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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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二つの血筋

 オルディアのいる場所は魔族達が戦う場所から東側に位置する森の中。そこから観察するつもりだったと思うのだが、近づくまでに見つかってしまったらしい。

 俺は急いでそちらへ向かう――どうやら彼は交戦中のようだ。


 現場に到着した時、オルディアは騎士の外見をした鎧系の魔物と交戦していた。黒衣に身を包んだ深い紫色の髪を持った人物……間違いない、彼こそオルディアである。


「ふっ!」


 オルディアが仕掛ける――その両手には、一本ずつ長剣が握られていた。


「二刀流か……ここは物語通りだな。俺はいつも一本にしていたけど」


 俺はその光景を見ながら呟く。するとガルクは反応した。


『二刀流であるのは、何か問題があるのか?』

「そういうわけじゃない……ただ、物語の中であまり技がなかったんだよな」


 二刀流は剣技から派生するような形で習得できる。実際剣技の能力を高めて二刀流にすれば、強力な技を短期間に習得できるため利点でもある。とはいえ――


「物語の後半だと強力な攻撃技が不足するから、二刀流を最後まで使い続けるというケースは少ないんだよな」

『技を開発すればいいのではないか?』

「簡単に言ってくれるな、ガルク。俺も修行時代色々と挑戦したけど、ちょっとした応用ならともかく、完全に一からとなると大変だぞ」


 開発自体はよしんばできたとしても、きちんと実戦で使えるかどうかだって検証しなければならないし……オリジナル技は単純に力だけで解決する問題ではないため、調整に時間が掛かるのも難点だ。


「二刀流自体は結構有用な手段だったと思うけど……ま、現実となった今では事情が違うかもしれないな」


 ちなみに最初から二刀流が使えるキャラというのはオルディアを含めた数人。珍しい技能ではあるのだが、ゲームでは死にスキルに近いものだった。


 考える間にオルディアが魔物を斬り刻む。さすがにバラバラとはいかなかったが、いくつも斬撃が入り相手の動きを止める。そこへすかさず会心の一撃……これで魔物は沈んだ。


 とはいえ、オルディア自身疲労を感じている様子。周囲には悪魔がまだ数体いる。本来なら攻撃的な悪魔だが、オルディアの動きを考慮して――言い換えれば学習し、防御重視に切り替えたのかもしれない。


 あるいは、カウンター狙いか……しかしオルディアは構わず踏み込む。

 次の悪魔は防御を行ったようだが、それも面倒なのか吹き飛ばすように剣を叩き込んだ。その動きは豪快であり、加勢の心配はなさそうに思えた。


『必要、ないかもしれんな』


 ガルクも同意見らしい。俺としても余計なお世話だったかと帰ろうと思った。

 やがて、オルディアの手によって悪魔達が全滅する。疲労により息が上がっているオルディアではあったが、魔力的にはまだまだ余裕の様子。


「さあて、どうするか」


 オルディアは一つ呟くと、まずは周囲を見回した。

 気配隠しの魔法を使っている俺からすると、ただじっとしているだけでマークされることもないだろうし大丈夫……と、思っていたのだが、


「ん?」


 オルディアは声を上げた。俺のいる方向へ目をやって。

 まさか、気付かれているのか――


「そこにいるのは誰だ?」


 冷酷な声に、思わず首をすくめた。


『魔族の血が混じっていることから、我らの存在を感知できるのかもしれんな』


 ……そういえば、オルディアは賢者の血筋かつ魔族の血を所持しているため、他の魔族と比べ気配を察する能力などに秀でているという設定があったな。これはそれが原因なのか。

 まあ見つかってしまった以上、仕方がない……魔法を解除すると、オルディアは目を細めた。


「人間? こんなところに何の用だ?」

「魔物を追って動いていたら相当やばい状況に遭遇したから、とりあえず森の中に隠れてやり過ごそうかと思っていた人間だよ」


 そう返答した結果、オルディアは俺に視線を合わせる。


「見たところ、冒険者のようだな」

「まあ、そうだな」

「竜と魔族が戦う様を見られて、良かったじゃないか」


 皮肉っぽい言動ではあるのだが、別段腹が立つこともない。そういえばオルディアって、ちょっと棘のある言い方が多い人物だったな。


「だが、これ以上深追いはしない方がいいぞ。さっさと立ち去れ」

「まあ、そうさせてもらうけど……あんたはどうするんだよ?」

「説明する必要はないな」

「さすがに、魔族に挑むなんて話にはならないよな?」

「だとしたらどうするつもりだ?」

「いや……無謀にも程があるから、止めようかと」


 こちらの言葉に対し、オルディアは鼻を鳴らす。


「お前に心配されずとも、死ぬような真似はしないさ。さっさと去れ」


 ……魔族の軍団がいるため気が立っている面もあるのだろう。表情はちょっと硬質で、俺を邪険に扱っているというよりは「命が惜しいならさっさと逃げろ」と諌めている風にも感じ取れる。


「とはいえ、さっき魔物と戦っていたよな? あんたは見つかっているんじゃないか?」

「竜との戦いが続いている状況だ。これ以上敵が来ることも――」


 そう述べた直後、背後から気配。振り向くと同時に剣を抜き、眼前に迫る悪魔を捉える。

 相手は剣を握るレッサーデーモン……色は赤。五種類存在する中で二番目に強い種類で、シナリオの後半に出現する敵。とはいえ特殊な攻撃をしてくるわけでもないので迎撃自体はそう難しくない。


 オルディアがどういう反応をするのか気になったが……俺はレッサーデーモンを迎え撃つ。振りかざした剣に対し俺は素早く受け流すと、口の中で詠唱を開始。


「――剣よ」


 言葉と同時に生み出したのは光属性中級魔法『デュランダル』。左手に生み出された光の剣が、レッサーデーモンの胴体を薙いだ。

 一撃で決められるか微妙なところではあったが――斬撃は見事レッサーデーモンを両断し、撃破に成功した。


「……ほう」


 オルディアの声。振り向けば、俺の能力に興味を示したらしい彼の姿。


「ここまで来たということは、腕はあるということなのか」

「……どうも」


 眼光の鋭さは魔族の血が入っているからか……ともかく、それなりに評価はしてもらえたようだ。


「で、悪魔がこっちに来る様子だけど」

「そうだな。一度退くことにしよう。そちらはどうする気だ?」

「俺か? 竜が戦ってくれるのなら、後は放置するしかないな」


 オルディアは俺を見据え何事か考え始める。何をする気だ?


「……まあいい。俺はこのまま拠点としている場所へ戻る。あんたはどうする?」

「俺も逃げるさ……そっちの目的は、魔族を倒すことなのか?」

「まあな」

「なら、そのうちどこかで会うかもしれないな。その時はよろしく頼む」


 ――もし南部侵攻が問題なく終わったら、最後の五大魔族と共に魔王が南下し、オルディアが五大魔族を撃破することになる。

 ここで面識ができたことで、多少なりとも話が通り易くなっただろう……そう思いつつ、俺はオルディアと別れた。


「さて」


 俺は再度魔法を使い移動開始。戦いはどうなっているのか。

 森から出て観察すると、竜がとうとう魔族を追い返しているところだった。もっとも竜側だって追撃を仕掛けることはない。やはり罠を警戒しているようだ。


『竜の勝利だな』


 ガルクが評する。俺は小さく頷き、


「そうみたいだ……とはいえ、魔族も黙っていないんじゃないか?」

『それなりに手傷を負わせた様子。しばしの間は干渉してこないだろう』

「ならいいけど……よし、確認も終わったし、ソフィア達の所に戻るとしよう」

『わかった』


 移動を開始。その途上ふと思う。竜達がいざとなれば援護に入る――その事実は、非常に大きいと思った。


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