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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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光と騎士

「その、力は――」


 剣戟が決まる前、グディースがソフィアの発した力を目の当たりにして驚愕の声を上げた。やはりこの力をはっきりと理解したわけではなかったらしい。


 四大精霊の力を集結させたため認識できなかったのか、それとも――考える間にソフィアの剣がグディースへ入った。

 斬撃が縦に走り、魔力が大いに弾ける。轟音と閃光が生じ、思考を失わせる。


 けれどそれはほんの僅かな時間で止み――光が消えた時、グディースが立っていた場所には何も残っていなかった。

 周囲を見る。魔力球も完全に消失し、俺達へ近寄るアルト達の姿が。


「ルオン、終わったのか?」


 問い掛けるアルト。俺は今一度グディースが立っていた場所を見据える。

 凄まじい一撃の中で、確かにグディースの体が砕けていくのを感じ取ることができた。


「……倒したの、ですよね?」


 どこか呆然とするソフィアの言葉。それに俺は頷き、


「ああ。消滅するのを俺は感じ取った」

「そう、ですか」


 ――結果として、ソフィアは五大魔族を一撃で倒したことになる。グディースは土地に魔力を注いでいる以上、弱体化していたのは間違いないがそれでも驚異的なことに変わりはない。


 ここで、一つ思った。もしソフィアが神霊達の力を収束させた剣を握る場合、先ほどの技を魔王に放つことが、決定打となるだろう。グディースの攻撃を俺が阻みつつ、ソフィアが剣を決める――これこそ、魔王を滅するための最高の形と言える。


 しかしソフィア自身技の発動には時間が掛かるようだし、課題も多い……ここでソフィアは安堵の息を漏らした。


「これで、被害が拡大していた騒動が収束しますよね?」

「そのはずだ」

「しかし、さっきの攻撃は何だ? 魔族を一振りで倒す技なんて、すごいぞ――」


 アルトがどこか興奮した声でソフィアに告げた――その時だった。

 突如、室内が小刻みに揺れ始める。


「こ、これは――」

「部屋は魔族の制御下にあった。その当事者が滅んだ以上……」


 アルトの声にエイナが反応。次いでキャルンが慌てるように言った。


「それって、崩れるってことじゃないの!?」

「――うおおっ! マズイぞ!」


 ここが大地から遥かに高い場所であることを思い出したのか、アルトが恐怖に引きつった顔を伴い叫ぶ。

 俺は部屋の中を見回す。確か部屋の片隅に転移魔法陣が――あった!


「あそこに!」


 言葉と共に俺は走り出す。ソフィアが追随し、アルト達は一瞬躊躇ったが……すぐに後を追う。

 振動が少しずつ大きくなる。その間にまずソフィアが魔法陣に踏み込み、次いでエイナ達が入っていく。最後に残った俺は一度部屋を見回し……振動がさらに大きくなったため魔法陣に足を踏み入れた。


 僅かな浮遊感と共に、視界が一瞬白く染まる。やがて見えたのは、最初に転移した大広間。


「どうにか、助かったみたいだな」


 アルトが声を発する。心底安心した様子で、大きく息を吐いた。


「あー、もうああいう状況は勘弁願いたいな」

「技術の実験ということだから、魔王とかが応用してすごく高い所にいたりして」

「やめてくれよ」


 冗談を交え語るキャルンに、アルトは嘆くように言った後……ソフィアに向き直った。


「しかし、ソフィアさん。最後のあれはなんだ?」

「私は四精霊と契約していまして、その力を融合したものです」

「その結果、魔族を一撃か……とんでもないな。魔王にすら挑めそうな気配すらあったぞ」

「まだ完成していない技だが、極めれば対抗できるかもしれないな」


 俺の言葉に、アルトはゴクリと唾を飲む。一方のエイナはあれだけの技を放った後であるためか、ソフィアの事を気遣う様子を見せた。

 さて、グディースを撃破したわけだが……ここからが本題だ。視線を巡らせると、魔法陣からふわり、と小さな白い光が浮かび上がった。


「お、あれは」


 アルトが声を出す。彼にとっては二度目となる、賢者の力。


 グディースの場合、自ら所有していたというわけではなく転移魔法陣や魔物を生み出す実験のために居城に封じていたという設定だった。現実となっても実際その通りだったというわけだ。


「敵、ではないようですね」


 エイナが言う。そこでソフィアが俺に目配せをした。


「……エイナ、それに触ってみて」

「え、ソフィア様?」

「居城を構える魔族を倒した時、ああした光が出てきた。悪いものじゃない。実際、私はあの光を受けて強くなれた気がするから」


 エイナは少々迷った様子だったが、ソフィアの指示ということなのか光に近寄り、触った。

 するといとも簡単に彼女の体に光が入る。体を通過するなどということもない。これで、エイナにも賢者の力が宿ったということになる。


「……不思議な感触ですね」

「どういう効果があるかわからないが、ソフィアさんがこうして強くなれたんだ。悪いものじゃないはずだぜ」


 アルトの言葉にエイナは小さく頷いて見せた。






 魔物の姿が見えない中、俺達は城を出た。そこで入口で待っていたリリシャと合流する。


「申し訳ありません、王女。扉は閉ざされ私達は踏み込めず……」

「いえ、大丈夫です。騎士達の状況は?」

「多少怪我人はでましたが、どうにか魔物に対処しました。そして少し前、戦っていた魔物達が突然消滅を」


 グディースが使役していた魔物は全て、滅したということだろう。


「で、これからどうする?」


 アルトが問う。それに俺はすぐさま応じた。


「とりあえず、エイナさん達の騎士団について気になるな。そうでなくとも俺とソフィアはレーフィンを迎えに行かないといけないし」

「なら付き合うぜ」

「いいけど……エイナさんはそれでいいか?」

「ええ」


 承諾したので、次の目的地はエイナのいる騎士団に。今頃混乱していることだろう。

 なおかつ、シルヴィ達の方も気になる。使い魔の報告によると既に居城に入り込んでいる。もしかすると決着がついているかもしれない。


「私達は、念の為近隣を見回ります」


 ここでリリシャが発言。彼女はさらにソフィアへ首を向け、


「王女達は先に拠点へ。エイナ、案内役を」

「はい」


 頷き、リリシャを始めとした騎士団が動き出す。それをしばし眺め……ふいに、アルトが語り出した。


「確か、東部の方にも居城を構える魔族がいたはずだ。また、噂によると北部にも……発見できた居城は全部で五つ。そのうち、この場所で三体の魔族を倒したことになる」

「確実に、人間側が盛り返しているってわけね」


 キャルンがアルトに続いて述べる。


「魔族側も反撃しそうなものだけど、あんまり動きがないんだよね。例えば、北部の中には都を制圧されている場所もあるけど、そこから動いていないという話もあるし」

「その辺り、もう少し情報を集めた方がいいな」


 俺が発言。ソフィアも賛同を示し、表向きは情報収集に励むということになりそうだ。

 近日中に、四体目の五大魔族撃破となるだろう。そこから南部侵攻イベントが始まるわけだが……こちらも準備を急がなければならない。


 とはいえ、どれだけ時間に余裕があるのか。そして、バールクス王国の魔族などまだ都などを制圧している魔族がどう動くのか。その辺りを見極める必要がある。

 今まで以上に話が大きくなるのは間違いない……そう思っていた時、使い魔から報告が。


「……あ」

「ん? どうした?」


 俺の言葉にアルトが反応。でも俺は明言することはできず「何でもない」と言って誤魔化す。


 報告がきたのはレーフィンを始めとしたエイナ達の拠点にいる騎士団を観察する使い魔。どうやらレーフィンは色々とあぶりだせたらしいが……それに加え、思わぬ助っ人が登場したようだった。


「……そっちにも、状況を伝えないと」


 呟きは誰にも聞かれなかったが、予感がしたのかソフィアは振り向いた。だからこっちは頷き返す。それによって、彼女も察したらしい。


「それでは、向かうとしましょう」


 最後にエイナが号令を掛け――俺達は、騎士団の拠点へと急いだ。


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