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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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包囲突破

 俺達が攻撃を開始したことにより、少なからずリリシャは驚いた様子を見せた――が、すぐに表情を改め、騎士にさらなる攻撃の指示を出す。


 騎士達と連携するのは難しいわけだが……それは理解しているのか、リリシャを始め騎士の動きは俺達に干渉することのないもの。

 リリシャの指揮により攻撃する騎士達は昨夜同様洗練された動きで、夜襲の魔物を追い払っただけの力があるのは間違いない。けれど撃破する速度は俺達と比べて遅い。この辺りは地力の違いといったところか。


「……どうやら、ここで決めなければならないようね」


 リリシャの声が聞こえた。決める、というのは――


「騎士エイナ!」

「はい」

「ルオン殿を始めとした面々と共に、居城へ!」


 そう叫んだリリシャに対し、エイナは驚いた表情を伴い応じた。


「私達が……!?」

「戦いを見れば、ルオン殿やアルト殿の力の方が大きい様子。魔物を倒したら後から続く。お願い」


 苦肉の策、ということだろうな。このまま全員がこの場で戦えばいずれ疲弊し居城に足を踏み入れることさえできなくなる。また俺達の能力から決断し、そう指示を出したのだろう。


「エイナ」


 ソフィアが魔法を放ちながら言う。戦場になっているこの状況ではいつまでも迷っていられない。エイナはソフィアの声を聞き、言った。


「冒険者の方々……突破します!」

「任せておけ!」


 アルトが応じ、大剣を薙ぐ。『グランドカノン』により正面にいた敵を吹き飛ばし、道を作る。

 そこへなだれ込むように俺達は走る。リリシャを始めとした騎士達は追随しない。俺達を援護し、魔物を引きつける。


 アルトが幾度となく魔物を吹き飛ばし――包囲を脱する。居城まではあと少し。


「城の周囲に魔物の姿はないな。今がチャンスだ!」


 アルトは叫び、走る。キャルンとイグノスはそれを援護し、なおかつ俺とソフィア、さらにエイナは後方からやってくる敵を排除しつつ城へ向かう。


「騎士達が食い止める間に、決着をつけないと」


 エイナが発言するとアルトは勢いよく頷き――とうとう城の入口へと到達した。


 重厚な鉄扉が存在し、俺達を阻んでいる。さすがにこの状況では入れてくれないだろうし、魔法か何かを使って破壊するのが無難だろうか。

 だがこちらが動き出す前に変化が。突如扉は開き、俺達を中へと誘う。


「へえ、入れてくれるのか。優しいじゃないか」


 アルトは皮肉気に言いつつ最初に城内へ入る。


「……行きましょう」


 エイナもまた声を出し、俺達は城の中へ。全員が入った直後扉が閉まり始める。

 ここで一度振り返る。魔物の群れを押し返しつつ徐々に前進する騎士団の姿。それを見て大丈夫だろうと考えた時、とうとう扉は完全に閉まった。


「さて、進もうじゃないか」


 アルトが言う。誰かが「お前が仕切るな」と言ってもおかしくない状況だったが、結局誰一人声を発することなく廊下へ入った。


 城内の構造自体はそれほど複雑ではない。転移魔法陣を利用した特殊な構造となっているが、他に罠などが張り巡らせているわけでもない。よってここからは慎重に進めばグディースの戦いまでの道のりはそう難しくない。


 歩んでいると、魔物と遭遇。とはいえ遭遇するのは今まで出てきたのと同じであり、対処はさして難しくない。


「これなら楽勝だな」

「油断はするなよ」


 余裕を見せるアルトに俺は忠告しつつ、上へ進む階段を示す。


「探索していれば疲労で倒れる。城の形状から考えてたぶん上に目当ての魔族がいるはずだ」

「俺もそう思う。なら上へ進もう」


 大剣を構え直しアルトが先頭になって進む。続いてエイナやソフィア。キャルンやイグノスと続き、最後尾に俺が続く。

 こうして改めて観察すると、この場にいる面々全員よくぞここまで強くなったと思う。特にキャルンなんかは俺自身ゲーム上であまり使ってこなかったためここまで強くなった姿を見るのは非常に新鮮。ちょっと感動する。


 色々と考える間にさらに魔物と遭遇。けれどアルトやエイナの敵ではなく、ソフィアが多少援護をするくらいで十分勝てるくらいだった。

 結果、それほど経たずして俺達は大きい広間へと到着した。城の最上階はまだまだ先のはずだが、上へと続く道はない。


 広間には魔法陣が一つ。これが転移装置となっていて、上空に存在する居城の一部に転移することになっているのだが――


「見るからに怪しいな。けど、罠にしてはあまりにも目立ちすぎだ」


 アルトが言う。当然、警戒するよなぁ。


 ゲームの場合は演出の一言で特に抵抗も無く転移することになるわけだが、現実となったらそうもいかない。


「上へ続く道はもうない……他の道を探すか?」

「別の場所に階段がある、という可能性も」


 エイナが言う。話の流れ的に一度ここを後にして他の道を探すということになりそうだが、魔法陣に入らないと先へは進めない。

 その時、ソフィアが首を向けた。彼女は当然俺から事情を聞いているので、どうするのかと目で問い掛けている――


「少し調べてみようか」


 俺はアルトやエイナに近寄る。こちらの声に反応した両者は、まったく同時に首を傾げた。二人のうち、声を出したのはアルト。


「調べる? どうやって?」

「実は以前、似たようなものを見たことがあるんだよ」


 言いつつ魔法陣へ近づく。エイナは止めようか考える素振りを見せたが、俺は構わず突き進み魔法陣の中央に立つ。


「こういう種類の魔法陣は、中心部分に誰かが乗ると発動する」


 刹那、俺の周囲に光が生まれる。エイナが声を発しアルト達も驚愕の表情を見せたが、それ以上の反応を目にすることなく俺の体は転移した。

 気付けば、正面に鉄製の扉。うん、ゲームでも見覚えのある場所に違いない。


 しかし、この部屋にはある特徴があった。俺は何気なく下を見る。


「……おおう」


 思わず呻いた。


 ――転移魔法先であるこの部屋は、五大魔族グディースの趣味なのか特殊な素材で構成されている。扉だけは鉄製だが、他は外の景色を透過する素材だった。


 その透け具合があまりにも綺麗で、ガラスで作られた部屋のように思える。窓ガラスなどは魔法技術などを応用することによりこの世界にも存在しており、それほど珍しくない。よって他の仲間達も同じことを思うかもしれない。


 で、足元も透けており、ずいぶん遠くに俺達が入った五大魔族の居城が見える。魔法を使えばどれほどの高さでも死なないのだが、それでもちょっと足元がすくむ。


「他の人、大丈夫かな?」


 呟きつつ俺は再度魔法陣を使って転移。無事に戻ると、エイナがまず発言した。


「無事だったようですが……無茶しないでください」

「ああ、ごめん。これは転移魔法陣で、扉があったから先へと進めるのは間違いない。ただ」

「ただ?」

「この中に高いところ苦手な人、どのくらいいる?」


 問われ、誰もが沈黙する……よくよく考えれば高層ビルなんてものが存在しないわけだから、高い所と言われても俺が想像するものとは大きく違うか。たぶん俺のように超がつくほどの高い場所は考えつかないだろう。


「何か問題があるのか?」


 アルトが問う。俺はどう説明しようか少し迷って……実際体験した方が早いかと思い、口を開く。


「……まあいいや。どうやら高所に存在する建物に転移するようだから、心積もりはしておいてくれ」

「何だ、そんなことか」


 アルトは肩をすくめて俺に言う。


「先へ進めるなら問題ないって。それじゃあ、行くとするか――」


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