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賢者の剣  作者: 陽山純樹
魔王との決戦

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とある魔族の最期

 本気を出せば、槍の一振りで魔物を消すことは容易い。その数は圧倒的だが、俺はどうにか対応する。


「――氷塊よ!」


 魔法を発動。氷属性上級魔法『クイーン・オブ・ブリザード』で、放った氷が敵に当たると多数の氷の刃が爆散するという魔法。

 真正面の魔物に氷を当てた瞬間、轟音と共に氷が噴き上がる。まるで津波のように魔物達を飲み込み、刃が多数の魔物を滅ぼしていく。


 さらに同じ魔法を使用し、確実に魔物の数を減らす。その間に俺の背後や横から魔族が強襲したりもするのだが――瞬間的に薙ぎ払い魔物と同様一撃で滅する。


 物量で押し込もうにも、俺には通用しない……ただ、ここに至り懸念が生まれる。魔族もまた捨て身で攻撃を仕掛けてくるため、いずれ魔物達を指示する者がいなくなる。四散されると厄介だが、かといって襲い掛かってくる魔族を見逃すわけにもいかない。


 ここで上空の使い魔から報告が。やはり魔族を撃破したことにより魔物の動きがおかしくなっている。命令がなければ俺への攻撃も中断する……威嚇のために魔力を噴出してみるが、ほとんど効果もない。むしろこちらを警戒するような魔物までいる始末。


 どうする――と思った時、魔狼達が動いた。使い魔の報告では、魔物達を包囲するように近づいてくる。


『ザームからの伝言だ。逃げないように対応するとのことだ』


 ガルクの言葉。俺は頷いた後、魔法で正面の敵を吹き飛ばした。

 やがて魔狼の一体が先陣を切る。魔物を撃破し、それでいて相手の攻撃を食らわないよう距離を置く。


 ヒットアンドアウェイという感じだろうか? 取り囲むような形で攻撃する魔狼達に、魔物は警戒を示し動きが鈍くなっている。よし、これなら――


「あとは、数をひたすら減らしていくだけだな――!」


 もっとも、それが一番大変なわけだが……迫る魔物を一蹴しつつ、俺はふとシェルダットがいた場所に目を移す。

 既に奴はいなかった。短距離転移を利用したかと思ったが、上空の使い魔からどうやら戦場の中にいるとの報告が。


「さすがに、余力もないってことか」


 あれだけの力を引き出した後だ。当然と言える――その時、視界にシェルダットが入った。

 途端、周囲の魔物達の動きが止まる。やや距離はあったが俺と奴はしばしにらみ合い……やがて、相手が近寄ってくる。


 魔物達が魔族の進路を譲っていく……沈黙を守っていると、槍の間合いギリギリに立ち止まった。


「――貴様のことは、陛下に報告したぞ」


 そして言う――魔王に、ということだろう。


「貴様がどれほどの力を持とうとも、あの御方には勝てない」


 力を失くし、それでも笑う。いずれ魔王がお前を倒してくれる――という考えが透けて見える。

 対する俺は、肩をすくめた応じた。


「そんなことは百も承知だよ」


 相手は目を見開く。こちらの反応は、予想外のものだったらしい。


「何……?」

「悪いがそんな事実、とっくの昔に気付いているんだよ。対策もきちんと立てている。お前の後に魔王も冥界に送ってやるさ」


 シェルダットは目を細める。


「貴様……何者だ?」

「……少しばかり力の強い、ただの人間だよ」

『少しどころではないな』


 頭にガルクのツッコミが響く。思わず苦笑しそうになりつつ、俺はさらに問う。


「もう転移できる力も残っていないんだろ? 何か言い残すことはあるか?」

「ないね。任務に失敗した僕は、ただ滅びの道を辿るだけさ」


 一歩大きく踏み込み、槍を薙ぐ。最後は皮肉気に笑みを浮かべ――シェルダットは、消滅した。

 同時、周囲から咆哮が聞こえ始める。軍の司令官を失ったことによる慟哭か。それとも指示から解放されたことによる歓喜か。


「さて、最後の仕上げだ」


 俺は一言呟いた後――残る魔物達へ、槍を向けた。






 魔物の数は確かに相当なものだった。これだけの規模の軍が押し寄せたのなら、カナン達人間の軍は間違いなくひとたまりもなかっただろう。

 けれど、俺はついにその全てを滅することに成功する……シェルダットを倒した数時間後、戦いはようやく終わり、幾度となく放った魔法により地形が変わった平原が、後に残った。


『ご苦労だな、ルオン殿』


 労いの言葉をガルクが放つ。俺は「ああ」と返答し、質問。


「ガルク、魔王の魔法対策だけど……」

『魔王が事を起こそうということで、精霊達も動いている。それによれば、魔王の動きに呼応するかのように大地に収束した魔力が鳴動を始めているらしい』

「いよいよ、ってことか」

『うむ、我ら神霊もそれを監視し、どういう状況になっても動けるようにはしているが……』

「とはいえ、魔王が魔法発動を行うにはとある場所へ赴かないといけない……そこに到達するまでは大丈夫だと思うけど、念の為警戒を頼む」

『ああ』


 と、ここで魔狼達を見回す。彼らが包囲してくれたことで魔物の動きも大きく制限され、撃滅することができた。


「ガルク、感謝していると伝えてくれ」

『うむ……ザーム達はルオン殿の戦いに見て驚いているようだな。事情を知っていても、いざ目の当たりにするとそういう反応なのだろう』

「そっか……彼らは次にどう動くつもりなんだろう?」

『西部には多少なりとも魔物が残っている。それらを叩くと言っているぞ』

「あ、それはありがたい……お願いすると伝えてくれ」


 直後、長であるザームが短く声を上げた。了承したみたいだ。


「よし、それじゃあ俺はどうするか」


 使い魔から色々と情報を探り……どうやら南部侵攻における戦いはまだみたいだ。元々西部の軍が到着するまで動かないつもりでいたはず。壊滅したという報告はおそらく届いているだろう。戦争が始まるまでそう時間もないか。


 俺が援護に行けば、勝利をもたらすことができる……そう考え決断しようとした時、北部を観察していた使い魔から報告が――


「……ガルク」

『うん?』

「どうやら、魔王も直接動き出したみたいだ」

『……やはり魔王の出現は早まるのか』

「俺の存在を警戒して、かな。理由はどうあれ、物語の流れとは違うな」


 ――五大魔族同時攻略から始まり、ここまで予定外の展開が続いた。魔王としては残った魔族を利用し、戦力差で一気に畳み掛けるつもりだったはずだ。

 しかし北部の魔族達は竜達によって縫い止められ、西部にいた軍は俺が倒した。魔王からすればこれ以上にないくらいの敗北だろう。


 しかし、まだ大陸の危機は去っていない――魔王には、大陸を崩壊させる魔法がある。


「ガルク。俺は魔王の出現する場所へ向かう。そっちは?」

『我も急行する。フェウスやアズアにも伝えよう』

「神霊が集合し、魔王と相対する、か……物語ではありえなかった話だし、すごい展開だな。あ、それともし何かまずいことが起こったら、フォローに回るから」

『そうならないよう対策はしたつもりだが……一応、助力を依頼しておこう』


 ガルクからの声を聞いた後、移動魔法を使用する。魔狼達が吠え俺を送り出し……北へ向かう。


『魔王が来るのだ。竜が抑えている北部の軍の動向も気になるな』


 途中ガルクが語る。俺も頷き、使い魔でそれらも確認するべきだろうと思った。


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