候補の二人
時間的に、およそ三十分程度でガルクの説明が終わった。話自体は簡潔で分かりやすくあっという間に終わったのだが、コロナが質問を行ったため、多少時間が掛かった。
「面白い話ね。で、私には神霊の力を注げる素材を作って欲しいと?」
『うむ、人選として魔王を討つことができる賢者の血筋を三人連れてきた。コロナの目から判断し、誰に合った素材にするのか検証して欲しい』
ガルクの言葉にコロナはソフィア達を見据える。
「ふうん、私がね……いいわ。なら、少し調べさせてもらうけど」
「何をするんだ?」
俺が質問すると、コロナは笑みを浮かべた。
「ちょっとばかり魔力的な素養を調べるわ。一人ずつ確認したいから、順番に私の前まで来てもらえる? まずはそこの男の人」
フィリは指示され、少々緊張した面持ちでコロナへ近づく。
そこからフィリは自己紹介を済ませ、調査が始まる。何をするかと思ったら、コロナは唐突にフィリの頭に手を置いた。
「じっとしていなさい」
言葉にフィリは従う。時間が掛かるのだろうかと疑問に思う間に、彼女は手を離した。
「はい、次。鎧を着た女性」
「もう終わったのか?」
俺の言葉にコロナは視線を移す。
「ええ、まあね。結果は全員終わった後に話すわよ」
そう言って作業を再開。エイナに対しても同じことをして、最後にソフィア――
「うん、大体わかったわ」
『魔力の検証をしたのか?』
「そうよ。ガルク、あなた達だってできるだろうけど、私は聖樹の影響なのかより精微に能力を把握できるの」
誇示するように述べるコロナ。
「さて、説明しようかしら。結論から言うと、能力的にはおおよそ横並びね」
そこまで言うと、コロナは笑みを浮かべた。
「最初、三人にそれぞれ素材を渡すことも考えたけれど……神霊の力を注ぐくらいの素材を生み出すのには相当な力がいる。聖樹の力を利用しても、満足のいく物は剣一本生み出すくらいが限度かしら」
『それほどの力を使うのか?』
「あなた達の力を注ぐとなると、生半可な物では対応できないということよ……三人に合う素材を力を分散させて生み出すのもアリだけど、どうする?」
「……どちらが答えなのか、というのは断言できない」
今度は俺が話し出す。
「けど、力を分散して魔王を討てませんでしたでは話にならない。確実に倒すには、力を結集させた方がいい」
『我も同感だ』
「わかったわ。ならそういう方向でいくわ……で、三人の魔力を感じ取った評価だけど」
そう前置きをして、コロナは話し始めた。
「現在、一番魔力が多いのはソフィア王女ね。これは修練の結果だと言っていいと思うわ」
『現段階で強いのは、彼女だと?』
「そんなに差はないけどね。さっき、おおよそ横並びって言ったでしょ?」
そこまで説明したコロナは、ソフィアとフィリを一瞥した。
「とはいえ、内に秘める潜在能力については少しだけ差がある……その中で、フィリさんと王女様が同列かな?」
「俺が、ですか?」
フィリが聞き返すと、コロナは笑みを浮かべた。
「フィリさんはどうも賢者の力との相性がいいみたいだから、もし賢者の力を駆使するというのなら、フィリさんが一番いいかもね。ただし」
「ただし?」
「精霊や神霊の力を利用したものとなると、王女様の方に軍配が上がるかなぁ」
『……コロナの見立てで、二人に絞られるというわけか』
ガルクが述べる。フィリかソフィア……エイナに視線を送ると、コロナに話し出そうとしていた。
「私では、力不足だと?」
「資格を得ているのは間違いないわよ。けど、残りの二人からすると少しだけ差がある。それを気にするか気にしないかだけど」
「……わかりました。私は剣を手にした方を守るべく動くことにしましょう」
エイナが言う。顔つきはどこか悔しそうなものだったが、それ以上何も言わず引き下がった。訓練でどうにもならないから仕方がないか。
「どちらを選ぶかは、話し合いで決めたらどう?」
コロナの提案――そうやって言う以上、どちらを選んでもさして変わらないということだろうか。
『確認だが、二人の内どちらかを選んで……メリットとデメリットはあるのか?』
今度はガルクが問う。するとコロナは小首を傾げつつ返答。
「うーん、こればっかりは判断が難しいかな。賢者の力を活用する潜在能力はフィリさんの方が上回っているけど、精霊や神霊の力を利用する力はソフィア王女の方が上回っているし。魔王の能力がどういったものなのか判断できないと難しいわね」
『精霊については、王女が精霊と契約しているからなのか?』
「そういう面もあるけど、きっと元々精霊の力を引き出す能力に長けているんじゃないかな。たぶん同じようにフィリさんが契約しても、難しいと思う」
……なるほど。しかしこれは微妙だな。魔王がどのような対策を打ってくるのかわからない。今以上に賢者の力を強化せずとも対応できるのかどうか……むしろ精霊の力を利用した方が、より強力になるのか。
『魔王の賢者の力を利用した結界は、賢者の血筋であれば貫通できる』
ガルクが述べる。それにエイナが反応。
「逆を言えば、今以上に賢者の力を活用する必要はないと」
『そう考えているが……ふむ、やはり魔王がどのような手を打ってくるかわからないため、断定はできんな』
うーん……これは判断に悩むところだ。
シナリオが大幅に変わり魔王自身強化されていないのだから、そう神経質になる必要もない……という解釈もできるが、俺の存在を目の当たりにした魔王がどう動くか。
「……賢者の力、もしくは精霊の力を上手く扱えるようにする技術は、学べないのか?」
俺が質問。コロナ含めこの場にいる全員の視線が集まる。
「ソフィアは賢者の力に対し、そしてフィリは精霊の力に対し課題要素がある。ならばそれを引き上げる訓練をすればいい。けどこの場合、時間が問題になるんだけど」
『素養があるのを確認するのはいいかもしれないな』
ガルクが言う。俺はどういうことかと目を向ける。
「ガルク?」
『ここに数日程度留まるくらいの余裕はある。その間に二人が訓練を行い、成長の余地があるのか判断するというのはどうだ?』
「けど、精霊はともかく賢者の力に対する訓練なんて、方法がわかりませんよ」
ソフィアが声を上げる。無理もない反応だ。
「確かに、ね。それに精霊の力を扱う手段だって、決して確立されているわけじゃない」
コロナが言う。視線の先にはフィリの姿。
「よって、二人とも非常に難しい訓練になるわ。それを行った上で判断する、ということでいいのかしら」
「期限は?」
俺が問うと、コロナは考え込む仕草を見せ、
「そうねぇ、三日といったところかしら」
「ずいぶんと短いな」
「可能性があるのか判断するには十分な時間ではないかしら。この島にしばし滞在し、色々と検証してみなさい」
コロナの言葉に俺は沈黙し……やがて頷いた。
「わかったよ。けど、もし両者共に芽が出なかったらどうする?」
「その時は多数決にしようかしら……ああ、それと一つ」
と、彼女は笑みを浮かべ、
「フィリさんは精霊の力の活用の仕方よね? なら私に任せてもらえない?」
「それはいいけど……ソフィアの方は?」
「あなたに任せるわ」
「俺に?」
「知識があるんでしょ? なら、やり方だって思い浮かぶかもよ?」
無茶言うなよ……そう思いつつも、頷く他なかった。




