目指すべきもの
――ひとまずエクゾンとの話し合いを終え、俺やソフィア、リチャルは俺の部屋で改めて作戦会議を始める。
「ルオン様、考え得る方法で動くと仰っていましたが……」
「ああ。ソフィアにも働いてもらうと思う」
「皇帝候補の方々は?」
「叶うことなら彼女達にも動いてもらいたいが……アベルさんは組織の方に注力する必要があるし、なおかつ侯爵が色々考えているだろうから」
頷くソフィア。と、ここでリチャルが口を開いた。
「ルオンさん、時を戻す魔法についてだが……」
「調べるにしても資料がないって話だろ? それについては考えがある」
『我の出番だ』
右肩にガルクが出現。
『現在、我は本体と意識が繋がっていない。だが大陸に戻れば自然と本体に記憶が移る』
「なるほど、精霊達に協力を仰ぐのか」
「ガルク達なら喜んで協力してくれるだろうしな。それに、レーフィンとかに連絡すればクウザとかアカデミアの面々とも連絡がつく」
「とはいえルオンさん、問題は移動手段だが……」
『それについては案がある。リチャル殿、竜魔石を利用し魔物を一体作ってくれ』
「大陸まで届けばいいってことか?」
『その通りだ。それと、ルオン殿の中にいる我の魔力全てを使うわけではない。少ない魔力ながら、分身を産み出し大陸へ移動させるという形になる』
「魔物は鳥形になるが……その背中に乗るのか?」
想像したら微笑ましい光景だなと思ったが……ガルクは首を左右に振った。
『使い魔の中にこもることになるだろう。いざとなれば我が操作できるようにする』
「わかった。期日は?」
『早い方がいいだろう』
「なら生み出した飛竜の魔力を一部利用しよう。明日にはできる」
『問題ないとは思うが、魔力については余裕を持たせてくれ。我の魔力の都合上、この手は一度しか使えないだろうからな』
「精霊の方々は、この大陸に来るのですか?」
ソフィアの問い。ガルクは目を細め答える。
『時間的に余裕があれば、どうにかして……という思いはあるだろう。ただ、調べるのは魔族由来の魔法だ。我の知識の中にもない情報故、どの程度時間が掛かるかわからん。来ないという前提で行動した方がいい』
「問題は、どの程度時間が必要か、だな」
俺の言葉に全員の視線が集まる。
「リチャルはこの大陸内にある資料を調べてもらうとして……調べるのも限界があるか?」
「人がいるな」
「その辺りは侯爵やアベルさんと相談だな……で、問題の期限だが、調査が完了した段階から対抗策を準備し始めるわけだ……長くとも期限が二ヶ月しかない。できるだけ早く……一ヶ月くらいで結論を出したいところだ」
『難しいが、やるしかあるまい』
ガルクが言う。ソフィアも力強く同意し、
「ネフメイザの野望を破るため、頑張りましょう」
「ああ。で、俺達は侯爵と連携することと……ネフメイザの策を打ち破るための準備だ」
「具体的にはどうするんだ?」
リチャルが質問。俺は少し間を置いて……話し出す。
「正直なところ、ネフメイザを確実に倒すという手はまだ思い浮かんでいない。というより、現時点で情報が少なすぎる。最大の懸念は、ネフメイザが果たしてどこまで考えこの戦いに臨んでいるか、だ」
「どういうことですか?」
ソフィアの問いに、俺は額に手をやりながら答える。
「ネフメイザが時を巻き戻しているのは確定。さらに人造竜なんてものを生み出している以上、俺達の存在だって認識していると思う。ただ、一つ違和感がある。帝都には使い魔を残して宮廷の状況とかをつかもうと動いているんだが、警備が厳しくなっている」
「あの子を連れてきたことから、ルオン様が帝都内にいると認識されたのでは?」
ソフィアの言葉。普通に考えたらそうなんだが――
「うん、状況的にそう考えるのが自然だと思うんだが……俺は一つ、推測が浮かんだ」
「それは?」
「ネフメイザが、あえて俺に情報を渡し、ロミルダとユスカをここに連れて来させた」
『奴からしたら不利になる状況だぞ?』
ガルクが言う。俺はそれに同意しつつも、言及。
「例えば……そうだな、ソフィア」
「はい」
「自分が時を巻き戻せると仮定して……魔王との戦いで、大切な仲間がやられてしまった。ソフィアはその仲間を助けるべく時を巻き戻し魔王と再戦した。この場合、どう動く?」
「同じ動きをする場合、同じ結果になるんですか?」
「そうなる」
「なら、それを回避するべく動きます」
「では、それをした結果別の仲間がやられてしまった場合は?」
「……全員生還するまで繰り返す、でしょうか」
「時空系魔法が無条件で使えるなら、そうするだろうな」
俺はため息をつき……話を続ける。
「ネフメイザの見た目からして、相当な回数時を巻き戻している。魔力が減っているにも関わらずそれだけ繰り返しているのは……何かで魔力を補っていると考えよう。ともかく、ネフメイザが途轍もない回数トライアンドエラーを繰り返しているのは間違いなく、都合がいいような道筋を作っているはずなんだ」
『つまり、こう言いたいのだな?』
ガルクは俺と視線を交錯させながら述べる。
『ロミルダという少女やユスカ殿を失う……それこそが、ネフメイザにとっては戦いを勝利に導く道筋だと』
「ロミルダを偶然発見しなければ、研究所内で色々と行動していたかもしれないな。破壊活動とはいかなくとも、何か重要な資料を奪い去るとかね……そういうのを防ぐようにネフメイザは俺を動かしたって可能性もゼロじゃないからなと思ったわけだ」
――前世でタイムリープもの小説やゲームがあった。同じ行動をすれば同じことを繰り返す、という設定が多かったが、今のネフメイザはまさにそれ。俺に対する策をどれだけ積んでいるのか……。
『とはいえ、相手から情報を取るのは難しいだろうな』
ガルクが言う。それには俺も賛成。
「現在、俺達がネフメイザにとって予定通りに動いているのかどうかわからないが……ここを気にしてばかりでもまずい。最終決戦までにどれだけ力を蓄えられるか……ひとまずそれに集中しよう」
「ルオン様は何かお考えが?」
ソフィアの問い。俺はすぐさま頷き、
「まずは人造竜を含めた兵器対策だな。ネフメイザに到達する前にいくつも障害があるから、それを排除できるようにしないと」
「竜魔石が当然必要になりますよね」
「ああ。俺の武器はどうも思い通りにはならなそうな感じだし、ソフィアに任せる……という選択肢もあるにはあるが、それ以上に懸念がある」
沈黙。全員俺の言葉を待つ構えだ。
「さっきの話だが、ネフメイザは望む未来へ進むようにすべく俺に研究所を覗かせたとするなら、あの人造竜は見られてもいい存在……あれ以外にも何か兵器があるかもしれない」
「切り札が別に、というわけですか」
「その通り。ネフメイザの切り札を打破するためには……それこそ、どんな兵器を生み出そうと対処できるだけの力を持つ武器か道具を生み出す必要がある」
「そんな物、できるのか?」
リチャルの問い。それに俺は頷いた。
「不可能じゃない。この大陸における切り札は、竜魔石の存在によって決まる。つまり、強力な竜魔石を手に入れることができれば、目的に合致する物を生み出すことだって可能なわけだ」
「魔王との戦いで生み出した、神霊の剣と同じような形ですね」
その通り――まずはここからだ。
「というわけで、俺は竜魔石を探す。といっても闇雲に探すわけじゃない。物語の中で侯爵が所有する竜魔石以外にも、天然で強力な物が存在していた。それを探し出し……切り札を生み出すことにしよう」




