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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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289/1082

黒と赤

「地下に小規模ではありますが、迷宮が存在するようです」


 騎士は隊長に体を向け声を上げる。


「そうか……魔力の集積点や竜魔石は?」

「どちらも存在します。ただ、一つ気になることが」

「話してみろ」

「竜魔石が存在する場所……そこに、何やら魔物らしき魔力が。それも、力としては大きめです」


 ――この騎士は、剣を利用し魔力を吸い取る間に遺跡内に魔力を成す物があるかどうか確認する役目があるらしい。

 魔力の集積点、というのは推測するにアーティファクトだろうか。そして竜魔石と、魔物らしき魔力……ゲームで言うところのボスといった感じか。


「竜魔石を守っているということか?」

「おそらくは。そして――」


 と、騎士は一拍置いて告げる。


「その竜魔石ですが、相当な力がありそうです」


 隊長が僅かに身じろぎ。ふむ、ここからは感じ取れないが、遺跡に眠る物は大物らしい。


「いいだろう。では、竜魔石を手に入れよう。魔物については、接近し動向を窺う」


 ――彼らが踏み込んだ遺跡すべてにボスがいたかどうかはわからないが、ゼロだったわけではないだろう。つまり、戦闘能力もそれなりに持っている。対処できると考えているようだ。


 騎士達は動き出す。その間に使い魔を生み出していた騎士が戻ってくる。


「準備できました」

「移送しておけ」


 隊長が騎士へ水晶球を投げる。受け取った騎士は、即座に外へと戻ろうとする。

 ここは、彼を追い水晶球を奪取するべきだろう。俺は外へ歩む騎士の後を追おうと動こうとした、その時、


 ――ウォォォォォ。


「……ん?」


 他の騎士達もそれに反応し、立ち止まった。


「魔物でしょうか」

「の、ようだな」


 隊長が騎士の問い掛けに応じる。魔力を吸い上げたことにより、魔物が反応したといった感じだろうか。俺は一度立ち止まった使い魔の騎士が歩き出したのを見て、追随しようとする。


 だが、次の瞬間――凄まじい魔力が、まるで地の底から湧き上がってくるように生じた。


「っ……!?」


 地下へ移動しようとした騎士の誰かが声を発する。使い魔の騎士も同じ。そして俺も。


『これは……どうやら、虎の尾を踏んだようだな』


 ガルクが言う。


『魔力を吸い上げたことにより、遺跡に眠る何かを目覚めさせ、さらに激怒させたか』


 言葉と同時、魔力の塊が一気に地上へ向かって迫る。同時にガガガ、と遺跡の構造物を破壊するような音が聞こえ始めた。


 どういうことになるか俺には容易に想像がつき、即座に退避。同時、広間の中央の床が吹き飛び、下から魔力を持つ存在が見えた。


「な……」


 騎士が呻く。現れたのは体長三メートルはある天使――俺自身生み出したレスベイルと同じような全身鎧の天使。だが色は黒と赤が複雑に混ざり合ったもので、畏怖を感じさせる。元々こういう色合いだったのか、それとも変化したのかはわからないが、インパクトは絶大だ。


「全員、戦闘態勢に入れ!」


 隊長が即座に指示を出す。ここで水晶球を持つ騎士は迷った。自分も戦うか、先ほどの指示を遂行するか――


 その躊躇は、この場において命取りだった。


 獣が如き咆哮を上げた天使は、水晶球を持つ騎士に狙いを定め踏み込んだ。咄嗟に逃げようとした騎士だったが、それよりも先に天使が動いた。

 剣戟は速く、また圧倒的だった。騎士が逃げる素振りを見せた直後、斬撃が入る。鎧を平然と砕き、その奥にあるであろう竜の皮膚も易々と抉る。


 まさしく一刀両断――直後、斬られた場所から炎が生じ、騎士は業火に包まれる。鎧を平然と燃やすということは、ただの炎でないのは間違いない。

 ただ力が抜け剣を落としたことで、水晶球や剣は無事――それ以外は一瞬のうちに灰になってしまった。


 その攻撃力は竜人の騎士ですらあっけなく死ぬもの。それを見た隊長は、叫ぶ。


「くそっ……! 退くぞ!」


 相手の力量を察し、退却する。その判断は至極まっとうだが……遅かったかもしれない。

 彼らが動き出すと同時、天使はそれを阻むべく剣を構える。騎士達は剣を構え即座に戦闘態勢。もし戦うとすれば、数を利用し攻撃するしかない。


 攻撃能力は圧倒的。ならば仕掛け倒せるのか……そういう算段を隊長は立てているに違いない。

 とはいえ、そうした思考時間もあまりない――なぜなら、地の底からさらに天使の気配がしたからだ。


『ここは……相当重要な場所なのかもしれんな』


 ガルクが言う。


『この施設が重要なのか、それとも眠る竜魔石などが重要なのかはわからない。だが、こうした魔物……いや、天使か。これほどの存在がいるということは、遺跡の中でも特に重要性が高いという話だろう』


 解説する間に新たな天使が顔を出す。見た目は最初の天使と変わらない。

 それが追加で合計……二体。騎士達は三体の天使を相手にする必要がある。数の優位すらも消えた。


『どうする?』


 ガルクが問う。うん、これは困ったな。

 騎士達と協力して戦うか? いや、相手が俺も敵だと判断して攻撃するのが目に見えている――


 考える間に天使が動いた。暴虐的な気配。俺が何かを成す前に、天使が全てを終わらせた。

 天使の一撃。横薙ぎは等しく残りの騎士を弾こうという意図がはっきりと感じられるもので、騎士達は回避するべく動いた。


 散開――直後、それが狙いであったかのように残る二体の天使が動き出した。

 一斉に剣戟が放たれる。それを騎士達は回避できず。一刀でその体が燃え上がる。


 介入するような暇はなかった。立て続けに生じた連撃によって、とうとう騎士達は全てが滅される。


「……同情するつもりはないが、こんな場に来たのは気の毒としか思えないな」


 俺は呟きながら床に転がった水晶球を拾い上げる。天使達はそれに気付いたか、体を一斉に向けた。

 即座に魔法を解除。剣を抜き戦闘態勢に入る。


「来るかな?」


 言葉と同時、先頭にいた天使が踏み込んだ。恐ろしい速度であり、並大抵の能力でないことは容易に想像できる。

 俺は素早く半歩後退し虎口を脱する。次いで剣を薙ぎ、風の刃を放った。


 真っ直ぐ風が天使へ向かい、その胸部を大きく撃った。結果、鎧が弾け胴体を貫通。大穴を生み出す。

 これで一体――と思った直後、天使の体から魔力が。何事かと考える間に、胸部が一気に再生する。


「こいつら……まさか、竜魔石がないと……?」


 それを裏付けるかのように、鎧まであっさりと再生する天使。これは面倒……と思った直後、足元にある剣が視界に映る。

 倒せるかわからないが――俺は即座に剣を拾う。天使が動き出し、それに対抗するべく剣に魔力を収束させる。


 竜魔石の力を引き出すように剣に力を注ぐ……瞬間、軋むような音がはっきりと剣から聞こえた。間違いなく俺の魔力と剣の魔力が反発している。一応使えるようだが、限界はすぐにくるだろう。

 そんな中向かってくる天使。俺は斬撃をかわしながら懐に飛び込み反撃を行う。目前に巨体。そこへ、縦に斬撃を放った。


 確かな手応えと、天使の咆哮。加減が上手くいったのか、天使はその一撃によって体が大きく崩れ、消滅する。

 だが、その代償として剣もまたパキン、という音と共に粉々に。一回しか使えない。


 他に残っている剣は――と思った直後、残る二体の天使に動きが。俺を狙って攻撃してくると思っていたら、突如足に魔力を集め始めた。

 何を、と思った矢先、二体の天使が同時に跳躍した。いや、それは飛んだと表現した方がいいだろう。寺院の天井を突き破り、飛翔した。


「何を……する気だ……!?」


 上から降り注ぐ瓦礫を避けつつ、俺は騎士が残した剣に近づく。無事だったのは一本。俺はそれを手に持って、上を見上げる。


 天使達は姿を消していた。いや、この場合どこかに飛び立った?


「……どういう目的があるのか知らないが、これはさすがにまずいな」


 天使の遺跡から外に出たとなれば、下手をするとこの異相空間からも……俺は即座に引き返し、全速力で遺跡を出るべく駆け出した。


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