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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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紫の光

 遺跡に入る魔法については維持されており、難なく外に出れた。問題は――


「ソフィア!」

「ルオン様! 何か声がしたのですが……」

「遺跡に眠っていた天使だ。何をする気かわからないが、そいつらが外に出た」

「騎士達は?」

「天使達が始末した。とにかく、奴らをどうにかしないと――レスベイル!」


 鎧天使を生み出す。


「奴らの所在は――」


 問おうとした直後、答えが出た。森の外だ。


「どういう目的かわからないが、止めないとまずい。しかも竜魔石を含んだ武器が無いと対処できない奴らだ。騎士の剣を一本だけは奪い取ったが……」

「俺も協力します」


 ユスカが言う。ロミルダもまた同行する意思を表情で示す。不安はあったが……俺は頷き、レスベイルが調べた天使の居所へ走る。


「森を出よう。そこに、天使がいる」


 全員駆ける。天使は調べて以後動いていないようだったが……突如外に出たんだ。何をしてもおかしくない。

 俺達は勢いよく森を出た。次に見えたのは、先ほど騎士を倒した天使が二体。


「赤と黒……不気味ですね」


 ソフィアが言う。その通りだとリチャルが頷き、俺達は構える。

 天使達は一時周囲を見回していたのだが……やがて、俺達に気付き体を向けた。


「ここで止めるぞ。俺が前に出て奴らを抑える」


 俺は剣を抜き放ちながら明言。ソフィア達が頷き――戦闘が始まった。

 天使達は俺達に反応し、同時に襲い掛かってくる。並び立つように迫る巨体。対する俺は前に出て迎え撃つ。


「さて……」


 抜いた剣に魔力を込める。さっきは剣が砕かれる前に一撃決めることができた。ほぼ使い捨てだが、それで片方をやるしかない。

 その直後、ソフィアが魔法を放った。


「風と消えろ――古の亡者!」


 声と共に放った魔法は、風属性中級魔法『スピアウインド』だ。風の力を一点に集め放つ魔法。魔力から彼女は通常以上に魔力を集約し、天使へ狙いを定め放たれた。

 だが彼女は竜魔石を含んだ武器を所持していないので、ダメージはゼロ――もっとも、俺は意図をすぐに察した。


 魔法が右側にいる天使に直撃。無効化されるため貫通などしないようだが、その衝撃は相当なものであり、巨体が逆方向へすっ飛んでいく。


 分断――これこそ彼女の狙い。


「よし……!」


 一声発した俺は天使を間合いに入れる。ここで一体を片付ける。


 刀身に魔力を注ぎ、一閃。天使はそれを受ける構え。だが俺は感覚的に剣ごと両断し決まると思った。だから構わず振り抜く。

 刹那、天使の剣と激突し――突如、魔力が迸った。


「何……?」


 呟いた矢先、魔力の流れを感じ取る。天使の剣には相当な力が生まれている。俺の攻撃を食い止めるための行動か。

 その間に、こちらの剣に限界が迫る――どうにか魔力を抜き、破損を防いだ瞬間、俺は理解する。


「学習したのか」


 これは予想以上に面倒だ。一体目との攻防を見ていたことにより、対策を編み出したのだ。

 俺の方は剣がほんの僅かな時間しかもたない。天使としてはその時間さえ耐え切ることができれば、防御することができるという按配だ。


 ならば――俺としてはダメージがゼロなので、わざとその身に受け、隙が生じた時、打ち倒す……後方にすっ飛んだ天使は体勢を立て直したがまだ時間が掛かる。戦線に復帰するまでに余裕があるし、目の前の天使を撃破するのは間に合うだろう。


 俺は天使が攻撃を仕掛けてくるのを見て、さらに踏み込み剣を受けようとした――次の瞬間、


「――やああっ!」


 それは、ロミルダの声だった。予期せぬ状況に俺は一瞬戸惑い、その直後に魔力を感じた。

 天使が――俺に剣を放つ前に、大きく後退する。それは彼女が放った攻撃によって吹き飛ばされた。


「な……」


 ソフィアもまた声を上げる。その時俺はロミルダに視線を向ける。

 彼女は両手を突き出していた。先ほど見えた攻撃は、表現するなら紫色の光。それが剣か槍のような形状となって天使へヒットし、吹き飛んだ。


 視線を天使へ。攻撃を食らった相手は即座に体勢を立て直し突撃を仕掛けている。そして最初に弾き飛ばした奴も、やや遅れて迫るような状況。


 剣を構え直しながら考える――先ほどの魔力収束により剣には細かいヒビが。あと一度くらいなら天使を倒せるだけの力を生み出せるかもしれないが――最後まで残しておくべきか。

 ユスカに視線を送る。彼もまた臨戦態勢に入り、剣を構えている。


 天使を撃破できるだけの技があるとすれば彼だが……俺は、口を開いた。


「ソフィア、ユスカさんと連携して後続の天使を抑えろ」

「わかりました」

「ロミルダ、俺が攻撃を食い止める間に天使に一発当てる。できるか?」

「はい」


 軽快な返事と共に、俺達は動き出す。ソフィアは先ほどのような風魔法を行使し、天使を吹き飛ばした。『スピアウインド』ではなく、別の魔法。俺との攻防を見て、同じやり方では通用しない可能性を考慮したようだ。


 ユスカも援護に入ろうとするが、近接戦闘がメインのユスカでは対応に限界がある……とりあえずソフィアは余裕そうなので、このまま食い止めてもらおう。


 そして俺は、迫る天使に対抗すべく剣を振る。一度目はほぼ互角だったが、二度目は天使を押し返す。

 しかし、これにも限界がある。やはり俺の魔力を抱えるのは限界があるらしく、剣も確実に損傷している。


 時間的な余裕は少ない。よって、俺は叫んだ。


「ロミルダ!」


 背後から強烈な魔力。発した力は俺やソフィアの全力と比べれば当然まだまだ。けれど、少女にしては相当な規模であるのは間違いなく、驚くべきもの。

 そして彼女から放たれた力は、槍状の光だった。、見た目はやはり紫色。それが一気に俺の背後から迫り、こちらは横に逃れた。


 天使は避けることもできず直撃する。吹き飛ばしつつロミルダと連携し継続して攻撃していく、という目論見があったのだが、それ以上の結果が出た。

 槍は、易々と天使の体を貫いた。胸部を破壊し……そこに心臓があるのかはわからないが、少なくとも天使の動きが大きく鈍り、なおかつ倒れたのは事実だった。


 俺は即座にもう一体の天使へ目を向ける。まだ終わりじゃない。


「ロミルダ、次の攻撃の準備を!」


 返事を聞かないまま俺はもう一体の天使に狙いを定め、魔法詠唱を開始。ソフィアがさらなる魔法で相手の動きを抑えているところだった。

 ユスカも天使へ近づき攻撃を仕掛けている。彼は地面に剣を走らせ目前数メートル先に衝撃波を繰り出す技がある。それを、ソフィアが魔法を放ったのと同じタイミングで使用した。


 結果としては――直撃を受けた天使だったが、ロミルダのように一撃とはいかなかった。

 となると、ロミルダの方が攻撃力は上……やはり何かをきっかけにして力が目覚めているのかと思いながら、俺は声を上げた。


「ロミルダ!」


 後方から確かな魔力。天使は迫る俺に迎え撃つような構えを見せ……同時、ロミルダが攻撃を放った。

 背後から迫る魔力。体を傾けると同時、天使もまたどうすべきかと立ち止まる。


 おそらく、次の瞬間には回避に移ったことだろう。ロミルダが放つのは極めてシンプルな攻撃。よって、避けることさえできれば問題ないと考えた。


 けれど、俺とソフィアがそれをさせない。同時に魔法を放つ。俺が使用したのは地面に干渉する魔法で、大地の魔力を利用し相手の動きを封じ込める中級魔法『ガイアバインド』だ。


 そしてソフィアは無属性系の魔法である『マジックチェーン』。相手に銀色の魔法の鎖を放ち、動きを止めるものだ。


 俺とソフィアの同時攻撃が功を奏し、天使はとうとう動きを止める。そこへロミルダの攻撃が入った。俺やソフィアの魔法を平然と越え、天使の胸部を貫いた。


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