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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魔王との決戦

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彼への依頼

「……明日には、騎士団側も準備が整う」


 ここでカナンが話を戻す。


「ルオン殿、ガルク殿。魔王との戦い……よろしく頼む」

「はい」

『うむ』


 ガルクが返事をした後、ふとソフィアに目を向ける。彼女は小さく頷き返した。


 その後俺は部屋を出て、砦の入口へと向かう。準備も佳境に入っているはずだが――


「お、話し合いは終わったのか?」


 外に出た時、いち早く声を掛けてきたのはアルトだった。


「ああ、明日、いよいよ出陣となりそうだ」

「そうか……しかしあれだな、少々心残りだな」

「何が?」

「ルオンの物語からすると、俺が賢者の力を手に入れる可能性もあったんだろ?」

「ああ。けど、そう簡単に話は進まなかった」


 こちらの言葉にアルトは苦笑する。


「そうだな。ま、俺は俺のやれることをする」

「頼むよ」


 声を掛けた後、俺はシルヴィの姿を見つけ、そちらへ歩く。


 周囲は騎士に加え、精霊の姿も多少ある。誰かと契約したのではなく、連絡役だろうか。人間と精霊がここまで密に連携して、という決戦はゲームになかった。これは俺が想像していなかった状況だ。


「シルヴィ」


 声を掛けた時、彼女の傍にはラディとネストルがいた。話し込んでいたようだ。


「ん、ルオンか。話は将軍から聞いている。明日だそうだな?」

「そうだ。準備は?」

「問題ない。ボクの剣技をしかと目に焼き付けさせてみせる」


 そう宣言する彼女に、俺は頷きラディへ視線を注ぐ。


「そっちは?」

「大丈夫だ」


 笑みを覗かせる彼の声には、幾分興奮が混ざっている。


「最後の戦い……そして賢者の力を所持する戦士達……気分が高揚しているよ」


 ラディからすると、騎士を始め精霊などが集まる今の光景は興奮ものなのかもしれない。


「賢者の力を持つ人間でも魔法使いは、ラディ一人だ。その役割が大きな意味を持つかもしれない」

「望むところだ」

「大丈夫そうだな……生き延びろよ」

「無論だよ」

「ラディのことは、まあ心配するな」


 ここでネストルが口を開いた。


「今まで暴走を抑えてきた。こいつのことは任せておけ」

「なんだか、ずいぶんと慣れた言い方だな」

「苦労したからな」


 その言葉でため息を吐くネストル。するとシルヴィが苦笑した。


「そんな調子で、よく今までコンビを組んでいたな」

「ま、それなりにつるんでいると楽しかったからな」

「戦いが終わったらどうするつもりだ?」

「その時考えるさ」


 俺は彼らの会話を耳にはさみながら視線を移す。別所にリチャルの姿を見つけた。


「あ、すまない。俺はこれで。ラディ、頼んだ」


 手を上げて呼び掛けた後、俺は歩き出す。リチャルのところへ向かう間に、相手も気付いた様子だった。


「……ルオンさんか」

「準備は?」

「問題ない。いつでも」


 頷くリチャル。士気の高さに彼もまた気分が高揚している様子。


 そこで、俺は彼自身のことが気になった。何回も時を巻き戻す彼の存在……だから俺は、質問することにした。


「リチャルさん、戦いが終わったらどうするつもりだ?」

「……この世界には、同一人物が存在する。無事であることは既に確認済み。魔王との戦いが終われば、俺の役目も終わることになるな」


 彼は肩をすくめ、顔に自嘲的な笑みを見せた。


「どのような結末を迎えようとも、俺という存在は基本必要がない……適当な場所にこもって一人研究にでも勤しむさ」

「そうか……」

「俺のことが気になるのか?」

「まあ、な」


 ――ここで俺は、考えついたことを口にする。


「もし――」

「ん?」

「研究をするというのなら、依頼したいことがあるんだが」

「……ルオンさんからまさかそういう話が出てくるとは。どういう内容だ?」

「あ、でも内容は魔力解析なんだよ。詳細を知りたいというか……専門外なら別にいいんだけど」

「構わないが」

「なら……この大陸の地底には、非常に特殊な魔力が存在している」

「特殊?」

「神霊でも詳細がわからない、となれば興味を抱くか?」


 俺の問いに、リチャルも食いついた様子。


「ほう、それは面白そうだな」

「興味があるならでいいけど」

「構わない。だがどういう魔力なのかは直接調べないとわからないな」

「もし仕事を受けてくれるなら、案内するよ」

『――ルオン殿、彼に頼むのは理由があるのか?』


 突如、ガルクが肩に出現。


『禁術を使用することができた技量を考えると、研究者としては中々のものだと思うが』

「神霊にそう言ってもらえると、非常に光栄だ」


 笑みさえ浮かべ、リチャルが言う。


「で、ルオンさんが要求する理由は聞きたいな」

「そう複雑な理由でもないよ。俺の事情を知っている人物に頼った方がいいかなと思ったんだ。それに、賢者の血筋だからな」

「なるほど、な。ま、ルオンさんからも評価されていると受け取ろう」


 声を上げるリチャル。ある程度納得してくれた様子。


「依頼とあらばやってみるさ。しかし、今は魔王との戦いだな」

「ああ。頼むよ」

「もちろんだ」


 リチャルと別れる。と、ここでフィリに目が行ってそちらへ赴こうとしたのだが――


「あ、ルオン」


 キャルンの声だった。横に視線を転じると、近づく彼女の姿。


「アルトから事情は聞いたよ」

「そうか」

「ここまで来た以上、私も最後まで付き合うからよろしく」


 ……なんというか、彼女とは偶然の出会いだったわけだが、その縁で最後までこうして共に戦うことになった気がする。

 もしソフィアを鍛える旅を行う間に別の仲間と出会っていたら……彼女のように共に戦っていたのだろうか。


「そうか。けど、無理はするなよ」

「わかってるよ。ちなみに、物語の中で私は最後まで戦った?」


 ……俺は肩をすくめるに留めた。性能的に弱かったから、きっと最後まで使い続けたプレイヤーは少なかっただろうなと思う。


「キャルンは、戦いが終わったらどうするんだ?」

「ん、私はアルトと組むのが結構居心地いいし、当分は彼と組んで根無し草かなあ」

「そっか……キャルン、頼むぞ」

「もちろん」


 手を振り去るキャルン……しかし、まさか彼女がこの最後の戦いに参加するとは。世の中わからないものだ。

 ここで改めて俺はフィリの所へ。コーリと話をしているところであり、俺の姿を見たフィリは会釈をした。


「どうもです、ルオンさん」

「ああ。明日出撃となるけど、大丈夫か?」

「体調は万全です」

「それならよかった」


 俺はここでフィリとコーリを一瞥。


「……フィーントの村で出会った時、こうやって色んな人と共に魔王との決戦に赴くとは想像もしなかったよ」

「俺もですよ。コーリは?」

「想像できるわけないじゃない」


 肩をすくめたコーリは、ここで突如思い出したかのように俺へ言う。


「フィーントの村だけど、少しずつ復興は進んでいるみたい」

「そっか……あ」

「どうしたの?」

「カティには俺のことについて色々怪しまれたんだよな。いずれ事情を話して欲しいと言われたけど……結局、会わずじまいか」


 戦いが終わったら挨拶に行こうかな。村の復興状況も気になるし。


「ちなみに、二人は戦いが終わったらどうするんだ?」

「俺は当分旅を続けます」


 フィリは決然と言う。魔王の脅威がなくなっても、魔物が完全に消えたわけじゃない。それを倒すために戦う、ということなのだろうと思う。


「コーリはどうする?」

「私も……付き合うよ」


 と、やれやれといった様子で答えた彼女……両者の間には、長い旅を経たことによって強い信頼感が生まれているようだ。

 二人はフィーントからの付き合いだからな。戦友として思うところもあるだろう……深くはつっこまないけど。


「二人とも、魔王との戦いは今まで以上の激戦となるはずだ。気合入れてくれよ」


 そう言葉を言い残し、俺は二人の下を去った。次いで目に映った人物……そこに、俺は近づいていった。


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