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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魔王との決戦

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聖樹の精霊

 ――翌日。


 俺とソフィア。さらにエイナとフィリ――加え、魔物を使役するリチャルが集まり、西の果てに向かうべく移動を開始した。

 リチャルが使役する魔物は竜を模したもの。その背に乗り移動するわけだが……障壁を利用し風なんかを防ぐため、結構快適に移動できる。なおかつ速度はかなりのもので、この調子なら移動途中休憩を挟みつつも、数日で辿り着くことができそうだ。


「……剣ができれば、いよいよ魔王との決戦ですか」


 ソフィアが口を開く。それに俺は首肯。


「現在ガルク達のおかげで魔王の動きが制限されている……この間に、俺達は出来る限りのことをしないといけない」

「とはいえ、最後の最後まで気を抜くことはできないということですね」

「その通りだ」


 俺は返答しつつ、フィリに視線を移す。座り込んで落ち着きのない様子。


「どうした?」

「ああ、いえ。その、俺なんかが立ち入っていいのかと」

「フィリ自身、五大魔族を撃破した経験があるんだ。自信持っていいと思うぞ」

「しかし、それはあくまで皆さんの力を借りてこそ」


 謙虚だなあ……その辺りはソフィアもエイナも一緒か。


 ソフィア達は全員、自分達の力でここまで到達したなどとは思っていないだろう。賢者の血筋とはいえ人間である以上、個の力には限界があるから……だからこそ、魔王を討つべくさらに自らを鍛えようと強い意志を持っている。


「――ルオン様、今後、私達がやるべきことは?」


 ソフィアがさらに尋ねる。


「私達三人のうち、誰かが剣を握ることになりますが……その後はどうすれば?」

「ひたすら修練しかないな。ソフィア達の成長ペースなら、現時点からある程度鍛えれば、魔王を撃破できるレベルに到達できるはずだ」


 五大魔族の二体を同時に撃破した余波で、物語の展開が早くなった。魔王の居城に出現する魔物は、魔王と共に行動していた悪魔達で間違いない……となると、現段階では少し大変かもしれない。


 俺ができる限りのフォローをするといっても、魔王がいる本拠地だ。庇い切れなくなるような事態にはしないようするつもりだが、万全の準備を整えた方がいい。


「カナン王には、剣を生み出すために協力をお願いしてある。精霊コロナから得た素材を活用し、人間と精霊が力を結集して剣を生み出す……確実に魔王に対抗できる力にはなるから、あとはソフィア達の頑張り次第か」

「扱えるよう、精進します」


 ソフィアの言葉にエイナやフィリも同調するような表情。それに俺は納得の表情を浮かべ、リチャルに尋ねる。


「適当な場所に降りて、今日は休憩しよう」

「わかった。この調子ならばそれほど経たずして辿り着くぞ」

「よし……で、ガルク」

『どうした?』


 肩に子ガルクが出現。


「精霊コロナについてだが……」

『それほど交流をしていたわけではないため、あまり多くは語れんぞ』

「私も同意です」


 ソフィアの横にレーフィンが出現し、口を開いた。


「精霊コロナ自身、他の精霊と距離を置いていましたからね」

「何か理由が?」

「聖樹を守るため……でしょうか。無用な接触を避け、角が立たないようしてきたとでも言いますか」


 ふむ、話し合いは簡単なのかそれとも難しいのか。ともあれ一度接触してみないと始まらないな。


「ちなみに、友好的なのか?」

「どうでしょうか……判断に困るところですが、決して攻撃的な存在ではありませんよ」


 それなら安心だが……まさかこの期に及んで戦うことになるとは思わないけど。

 色々と不安はあったが、俺は到着まで深くは考えないことにした。






 数日後、俺達は障害も無く西の果てへと辿り着く。大陸と海を隔てて存在する孤島――そこは、森林生い茂る太古の森とでも呼べばいいような、木々に覆われた島だった。


「壮観だな」


 上空から見下ろしリチャルは述べる。俺は心の中で同意しつつ、海岸を発見する。


「リチャル、あそこに」

「了解」


 下降を開始。それと同時、肌に染み渡るような魔力を感じ取る。


 おそらく聖樹が発する力……あらゆるものを包みこむような深い魔力。これまで様々な魔力を肌で感じてきたが、そのどれとも異なる、母性すら感じさせる気配。


「すごいですね……」


 ソフィアが呟く。やがて海岸に降り立った時、真正面に森へ入る道が見えた。


「リチャルはこの場で待機していてくれ」

「わかった。気を付けて」


 彼の言葉に頷いた俺は、ソフィア達を先導し海岸へ下り立つ。

 入口へ近づくと、さらに濃い魔力を感じ取ることができた。道は木々によってやや視界も悪く、太陽の光も少ない。明かりの魔法が必要だな。


「それじゃあ、進むぞ」


 俺は照明の魔法を使用した後、先導するように歩き出す。後方にソフィア達が続き、リチャルを残し森へと入った。


 ザワザワ、と木の葉が揺れる音も聞こえる。これだけの魔力を抱える以上、魔物の類だっていると思うのだが、まったく現れることはない。


「ひどく不気味ですね」


 フィリが口を開く。剣の柄に手を掛けている彼だが、やがて魔物が襲ってくる気配がないと悟ったか、ゆっくりと手を離した。


「ガルク、精霊コロナは大陸の状況を知っているのだろうか?」


 ふいに俺が問い掛けると、ガルクは右肩に出現して答える。


『把握しているだろう。魔物が一体も出現しないというのは、敵意がないことを示しているのかもしれん』

「その中で俺達がここを訪れた理由とかは……」

『さすがにそこまでは把握していないだろう。精霊コロナが分身や配下などを派遣していれば、精霊達も気付くはずだ』


 なら、戦いに際し協力を仰ぎに来た……というくらいの解釈だろうか。


 森の中でも戦闘一つなく、俺達は森をどんどん進んでいく。さすがに無警戒というわけにはいかなかったが、それでも敵意がないことだけは理解できたので、歩調自体は割と早い。

 そうこうする内に、俺達はとうとう島の中心部に到着する。そこに、一際大きな大樹が存在していた。


 森と同化しており巨大ではあるのだが圧倒されるような感じではない。ただ、他の木々と比べずっと濃い魔力を発しているのは間違いなく――


「――ようやく来たのね」


 その時、声がした。見れば、大樹の根元に一人の少女が立っていた。


 白いローブを着た女性。見た目は十代後半といったところだろうか。髪までも輝くような白で、自然の緑が広がるこの場所でずいぶんと目立つ。

 顔立ちは、綺麗というより可愛いという表現をすればいいだろうか? 妙に愛嬌がありながら、それでいて強い存在感を放っている。


「大きな戦いが終わったから、もう私の出番はないと思っていたけどね」


 ただ、その口調はどこか刺々しい……というか、どことなく高飛車な印象を受ける。


「あなたが、精霊コロナ?」

「ええ、そうよ」


 ソフィアの問い掛けに精霊――コロナは応じる。


「実のところ、名前はないんだけど……ま、あなた方がそうやって呼ぶのなら、準じようかな」

『――久しぶりだな、コロナ』


 そこでガルクが声を発する。途端、コロナは目を見開いた。


「あらガルク。ずいぶんと可愛い姿ね」

『これは分身だ。今回は話をするためにやってきた』

「ふうん……けど、私の力って必要なの?」

『無論だ。本来ならもっと早く来てもおかしくなかったが、色々と状況が重なりこのタイミングとなった』

「あ、そう。けどこの段階で来たということは、必要無さそうにも思えるけど」

『そうでもない。むしろ、この戦いの中核を担うことになるだろう』

「……へえ?」


 興味深そうに声を上げるコロナ。なんだか割と食いつきがいいので、あっさりと話に乗ってくれそうだが――


『事情は我から説明しよう。ルオン殿、貴殿のことも話すがいいか?』

「ああ、構わない」

「なんだか複雑な事情を抱えているようね。私としてはあなた達についての情報は持っていないから興味があるわ」

『では――』


 ガルクは、コロナへ向け説明を開始した。


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