見れば最初に倒した方の体は影も形も消え失せており、最初から何もなかったかのような有様だった。


「……終わりましたね」


 ソフィアが言う。視線の先にはロミルダが。

 訊きたいことはいくらでもあると思う……が、それを言い出す前に俺が口を開いた。


「ロミルダについては、歩きながらでも話そう。天使の遺跡をもう一度調べないと」

「ルオン様、再度確認ですが騎士達は――」

「全員さっきの天使にやられたよ。何度も遺跡に足を踏み入れている様子だったから精鋭には違いないと思うけど……今回は相手が悪すぎたということだろ」

「ルオンさん達がいなかったら、大惨事になっていたかもしれませんね」


 ユスカが厳しい表情で言う……俺は「かもしれない」と返答し、続ける。


「再度天使の遺跡に入る。騎士もいないから、全員で確認することにしようか」


 そう発言すると、ロミルダやユスカも頷き……俺達は、ゆっくりと森へ歩き始めた。






 道中、ロミルダから事情を聞く。俺としても疑問があったので、先んじてそれを聞くことにする。


「あの天使はおそらく、竜魔石を含んだ武器でなければ通用しなかったはずだ。君はそうした武器を――」


 言い終える前に首を左右に振った。


 ふむ……ゲームの中において、彼女の武器は短剣や杖だった。魔法を使うというわけではなく、彼女が持っている力を武器を利用して放出する、といった感じ。


 つまり、ゲームでは武器を所持して攻撃していたため、竜魔石を含んだ武器を使用していたことになる。先ほど彼女が天使を打ち破った事実について、ゲームの情報では説明がつかない。


 俺は彼女が『覚醒』したと推測したわけだが、それはゲームとは異なる……予想しない方向に成長しているのかもしれない。

 これが皇帝になる資格を持っているためなのか……もしそうでないなら、俺やソフィアが今後の戦いで楽にできる手段が見つかるかもしれない。


 それからロミルダが話し始める。肝心の能力については、いつ覚醒したのかはわからないらしい。

 これについてはネフメイザと接触したことが原因であると思うのだが、いつのまにかというのはなんだか不気味だ。


「すいません」

「いや、別に謝らなくてもいいよ」


 異常がなかったため、結果として彼女は戦う力を持っている……つまり、即戦力になれるというのは間違いない。この点は収穫と言えるだろう。


「一つ訊きたいんだが、先ほどのように力を行使するのは問題ないか?」


 さすがに「戦ってくれ」と直接言うのは憚られたので、とりあえず婉曲的に言及してみる。すると、


「……私が戦えば、色んな人が救われるんですか?」


 ――強い口調だった。やはり彼女は既に決めている。戦うことを。

 返答を聞いて俺は頭をかく。どう応じればいいか迷ったからだ。


「ルオン様」


 ソフィアが声を上げる。ユスカもまた微妙な表情をしていた。


 きっと、ロミルダは内には相当な力が宿っている。共に戦うことになれば、大きな戦果を得ることができるだろう。


「……結論は、今すぐ出さなければならないというわけじゃない」


 だが、俺としては別のことが頭に浮かんだ。


「それに、だ。帝国側がロミルダを城に招いたということは、何かしら力の正体に気付いているというわけだ。それを考えると、慎重になった方がいいかもしれない」


 彼女をどうすべきか――それもまた、課題の一つだ。


「屋敷に戻り、どうするかは改めて決めよう」


 そう断じた直後、俺達は森に入る。真っ直ぐ進み騎士達が構築した魔法を抜け、遺跡へと辿り着く。

 寺院は天井部分が大きく破壊された余波なのか、最初見た時よりも損傷していた。それにも構わず中に入り、俺は騎士達が歩もうとした地下への階段に目を向ける。


「レスベイル」


 言葉と共に精霊が出現。ユスカが唐突な出現に驚く間に、魔力分析を始める。

 結果……魔力が存在しているのはわかったが、どうやら魔物などではなさそうな雰囲気。というか、魔物らしき存在が感じられない。寺院という見た目から特殊だが、ここを守る天使以外に敵が存在しないのも、また特殊だった。


 俺は一度仲間達を見る。全員で揃って行くのも……。


「地下には、俺が一人で――」

「御供します」


 ソフィアだった。俺が言い終える前に言及したので、最初から決めていたのかもしれない。


「……わかった。リチャル、穴に落ちないようこのフロアを調べてくれ。レスベイルを残す」

「わかった」

「ユスカさんも頼む。ロミルダは二人に同行。危ない場所には近づかないように」


 よし、俺はソフィアと共に階段を下る。さすがに構造までは解析できなかったが、レスベイルで調べた魔力からすると、魔力の根源はこのフロアにあるのは間違いない。


 明かりを生み出し俺は分析から得た情報を基に進んでいく……天使にやられた騎士はこの地下を小規模な迷宮と言っていた。それは間違いないのだが、そう複雑というわけでもない。故意に行き止まりを作成するような感じではなく、部屋数が非常に多いといった按配だ。

 なんとなくだが、こうした部屋は生活のために使われていたように思える……色々と想像できるが、竜魔石を取られないようトラップを仕掛けるような場所ではなさそうだ。


 ここで、一階の床を突き破ったフロアに遭遇。そこを先に進むと、左右に扉が一枚ずつ。


「魔力を感じますね」


 ソフィアが言う。特に右側が強い。


「こっちの扉の中に竜魔石があるのかな」


 そう思いつつ、扉を開ける。中は石造りの部屋だが……発光する物体が存在していたため、存外明るい。

 ただ、その光は紫がかった光。部屋の中央に台が存在し、安置されるように光る魔石が存在していた。


 近寄り、確認する。どこまでも紫に染まるそれは、通常の魔石とは異なる大きな力を含んでいる。


「綺麗……」


 思わずソフィアが息を呑むほどのものだった。俺は手を伸ばし持ってみる。大きさは拳大といったくらいで、ややいびつながら球体。

 そして、光を放つ魔石の中央からは、多大な魔力……手に取ってわかる。これは相当純度の高い竜魔石だ。


「さっきの天使はこれを護っていたのかもしれない……よくこれまで見逃されていたな」

「貴重な物ということでしょうか」

「感じられる魔力は結構なものだな」


 竜魔石を手に持ったまま、もう片方の部屋に。無人の部屋で、中央に宝箱らしき物が一つ。開けてみると、中にはアミュレットが一つ。


「たぶんアーティファクトだな。持ち帰って調べてみよう」

「収穫としては非常に大きいですね」


 ソフィアの言葉に俺は頷き、戻るべく歩き出そうとする。


「あの、ルオン様」


 その折、ソフィアが声を上げた。


「さっきの戦闘ですが」


 ――もしかすると、ソフィアはそれについて言及したかったからついてきたのかもしれない。

 そして何が言いたいのか俺には理解できた。


「天使へ自ら飛び込もうとしたことか?」

「はい」

「まあ……ロミルダもいたし、あれは俺が動いた方がいいかなと思ったんだよ」


 とは言うものの、ソフィアは厳しい表情を示す。


 竜魔石を含んだ武器を所持していないため、ある程度無理をしないといけないというのが実状ではある。けれど彼女が不安になるのも理解できる。


「その、実は侯爵から話を聞いたのですが、屋敷における戦いでも無茶されたと」

「……あー」


 うん、そうだったな。


「決してルオン様の実力を疑うわけではありませんよ。しかし――」

「言いたいことはわかる。今後気を付けるから」


 そう述べたけど、やっぱり晴れないソフィアの表情。ただこれ以上何か言うこともできず、ソフィアは「ご注意を」と一言添えて話を終えた。


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