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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魔王との決戦

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剣の使用者

『まず、大陸の状況から説明させてもらう。五大魔族達が仕込んだ魔力についてはまだ地底に残っており、消去には時間が掛かるだろう』


 そう切り出したガルク。口調は硬く、あまり良い状態とは言えなさそうだ。


『我が懸念するのは、この残っている魔力について。魔王の居城についても多少調査した結果、地に残っている魔力を利用して、魔法を行使する可能性があると結論付けた』

「それは、どのくらいの規模になる?」


 俺の問い掛けに、ガルクは僅かな間を置いた後、語る。


『大陸が崩壊するような規模でないのは間違いない。だがかなりの被害が出るのでは、と我は推測している』

「その対策は?」

『ここが問題だ』


 ガルクの言葉は、室内にいた面々の注目を集める。


『地底を調べていた時それに気付き、我を含む神霊が魔王が力を利用しないよう対策を施した。現在、魔王の居城を囲むように障壁を形成し、内外を遮断しているような状況だ。侵略していた魔族の大半がいなくなったからこそできる所業なわけだが……構築した障壁に魔力を注いで魔王に破られないよう現在も強化している最中で、申し訳ないがルオン殿達を通すことができない』

「……となると、もし障壁を解除したら魔王が攻撃を?」

『その可能性が高いと我は考える……というより、魔王としてはそのように動くべく居城にいるのかもしれん。無理矢理障壁を破ろうとする可能性もゼロではないが……我らが全力で対応する。ルオン殿達は、魔王を討つべく準備を進めてくれ』

「その障壁は、地底の魔力がなくなるまで使用し続けるのか?」


 さらなる疑問に対し、ガルクは頷いた。


『うむ、そうだ。現在、大急ぎで地底に残る魔力を精霊達が除去しているところだ。そう時間は掛からない。魔王と戦うのは、この作業を終えてからが望ましいだろう』

「剣を作成する時間は?」

『間違いなくあるな』

「ならば決まりですね」


 ソフィアが言う。


「私達のやることは魔王の策を上回るほどの……それを平然と凌駕するほどの力を持った武具を創り出すこと、でしょうか」

「ま、それが一番か」


 俺は息を吐き、仲間達に提案する。


「物語の中では、魔王は居城で待ち構え動かない。よっていくらでも準備できるわけだが……その通り話が運ぶかもわからないし、何ヶ月も待っていたら魔王が十分な対応策を講じるだろう。大きな戦争が終わって慌ただしいけど、まだ動き回る必要がある。で、問題はここからだ」

「誰がそれを使うのか、だろ?」


 アルトが問う。俺はすぐさま頷いた。


「賢者の血筋……それも物語の主人公としての役割を持つ人物がこの場にいる。だから決める必要がある。生み出した武器……誰が使うのかを」


 俺の言葉に話を聞く面々は一同沈黙。そこに俺が解説を加える。


「もっとも、やり方は色々とある。先ほど説明したように、剣の素材を生成するわけだけど、何も一つに集約する必要はない。賢者の血筋かつ、五大魔族から賢者の力を得た面々にそれぞれ武器を渡すという手法も存在する」

「力を分散させるより、一つにまとめた方がいいんじゃないか?」


 クウザが発言。それに同調するように、ラディが続く。


「こちらも同じ見解だ。魔王はどうやら何かしら策を講じようとしている……それに対抗するために、最高の武器を生み出す。これこそ魔王を討てる可能性が一番高いやり方だと思う」


 ……やり直しができない以上、それが無難か。俺は頷き、口を開く。


「そうだな。できる限り力を注いだ武器を生み出すとして……確認だが、剣でいいのか?」

「杖のような物よりは、効果は大きいと思う」


 そう述べたのはまたもクウザ。


「杖を用いる場合、当然魔法で攻撃するわけだが、杖、魔法と魔力を変換する時点で効力が減ってしまう。賢者の力に加え、武器そのものの力を利用する場合は、直接攻撃ができる物にすべきだ。となると、賢者の血筋の方々が主に使用している長剣が無難だろう」

「賛成です」


 同調するようにフィリが言う。俺は頷き――


「では、次の問題だな。誰が剣を使うか……これは魔王を誰が討つのか、ということとイコールなわけだが」


 ここでどういった戦法を想定しているか説明した方がいいと思い、口を開いた。


「今考えている魔王撃破のやり方は、俺を含めた他の面々で剣を所持する人を守る。そして剣の使用者が力を結集させ、魔王に攻撃……当然俺も援護するし、盾になる」

「ルオンが盾なら、安心できるというものだな」


 シルヴィが言う。俺はそれに肩をすくめた後、なおも語った。


「戦法としては、これが無難だろうと思う。あとは魔王がどういう策を打ってくるからで変わるから、臨機応変に対応……今言えるのはこの辺りか」


 ここで俺は一拍置いた。


「で、剣を使う人物については……誰でもいいというわけじゃないだろう。本人の力に加え、その人物の能力から、誰が生み出した剣を一番使いこなせるかを判断する必要がある」

「ルオン、ここで一つ確認したい」


 と、シルヴィが声を上げる。


「候補に挙がるのは、ソフィア、フィリ、エイナ、オルディア……の、四人でいいのか?」

「そうだな。ラディは魔法使いだから無理だし、アルトは賢者の力を得ていないから」

「なんか悔しいな」


 苦笑するアルト。ゲーム基準で言えば、ソフィアがアルトが手に入れるべき力を奪った形となるな。


「ま、その辺りはいいや……で、ルオンさん。その四人からどう選ぶんだ?」

「そうだな……」

「すみません、一つ意見が」


 エイナが手を上げた――言いたいことはわかる。


「その、魔王を討つ資格があるとはいえ、王女は――」

「エイナ」


 ソフィアが口を開く。どことなく咎める口調だったのだが、それにエイナは反発する。


「これ以上無茶をする必要はないと思います。もっとお体を大事にして頂かなければ――」

「王女様を守りたいのは理解できるが」


 と、アルトが口を開いた。


「俺個人の意見だが、この場で魔王を討てる賢者の力を一番保有しているのは間違いなく王女だ。魔王を相手に戦う場合、王女が戦力として非常に重要な位置を担うのは間違いないぞ」

「しかし……」

「言いたいことはわかる。けど王女様自身はやる気満々みたいだし、ここは協議して決めた方がいいんじゃないか?」

「私は、戦います」


 対するソフィアは即答だった。横にいるシルヴィが思わず苦笑するような反応であり、俺もまたその強情さに同じ反応をする。


「バールクス王国は解放されたため、私が戦う理由がなくなったとみることができます。けれど、そうではない。魔王を倒さなければ、終わりではない」

「王女……」

「エイナ、あなたの気持ちもわかる。それを無下にするつもりはないけれど、わかって欲しい」

「ひとまず、彼女を候補に入れて考えるということでいいんだな?」


 俺は確認の問いを行う。エイナは渋々といった雰囲気だったが、頷いた。


「それについてだが、俺から意見が」


 次に話し出したのはオルディア。


「神霊の力を結集させた剣……さっきも言った通り俺の体には魔族の血が入っている。間違いなく反発するだろう」


 となると、残り三人……ここでフィリが提案した。


「素材を作成する場合に相性などがあるかもしれません。ここからは精霊コロナと協議して決めるべきでは?」

「確かに。それじゃあ、残る三人がコロナの所へ行き、判断することにしよう」


 後は移動手段だが――ここでリチャルが手を上げた。


「西の果てに行くのに、俺の魔物を使えばいい」

「よし、決まりだ」


 俺が締めの言葉を発し――明日に備え休むことになった。


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