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賢者の剣  作者: 陽山純樹
竜の楽園

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物語の流れ

 俺達は山を下り始め、町を目指す。その間にソフィア達にナーザレイド大陸について――というより『エルダーズ・ソード』の四作目『エデン・オブ・ドラゴンズ』の説明を行う。ちなみに俺はこの四作目についても一通りエンディングは見ていて、その記憶は頭の中にある。


「えっと、どこから説明すればいい?」

「おおまかなストーリーを教えてください」


 ソフィアからの要望。俺は「わかった」と応じ、話し始める。


「まずは、物語が開始した時点のこの大陸状勢からだな……ソフィアとリチャルは、ナーザレイド大陸が一つの国によって統一されているのは知っているな?」


 二人は頷く――この大陸において国というのは一つしかない。名はトルバシア帝国。


「今回の騒動の発端となったのは、先代の皇帝が病気で亡くなり、齢十五で息子が即位したことにある。この国の法律では成人は十八歳。よって成人にも満たない存在が皇帝となり――結果、政情不安となり乱が発生した」

「なんだか、ありがちな話だな」

「そうだな……小説とかによくある話の展開だ」


 そこまで言った時、リチャルの顔が険しくなる。


「……一つ思いついたんだが、いいか?」

「リチャルの言いたいことはわかるよ。病死した皇帝は実は暗殺されていて、今回の騒動には首謀者がいるって話だろ?」


 彼の口が止まる。ここで、ソフィアが質問。


「……いるんですか?」

「それについては後で説明するよ……さて、主人公の説明だな。名はユスカという男性。トルバシア帝国首都ナタスで日々鍛錬に励む見習い兵士だ。物語は彼の上司が命じられた魔物討伐に従軍するところから始まる」


 ソフィアとリチャルは、歩きながら俺の言葉を聞き続ける。


「そこで思わぬ魔物が出現し、隊が壊滅する……上司の騎士は皇帝と親交のあった人物であり、首謀者が魔物を利用して謀殺した。ユスカも殺されそうになるが、上司の持っていた剣を利用して撃破する」

「そっから、皇帝と顔を合わせるようになったというわけか?」


 リチャルの問いに、俺は頷いた。


「正解だ。ユスカは以後、皇帝からの指示を受け混乱した大陸の中を転戦するんだが……やがて、最大の敵と遭遇。というより、首謀者がけしかけたと言った方がいいか。ユスカの存在が厄介となり、始末しようとした」

「その敵とは?」


 ソフィアが問う。俺は一拍置いた後、


「……この大陸で領土を保有する四人の貴族。通称『四竜(しりゅう)侯爵』だ」

「領土を保有?」

「帝国は中央に皇帝直轄領が存在し、囲むようにして東西南北に侯爵の領土が存在する。首謀者が侯爵を味方に引き込み……ユスカを殺そうとした」

「邪魔者はいかなる存在でも阻むというわけか」


 リチャルのコメント。俺は即座に頷き、


「けど、彼はどうにか危機を脱し……皇帝が自分を殺めようとしたのだと思い、悩む。けれど考える余裕はほとんどなかった。乱を抑えるためか帝国軍が動き出し、中には見せしめとして村を焼くような事案すら発生。ユスカは皇帝の暴虐を止めるべく反乱組織に身を投じることになる。実際は首謀者が皇帝を操った結果だが……で、ユスカは戦う中で多くの仲間と……重要な三人の人物と出会う」

『その三人が、ユスカという人物の行く末の鍵を握る者達か?』


 ガルクの質問。俺は「その通り」と応じた。


「三人は、簡単に言うと皇帝になる権利を有する者達だ」

『何?』

「といっても、血がつながっているわけじゃない。帝国で皇帝となるには、とあるアイテムの力を使いこなせるかによって決まる。王家はその力をとある魔法によって行使することができるんだが……その三人は魔法を使わなくとも使用できる。あ、これは秘匿されている情報だから、口外はしないでくれ」

『戦いの後、その三人の誰かが皇帝となるのか?』

「ユスカと一番多く共に行動した人物が選ばれることになる……その事実が判明するのは物語の後半。それまでは非常に大きな力を持った存在、という程度の認識だ」


 現実になって考えてみると、今までの皇帝一族と関係ない人物が皇帝になって大丈夫なのかと思う。一応物語の中で理由づけは行われていたが――


「さて、物語の続きだが……反乱組織に身を投じ、彼は力をつけ仲間達と共に『四竜侯爵』と戦い勝つようになる。その後、いよいよ皇帝との戦い……というところで、事件が起きる。皇帝が崩御。実際は首謀者が殺めたんだが……結果一時的に皇帝が空位となり、首謀者が代わりに政治を行うことになった」


「――全て、皇帝の責任だと押し付けたわけですね」


 ソフィアの言葉。俺は「そうだ」と答える。


「この時点では、城にいる重臣達も皇帝の行いは暴走だとした。そうした中、主人公達は首謀者と話し合いをするために帝都へ乗り込み……そこで相手が本性を現す」

「相当首謀者は信頼されていたようですね……どういった人物なのですか?」

「皇帝の側近で、名はネフメイザ。とはいえ、その人物の目的は帝位を奪うことではない。皇帝や『四竜侯爵』の所持する力を手に入れることだ。皇帝を殺害したことでとうとう首謀者は牙を剥き、力を行使し思うがまま行動するようになる。ユスカ達を呼んだのは、一気に始末するためだ」

「皇帝の力……はわかりますが、『四竜貴族』の力も回収していたんですか?」

「首謀者は研究者で、『四竜侯爵』の持つ物を解析し、皇帝の力と融合できるような術を編み出した……物とは竜人の力を大きく増幅させる魔石――『竜魔石』なんだけど、首謀者は侯爵達を戦わせることで竜魔石が実戦でどういった力を持つかデータを採取し、また色々と便宜を図る見返りに竜魔石に関する資料を提供させた。そして皇帝の竜魔石を奪い……その力を融合させたというわけさ」


 ――ゲームでは、皇帝の側近である首謀者は善人として描かれていた。暴走する皇帝を諌めようとするが効果もなく……という形だったが、伏線も存在していたので彼が首謀者だと察することはできるようになっている。もっとも、俺は気付かなかったけど。


 ともかく、首謀者がこの大陸の誰もを騙していたのは間違いなく、演技力は相当高いと言える。


「そして、首謀者を主人公達が倒すというわけですね」

「ああ……ネフメイザの力により帝都は崩壊。だがその戦いの中で鍵となる三人の仲間のうち、ユスカと長く戦い続けた人物が覚醒。皇帝が所持していた竜魔石の力を扱えることが判明し……ネフメイザはどちらがこの力にふさわしいか宣戦布告。最終決戦に入り撃破……ストーリーの流れは以上。それで、今の俺達がやることは二つ」

「まずは情報集めだな」


 リチャルが言う。俺は即座に頷き、


「物語がきちんと進んでいないとしたら、現時点でどういった状況なのかを把握する必要がある。皇帝は存命なのか、『四竜侯爵』は生きているのか。そして主人公は……その辺りから調べたい。そしてもう一つ……武器の確保だ」

「武器?」

「侯爵などが所有する竜魔石の力に対抗するには、専用の武器がいる。といっても賢者の力が必要などという話じゃない。竜魔石に対抗できるのは、同じ竜魔石……この大陸でこの力が含有する武器は一般的に流通されているから、俺達に合う物を探して入手したい」

「皇帝達が持っているのは特別製ってことか?」


 向けられたリチャルの質問に、俺は首肯する。


「その通り。特別な力に対抗する以上、生半可な物では難しいかもしれないな。専門的な場所で購入した方がいいかもしれない」

「そうか……ちなみに、そういった武器なしだとルオンさんでも勝つのは無理なのか?」

「食い止めることはできるけど、倒すのは無理だな。例えば侯爵の一人は驚異的な再生力の持ち主だが、体を消滅させても、竜魔石を用いた武器でなければ何もないところから再生する」

「無茶苦茶だな。けど逆を言えば、その竜魔石の武器さえあればどうにかなるのか……ちょっと待て。首謀者がわかっているならそこを直接狙えば――」

「できればそうやりたいんだけどな……その辺りの説明も改めてするよ」


 町へいよいよ近づく――と、ここで俺はさらに述べる。


「この町の名前はルノテイラ。皇帝直轄領の一つで、本来戦乱に巻き込まれなかった場所だ」

「……そういえば、もう一つ懸念があったな」


 と、リチャルが肩をすくめた。


「言葉は通じるが、この大陸の金はないからな。その辺りはどうする?」

「念の為携帯していたアイテムでも売り払うさ。それなりに高額の物だし、しかるべきところに売れば当面の旅費にはなると思う」


 俺は町に目を向けながら、さらに述べる。


「聞き込みの他、使い魔を用いて情報収集をしたいが………今日はまず聞き込みかな」

「わかりました」


 俺の言葉にソフィアは承諾し――町へと入った。


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