主人公との再会
オルディアは魔物に見つからないよう配慮しつつ茂みの中で軍を観察していた。俺はどうにか彼の近くへ移動。気配隠しの魔法を維持したままだが、以前俺の魔法に気付いた彼だ。今回も――
「またあんたか」
オルディアが呟く。
「そういえば以前、自己紹介もしていなかったな」
「あ、言われてみると……」
ここで俺は名乗り、オルディアも返答――こっちは知っているけど。
その後、オルディアは俺へ尋ねる。
「俺のことを見つけ出し、ここに来たという感じだな……前に遭遇したのも偶然ではないのか?」
「……まあ、色々と事情はあるけど、話は後にしてくれ」
魔法を維持したまま横に移動し、俺は口を開く。
「ここに来た目的はなんだ?」
「とある魔族を滅するためだ。そいつは同族が使える武器を生み出すことができる……とはいえ魔族の中で下から数えた方が早いくらいに能力は低いため、本来ならその能力が活躍することはない……しかし、竜のような魔力を解析しやすい相手なら別だ」
「やっぱりな」
「……何?」
「俺はそいつを倒すために動いている。しかし、情報が何もなくてどうしようもなかったんだ」
「つまり、俺のところに来たのは倒すのを協力するということなのか?」
「正解だ」
オルディアは俺のいる場所に首を向ける。ここに俺が来た時点で疑問はいくらでもあるだろう――ただ彼としても悠長に話しこんでいる暇はないと思ったか、再び敵軍に視線を戻す。
「いいだろう……味方は多い方がいいからな」
「ああ」
そこからオルディアは目を凝らし魔族を探し始める。
軍勢の中から目で確認するのは困難だと思うが……いや、目を通して気配を察知していたら、そう難しくはないか。
「……魔王もまた、動き出しているようだ」
ふいにオルディアが口を開く。
「居城にいた魔族も動いている。できれば北部から逃げた方がいい」
「あんたは逃げないのか?」
「……やり残したことがある」
単独で魔王に挑むつもりなのか? そうだとしたらかなり無謀だと思うが――
ここで俺はゲームの設定を思い出す。五大魔族が居城に魔力を注ぎ、魔王が大陸を崩壊させる魔法を発動させる。その策は高位の幹部にしか周知されていない。魔王自身情報が漏れるのを警戒していたのかもしれない。
オルディアもその情報は知らず、居城にいる五大魔族を最初に撃破した時、初めて理由を知ることになる――つまり今の彼は五大魔族を倒してはいないため、そうした情報を保有していない。となれば、
「居城にいた魔族を倒し、少しでも人間側の負担を減らすつもりなのか」
俺の言及にオルディアの肩が僅かに反応した。
彼の持つ二本の長剣。そのうち片方は幹部級の魔族を一撃で葬ることができるほどの力を持った剣。ただしその効力は一度しか使えず、以後はただの剣となる。
オルディアが主人公の場合、イベントでその力を使ってしまうのでストーリー上ほとんど意味はない。五人の主人公がそれぞれ五大魔族を撃破した場合において、その力が発揮される。
ゲームでは南部侵攻の後、残った五大魔族が魔王と共に動き出す。主人公達は迎え撃つのだが、最後に残った五大魔族を、オルディアが剣の力を使って倒し、賢者の力を得る……というイベントが発生する。
現状、ストーリーに多少のズレはあれどこの流れに沿っている。おそらくオルディアも剣の力を使用していないため、戦う気なのだろう。
「けど、単独で挑めば下手すると魔王に殺されるぞ」
「わかっているさ」
「死ぬ気、なのか?」
「申し訳ないが、命を賭してなんてやり方は主義じゃない。だからこそ、少しでも生存率を上げるべくこうして動いている」
……ああ、なるほど。竜達を利用するのか。
だからこそ、オルディアはこうして竜対策を行う魔族を討つべく動いている。
「……そういう、ことか」
俺は小さく息をつき、次いでオルディアに視線を移す。
「わかったよ……ま、俺がどうするかは戦いが終わった後にでも話すさ」
「何?」
オルディアは聞き返そうとしたが――突然、目を細め軍の一点を凝視する。
「いたぞ」
「本当か?」
「ああ。間違いない。奴を滅することができれば、能力によって生成した武器も自然に崩壊する」
お、それは朗報。となれば――
「ガルク」
『うむ、話はつけてある。存分にやってくれ』
小声で俺はガルクと会話を行い――小さく頷いた。
オルディアが剣を抜く。声を掛けようとしたが、彼が先に話し始めた。
「俺が先陣を切る。あんたは援護を――」
「いや、俺に任せてくれ」
遮るように俺は言う。それにオルディアは訝しげな表情。
「任せる?」
「といっても、説明する暇はないな……その魔族はどのあたりにいる?」
オルディアは指をさす。列を成す軍の、中央付近。
「耐久力の高い魔物と障壁によって守られている。突破はかなり大変だろう」
「なるほど。竜達との戦いにおいて要であると魔族側も認識しているというわけだな」
こちらも剣を抜き、戦闘態勢に入る。
「俺はいつでもいける」
「ならば、俺のタイミングに合わせてくれ」
オルディアの言葉に俺は頷き……彼は呼吸を整える。
俺は詠唱を開始。魔物にギリギリまで気取られないよう慎重に――
そして、
「――行くぞ!」
声と共にオルディアが走る。ほぼ同時に俺もまた駆け、魔物へと攻撃を仕掛けた。
魔物達は反応に遅れた――オルディアならば二振りの剣で敵を吹き飛ばし強引に突破するつもりだったはず。しかし、
「――氷塊よ!」
俺が先んじて魔法を発動。氷属性上級魔法『クイーン・オブ・ブリザード』により、無数の氷の刃が爆散。一気に魔物を消し飛ばす。
轟音が響き、行軍も大いに乱れる。このタイミングを逃すわけにはいかない。
「おい、魔族はどこにいる!」
俺はオルディアに声を出す。相手は俺の魔法に驚いたのか少々目を丸くしていたが――
「このまま真っ直ぐだ! 障壁を維持している奴がそうだ!」
俺は彼の言葉を聞き、一気に突入。オルディアも追随し、魔物達が殺到する。
だが、続けざまに氷の刃。多少応用して俺とオルディアを中心に回りに刃を拡散するように調整。結果、またも魔物達は消し飛ぶ。
「レスベイル!」
さらに精霊を呼ぶ。刹那、大剣により近づこうとしていた魔物達が吹き飛んだ。
「周囲の魔物を倒せ!」
そう指示を出した直後――俺は障壁を構成する魔族を捉える。こちらを見て目的を察したか、即座に周囲の魔物に指示を出し、相手は逃げようとした。
刹那、空から竜の雄叫びが。ガルクの指示により、竜達が襲来。
「このままの勢いであの魔族を倒せばいいってことだな……!」
俺は声を発すると同時に身体強化を足に施し逃げようとする魔族へ接近。慌てた様子だったが、対応ができない。護衛の魔物――屈強な悪魔は俺を阻もうと立ち塞がったが――こちらは『デュランダル』を生み出した。
悪魔が迎え撃つ。対する俺は光の剣を横に振りかぶり、一閃した。
斬撃は、悪魔を平然と両断し――さらに魔族を守るように構成していた障壁も平然と両断。目的の魔族もまた刃に触れ、その存在が塵となる。
「よし……!」
声を上げると同時、周囲にいた魔物達が襲い掛かってくる。俺は素早く詠唱開始し、剣を握り締め――上空にいる竜達と共に、乱戦を開始した。




