表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

273/1082

協力関係

 シュオンと会議を始める前に、エクゾンは屋敷の被害状況を確認する。人的被害はゼロ。破壊されたのも俺達が戦っていた場所周辺だけ、ということでエクゾン自身は満足した結果のようだった。


「こいつと戦えば、それこそ屋敷が丸ごと潰れてもおかしくないからな」


 能力を考えれば確かに……俺としては竜魔石含有の武器さえあればもっと対処できたはず、と考えるところなのだが。


 で、俺達はソフィア達と合流。アベルやカトラは轟音が続いたことで動揺していた様子だったが、ソフィアとリチャルが最後まで部屋に留めてくれていたようだ。


「大丈夫でしたか?」

「ああ。最終的に四竜侯爵の一人、シュオンと話をすることになった。ひとまず戦闘は終わったよ」

「……ルオンさんが活躍したようだな」


 アベルが言う。エクゾンとの戦いを間近で見ていた彼も、その辺りについては確信を抱いている様子。


「まあ、俺と侯爵が連携して、といったところか。竜魔石の武器がない状態で戦うと思わなかったから、屋敷が多少壊れたけど」

「その程度の被害で済んだならば御の字だろう。それで、話をするというのは?」

「まだ完全に味方になったわけじゃない。とはいえあと一歩なのは間違いない」


 エクゾンが持っていた不可解な情報などからシュオンも揺らいでいるのは事実……おそらく大丈夫だろう。


 ここで、俺は考える。現在俺やソフィア、そしてリチャルについては筋の通る理由づけがなされているが……エクゾンの様子ならば本当のことを話してもよさそうな気もしてくる。それを踏まえた上で作戦会議を開くという手もあるが……うーん、微妙なところか。


「やることは色々とあるけど、まずは屋敷内の混乱を収めることからだ。俺達の方は何もしなくていいらしいから、ここで少し待っていてくれ」

「ルオン様は?」

「俺は別所で待機。ま、シュオンのお目付け役だよ」


 そういうことで、シュオンがいる部屋へ。中に入ると、初めて出会った時と同様お茶を飲む彼の姿があった。ただし、傍らに剣は無い。


「……なんというか、ずいぶんと落ち着いているな」

「そうか?」


 肩をすくめ応じるシュオン。


「話をすると決まった以上、待つのは至極当然の話じゃないか?」


 ……切り替え早いな、この侯爵。


「おとなしくしてくれるのならこちらとしては有難いけどさ……で、あんたに質問がある」


 シュオンはネフメイザを直接見ている。まずは彼から情報収集だ。


「何だ?」

「ネフメイザについてだ」


 そこから俺やソフィアについて、エクゾンに行ったものと同じような説明を施す。結果、彼は歎息した。


「なるほどな。エクゾンが賛同したのは君の言葉も関係しているな」

「そうだと思う。で、当のネフメイザの様子について訊きたい」


 彼の情報から時空系魔法を使っているかを断定することは難しいかもしれないが……材料は多い方がいい。


「色々と組織を編成していることからも、活動的なのはわかるんだが」

「確かに、ネフメイザ殿は様々な事態を想定しているな。正直なところ、壊滅しかかった組織に対しそこまでやるのか、という思いはあった……というより、おそらく別のことを考えていたのだろう」

「別のこと?」


 聞き返すと、シュオンは笑みを浮かべた。


「まるで……そうだな、組織をできるだけ早く潰すために、また新たな敵が出てきても問題がないように準備をしている、といったところか。しかも何かに追われるかのように。『漆黒の剣』という組織も、その準備の一つだろう」


 ――やはり、ネフメイザは何かしら考えて動いている。これはもう時空系魔法を使っていると断定してもいいのでは。


「その中で、私はエクゾンの征伐を引き受けた……が、正直魔法を使って生殺与奪の権利を与えるくらいに過剰な警戒をしているところを考えると、疑問はある」

「魔法については……確実に、対策は成されていると思う。そちらの探知能力をすり抜けるような、何かが」


 俺の言葉にシュオンは同意するのか頷いた。


「そうかもしれないな。君の言う通りであれば心底厄介――」

「待たせた」


 シュオンが言い終える前に、ようやくエクゾンが部屋にやってくる。


「確認だが、シュオン。屋敷の修理費は要求してもいいか?」

「私ではなくて帝都に送れ」

「踏み倒される以外にないではないか」


 エクゾンは笑いながら話す。軽い声音なので、たぶん冗談のつもりだろう。


「ま、屋敷についてはこの辺りにしようか……さて、シュオン。会話をしていたようだが、どこまで聞いた?」

「彼らがどういう立ち位置なのか」


 俺を見ながらシュオンは答える。


「それにより、お前が反旗を翻した理由はなんとなく理解できたよ」

「そうか……で、だ。現状どう考えている?」

「言っておくが、私自身お前の主張を全面的に受け入れるような状態ではない。しかし、ネフメイザ殿の言葉を鵜呑みにできないというのは、わかった」

「そう考えているのなら十分だ」

「まあ、そもそも私に選択肢はないと思うが」


 ――シュオンはエクゾンの討伐を失敗している。このまま逃げ帰ればどうなるかわからない……が、まあ失敗イコール即処刑とはさすがにならないだろう。エクゾンが裏切っているような状況でこれ以上侯爵をどうにかしたくはないだろうし、第一彼を処断するとなると政治的なリスクもある。


「ここからは、エクゾン。お前がどうしたいかを考える必要がある」


 シュオンは言う……俺も内心同意する。

 ネフメイザについてわからないことはあるが、彼を「詰み」にするまでにはまだ時間が必要だ。そこに至るまでにどういう手法で進むのか。


「やり方はいくらでもある。ただネフメイザ殿は色々と対策を立てている様子。それを上回らなければ厳しいぞ」

「そうだな……では、シュオン」


 と、エクゾンは口を開いた。


「このまま一度領内に戻れ。討ち損じたが私に手傷は負わせた、という報告をしてな。お前の竜魔石の力で私の竜魔石を大きく損傷させ、再生能力を低下させしばらく動けなくした、とでも説明すればいい」

「それでネフメイザ殿が納得すると思うか?」

「納得できないにしても、軍勢を送り出すには時間が必要だ。当面は何もできんさ。ひとまず、お前はネフメイザ殿に協力しているというスタンスで活動してもらえればいい」

「その中で、何かあればお前に情報を渡すと」

「そういうことだ」


 ……まあ、その辺りが落としどころか。


「エクゾン、この戦いの結果については当然秘匿すべきだ。屋敷の人間に口止めしておけ」

「そんなこと言われずともわかっている。ああ、それとシュオン。屋敷周辺にネフメイザの配下はいないか? お前なら気付けるはずだが」

「私を観察する人間、ということか? 少なくとも屋敷の近くにはいないぞ。私の魔力探知能力から下手に監視をつけるのは疑心暗鬼にさせるとして避けたんだろう」


 ――俺も使い魔で屋敷周辺を観察しているが、怪しい人物はいない。この辺りは大丈夫だろう。


「私達が協力関係にあるという事実が露見したのなら、ネフメイザ殿もしかるべき対応を行う以上、私もわかるはずだ。ひとまず怪我をしたという形で当分私は領内にとじこもることにしようか」

「ああ。そうしてもらった方がいいな」


 シュオンの言葉にエクゾンは笑みを浮かべ、俺へ視線を向ける。


「君には、今度も働いてもらおうことになりそうだな」

「……何をするのか大体読めたよ。他の侯爵を味方に引き入れろという話だろ?」

「その通りだ」

「武器さえあれば屈服させることは可能かもしれないけどさ、それだけで寝返るのか?」

「大なり小なり侯爵はネフメイザに対し思うところがある。彼がどうする気なのかを説明すれば、仲間にはならずとも静観という選択を取るだろう」


 味方にできずとも、中立の立場にするというわけか。


「ともあれ、それを大っぴらにやるとなると当然帝都側が邪魔立てしてくるだろう。ここからはできれば密かにやりたいところだ」


 ……その方が帝都側の士気も下がるだろうし、俺も同意だ。


「どのようにやるかは私に任せてもらおうか。ではルオン殿、そちらは武器作成などが必要である以上、当面この屋敷で過ごしてもらおう」


 俺は息をつく。どうやらようやく、骨を休めることができそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ