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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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王の来訪

 騎士団が拠点としているのは、砦。もっとも使われなくなって久しいらしく、あちこちに補修の形跡が存在する。

 規模はそれなりだが、多数の兵を入れるのは難しいくらい。よって徐々に人間側が盛り返し人が多くなったこの砦も、手狭になりつつあるらしい。


 俺達が到着した時、外では何やら話し合いが進んでいた。俺は使い魔を通して何があったのか知っているため驚かなかったし、ソフィアも察していたため、それほど衝撃もなく彼の名を読んだ。


「カナン!」

「――ソフィア様」


 騎士団の砦を訪れたのは、各地を転戦するアラスティン王国の王、カナンだった。

 アルト達に俺は事情を説明。エイナもまた驚く中で、ソフィア達は会話を重ねる。


「話によると、かなり転戦していたようだけれど」

「ほとんどはボスロ将軍などが先頭に立っていたため、私自身はそれほど動いてはいませんが……ともかく、今回はこうして騎士団の砦へ」

「その目的は?」

「無論、私達と共に戦ってもらうために」


 ――南部侵攻で共同戦線を張ることになる以上、彼の登場があってもおかしくない。むしろこれは既定路線とも言える。


「ソフィア様!」


 今度はレーフィンの声。見ると砦の入口から彼女がソフィアに近寄る姿が。


「お待ちしておりました。どうやら、倒したようで」

「はい」


 頷くと彼女はエイナへ視線を送る。


「エイナ、まずは報告へ行きましょう」

「わかりました」

「――私も、少なからず色々と話がしたい」


 カナンが言う。それはおそらく、俺と話がしたいということだろうな。


「ルオン殿……こちらも大方仕事は終わった」


 そしてレーフィンに続きやって来たバルザードが言った。


「砦へ歓迎しよう。そして居城の魔族撃破、感謝する」






 さて、歓迎とは言っても色々あったことから砦の中もそこそこに混乱している様子。まあカナンやソフィアが登場したことも関係しているのだろう。


「この砦内における話はある程度聞いた」


 そんな中、俺は小さな会議室のような場所に通されて話をする。相手はカナン。俺と彼以外に誰もこの場にはいない。


「身内のことなので深くは話したがらない様子だが……ともあれ、ソフィア様と共にいるシルフの女王が立ち会った。問題は排除されたと考えていいだろう」

「同感です」

「では本題だが……状況は?」


 俺は簡潔にカナンへ説明する――と、


「……五大魔族を撃破するというのは紛れもなく良いことのはずだが、早過ぎても問題が生じるというわけか」

「今、全力で精霊達が活動しています。ガルクはどうにか間に合わせると」

「わかった。それについてはあなた方の働きを期待するしかない……頼む」


 こちらが頷くと、カナンはさらに別の話題を切り出す。


「あなたのことについては、まだ仲間以外には話していないのか?」

「ええ。念の為、ということにしておいてください。話すとしても、魔王の魔法を封じ込めた後がいいかと思います」

「わかった。タイミングはルオン殿に任せよう」


 頷いた後、カナンはさらに質問を重ねる。


「今後、私達はどう動けばいい?」

「……現在、五大魔族の四体目を仲間が攻略中です。そいつを倒した後は間違いなく、南部侵攻が始まる。それに備えてください」

「しかし、魔族が様々な国を制圧している状況でもある。私の手によっていくらかは解放したが……」

「出方を窺うしかないですね。物語ではその辺りのことが表現されていなかったので」


 もし同時に攻めよせて来たら――そういう形で侵攻してくると見越し、対策を考えておいた方がいいだろうか。


「……カナン王、騎士団はソフィアの存在を公表し、俺や仲間達は彼らと共に動くことになると思います」

「その中で、ルオン殿はどう動く?」

「しばらくは魔族の動向を追うことになるかもしれません。場合によってはやり残したことを今やるかもしれません」

「わかった。その辺りのことはルオン殿達で相談してくれ。私は、南部侵攻前に少しでも状況を改善するべく動く」

「必要ならば、私達も協力をします……とはいっても、まだ俺の力を明かすわけにはいかないため、活動は限定されてしまいますが」

「わかった。考えておく」


 話はまとまり、俺は退出。さて、次はシルヴィ達の確認だ。


 状況が悪化したなら、報告が来るようにはなっているが……そうなれば俺も全速力で東部へ向かう必要があるだろう。その用意だけはしておく――胸中で呟き、俺はひとまず休むことにした。






 砦内で部屋を用意してもらい、使い魔でシルヴィ達の状況を逐一確認する。さすがに居城の中に使い魔を入れることは難しいため、出てくるのを待つしかない。

 動向を観察する間に、ソフィアが部屋を訪れる。どうやら彼女もシルヴィ達のことが気になった様子。


「ルオン様、シルヴィ達の状況は?」

「城に入ったままだな。グディースと同じくらいの力を持っていると推察されるから、シルヴィ達の能力ならやられはしないと思うけど……」

「もし倒せなかったとしたら?」

「俺が行く。加減した状態でも倒せるとは思うけど……」


 頭をかきつつ俺は言い、彼女と目を合わせた。


「……砦内の混乱が収まるのは少し先になりそうか?」

「私やカナンが現れたことにより、砦内の人も色々とバタバタしているみたいです。ただ騎士バルザードが言うには、対処に時間はそう掛からないと」

「そうか」

「ルオン様、私はエイナと共に戦う……そういうことでいいんですよね?」

「ああ。けど従者であることは辞めない、だろ?」


 問い掛けに、ソフィアは深く頷いた。


「もちろんです」

「ただ、騎士達にそういった事情を説明するのは面倒だ。カナン王と話をしていることから結構重要人物として扱われているみたいだけど……俺は今後、単独で行動するつもりだ」

「剣の素材を手に入れるため、西の果てに向かいますか?」

「南部侵攻の経過を調べる必要があるから、それはまだ先の話だな……加え、魔王の魔法に対処した後にやることになるかな」

「そうですか。ご無理はなさらぬよう」

「ありがとう」


 礼を述べるとソフィアは「当然です」と返答し、踵を返す。


「シルヴィ達から連絡があれば、私にも教えてください」

「もちろんだ」


 彼女が部屋から立ち去る。俺はなおも居城を観察する間に、今度のことを考える。


 五大魔族を四体撃破したことにより、南部からの攻撃が始まる。しかし、いきなり数日後魔物達が攻め込んでくるというわけではないだろう。グディースは転移魔法陣などを有していたがあれはあくまで実験。魔族達に大規模な転移をすることができない以上、魔物達が行軍してくるはず。


 となれば、多少なりとも時間はある……この間にガルク達は魔法対策を完璧なものとする。そして俺は……何をするべきか。


「やり残したことと言えば、精霊の作成か? それとアーティファクトも見つけないといけなかったか」


 けど、これは俺一人でできるわけじゃないからな……ガルクに尋ねようとして口を開きかけた――その時、


「……あ」


 居城の扉が開いた。中から、シルヴィ達が姿を現す。

 戦いが終わったらしい……するとここでシルヴィが使い魔に対し手招きをした。


 その場には当然フィリ達の姿もある。その状況で手招きをするということは、事情を話したのだろうか?

 使い魔を操作し彼女に近寄る。そして、


「――ルオン、こっちはどうにか片付いた。そっちは?」


 シルヴィの声がした。


「こちらも終わった」

「そうか。魔族から出た光はフィリに収束した……だがその過程で、不思議なことがあった」


 不思議なこと? こちらが首を傾げていると、彼女はさらに話す。


「説明する。こちらが落ち着いた状況になったら、話をしよう――」


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