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賢者の剣  作者: 陽山純樹
王女との旅路

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記憶のある会話

 レーフィンの言う通り、ソフィアはまだ契約できていなかった。そうした中俺と合流し、レーフィンは改めてソフィアへ名乗る。


「私は、このシルフの住まう場所で女王をしている、レーフィンと申します……あなたは、ソフィーリア王女ですね?」


 最初、唐突な発言に戸惑ったソフィアだったが――というか、王女であることがバレ、さらに相手がシルフの女王ということで二重にびっくりしたに違いない。


「賢者の末裔ということで、私自身あなたと協力したいと思いました」

「女王、あなたと?」

「はい」


 ニコリとするレーフィン。ソフィアにとっては驚きの連続であるはず。

 彼女はレーフィンの言葉を受けしばし戸惑っていた様子だったが、やがて、


「……わかりました。よろしくお願いします」


 こうして契約を行った。俺としても事情を知る存在として精霊が仲間となり……個人的にはこれで良かったのかなと思った。

 一応、シルフの住処にも使い魔を利用して観察しておくか。何か問題が生じれば都度対処すればいいだろう。


 契約すると、レーフィンの体が消える――精霊は契約者の中に魔力となって引っ込むことになる。けれどレーフィンは契約後すぐさまソフィアの横に出現し、俺達に問い掛けた。


「では、参りましょうか……とはいえ、次はどこに向かうのですか?」


 そういえば、進路を決めていなかったな。ソフィアが俺の事を見る。彼女は俺の従者なので、判断を仰ぐのは当然か。


「そうだな……」


 使い魔からの情報では、賢者の末裔である各主人公達は色々動いているが、まだ五大魔族に挑むような状況ではない。しかし今後、横槍を入れたい嫌なイベントが控えている人物がいるので、ひとまずその場所へ行きたい。

 だが事情を知らないソフィアにその理由を口にすることはできない……と、ここで俺は大陸の地図を思い浮かべる。そういえばイベントがある場所は――


「……よし、悪魔なんかが出現しているが、今はまだ魔族達の侵攻も緩い。今の内に契約できる精霊とは契約しておいた方がいいだろう」

「となると、他の精霊の所へ?」

「ああ。ちなみにレーフィンさん。ここから近い精霊の住処はわかるか?」

「……私の事は呼び捨てで構いませんよ。えっと、近くとなると地の精霊であるノームでしょうか」


 ――四精霊でもノームというと、人間よりも小さく、ひげを生やした老人みたいな姿かたちをしている精霊というイメージが強い。というかたぶん、転生前の世界ではそれが基本イメージだったはずだ。

 ただこの世界のノームの場合は老人はいない。確か少年みたいな容貌ばっかりだったはず。


「なるほど、次はノームですか」


 ソフィアが言う。気合を入れ直した様子。


 場所はシルフの住処から東で、横槍を入れたいイベントと同じ方角。徒歩で移動するにしても大陸の端から端などというわけでもないので十分イベントまでに辿り着けるし、契約もできるはずだ。


 また風の精霊と契約した後、戦闘を多少こなすといくらか魔法を習得する――ソフィアが習得している魔法もあるが、その中に俺が使う移動魔法を覚える。もっとも俺の使い方は応用なので、多少の訓練を施す必要があるはず……ノームの所へ行く前に、それを訓練すればいいだろう。


 時間的には余裕がありそうなので、魔法を覚えさせることに合わせソフィアを少しばかり鍛える……その後、ノームの所へ。これが一番効率いいはずだ。

 ただ、こうして活動する間に解決すべき問題もある。例えばソフィアのことが魔族にバレないようにするため、魔力の質を変える策とか……それについては、今後レーフィンとも相談しよう。


「よし、それじゃあ次の目的地はノームの住処。いいな?」

「はい」

「わかりました」


 ソフィアとレーフィンは相次いで返事。というわけで、俺達はシルフの住処を出ることとなった。






 ソフィアは風の精霊と契約することができたわけだが――下級魔法についてはいなくても習得できるので真価が発揮されるのは中盤以降。ただ他にも特典があり、若干ステータスが上昇もする。風の場合は速さが少しばかり上がる。


 加え、精霊と契約することですぐに習得できる魔法も存在する。風の場合は移動魔法である『バードソア』だ。ゲーム上の効果は風をまとい一定時間若干の防御力向上と移動速度上昇。ただこの魔法はゲーム上ではあまり使われなかった。


 防御力向上の方は効力自体雀の涙なので無視していいし、速度の上昇率は高めだが序盤は敵の動きも緩慢だったりと通常の速度で十分。後半になると移動速度向上の装備品が出るため、一定時間しかもたない魔法よりも装備品で補うケースが多い。そのためあまり利用する機会が少なく、人によっては産廃扱いさえするような魔法でもある。


 しかし現実となった今では、この魔法を応用し上手く使うことができれば驚くほど移動能力が向上するため、馬を持たない俺にとっては有用性が高い。

 というわけで、それを習得させるべく俺は頭を回転させる。意味もなく周辺の魔物を退治するというのも一つの手ではあるのだが……それよりかはモチベーションを上げるべく仕事として何か依頼を受けた方がいいだろう。


 俺達は一度シルベットに戻り……一日自由行動ということにした。レーフィンに事情は話してあるので、彼女の顔を見知っているかもしれない騎士との接触はしないよう言ってある。これで大丈夫だろう。


 そして俺はソフィアにギルドで仕事を確認しに行くと言い、今ある依頼を確認へ。


「……うーん」


 で、ギルドで内容を見て唸る。手頃なのがない。


 ゲーム上に存在していた依頼もチラホラ見受けられるが、依頼場所が進路とは真逆であったり、護衛依頼のような時間の掛かりそうなものだったりで、あまりやりたくない……というかこれ、誰かやらないのか。主人公達がやらないと放置状態なのか?

 ともかくこの場所ではよさそうな仕事がない感じ。なら旅の道中魔物を倒しつつ経験を積むしかないのか。


 そんな結論に達した時、ギルドの入口の扉が開く。誰かが声を掛けるのが聞こえ、その受け答えが俺の耳に入った。


「よお、久しぶりじゃねえか」

「ああ、護衛の仕事がやっと終わったからな。で、顔を出したんだがどうだ?」

「どうもこうも、魔王やら魔族が出て色々と厄介な仕事が増えたよ」


 ……ん?


 俺はその言葉に聞き覚えがあった。いや、聞き覚えというよりはその会話を文章で読んだことがある。

 つまりそれは、ゲームで見たことがある会話というわけだ。


「おっと、悪いね」


 そしてギルドに入って来た人物が俺を押し退けて受付に。容姿を確認すると、革鎧かつ肩程度にまで伸びた金髪を後ろで束ねた、どこか軽そうな印象を受ける男だった。


「よお! 今日は仕事あるかい?」

「お前さんのお眼鏡に適うやつがあるかどうかは知らんな」


 受付の男性は面倒そうに答える……この時点で目の前の人物が誰なのか思い出した。仲間になるキャラの一人だ。


 名前は確かギルバート=ロクオンク。女性を発見すると誰彼かまわずナンパする感じの軽そうな性格のキャラ。仲間にするためにはこのイベントの後彼が入り浸っている酒場で話しかければいいのだが、それには女性キャラが一人以上パーティーにいなければならない。


 能力としては典型的な戦士タイプなのだが、力よりは速さを主体とした能力を保有している。ゲームでは連撃や乱舞系の技については攻撃力に加え速さが威力に関係するため、そうした技の威力が高くなるという利点がある。しかし、ステータス的にそこまで高いわけじゃないので物語の後半に主力とするには弱い。


 ただこのキャラは他の戦士系と比べてMP初期値が高めであり、神聖魔法が使える。そのため上手く育てれば魔法も攻撃もできる万能キャラに……もっともこれはあくまで理想論であり、普通は器用貧乏になるので戦士系に育てることが多い。で、他の強いキャラが出てくればあっさりと乗り換えられる。


 実際俺も数える程しか仲間にしたことがない。最後まで使い切ったことはないし、会話の軽さからあんまり印象もよくない。

 これは関わり合いにならずさっさと退散した方がいいと思い、俺は会話をしている彼を尻目に外へと出た。そこに、


「ルオン様」


 なぜかソフィアが立っていた。


「……ギルドの場所は教えたっけ?」

「人に訊きました」

「そうか……えっと、なぜここに?」

「お昼は一緒に食べようかと」


 従者ということで、気を遣っているのだろうか……そんなことを思いつつ俺は「わかった」と答えようとしたその時、


「……おお」


 背後からギルバートの声が聞こえてきた。


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