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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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戦いへ向けて

「――裏切り者を見分けるには、いくつか手段があるでしょう。まず、彼らが所持している武器」


 レーフィンは語りながら壁に立てかけてある物――裏切り者から押収した剣を見据える。


「私の目から見て、間近で見ることができれば判断はできるはず」

「しかし、それはあくまで武器を持っている人間だけの話だな」


 俺が言うと、彼女は小さく頷いた。


「ええ、そうです。さすがに内通者全員にこうした武器を持たせているとは思えないですし、これだけで判断するのは危険」

「他に方法があるのか?」

「私なら、対応できます」


 胸に手を当てレーフィンは言う……そうか、人間の感情を察する能力か。


「さすがに心を読むことは難しいですが、私の感情を把握する力ならば対応も可能かと」


 ここはシルフの女王としての面目躍如といったところか……しかし、そうなると問題が一つある。

 その質問を行う前に、バルザードがレーフィンに質問する。


「ならば、王女と共に一度本部へ?」

「いいえ。この段階でソフィア様が姿を現すとさらに混乱する可能性もありますし、私単独で」


 レーフィンはあっさりと首を左右に振った。

 つまり、レーフィンは別行動で対応するつもりなのか。


「一度契約を解除するのか?」


 今度は俺が問い掛ける。すると彼女はまたも首を左右に振る。


「契約を解除した時点で、同じ精霊とは契約できなくなりますので」

「とすると、契約した状態で……それ、できるのか?」

「可能ですよ。魔力は減ったままになりますが、感情を読み取るには問題ありません」


 ――精霊の契約は、一部契約者の魔力と繋がるということを意味する。それにより精霊側は人間に力を多少融通する形となるため、必然的に精霊自体の力が弱くなる。

 レーフィンのクラスとなればそれほど影響がないようにも感じられるが……ここで彼女はソフィアに体を向けた。


「ソフィア様。離れることによって多少風の能力が使いにくくなりますが、ご了承頂ければと思います」

「いえ。それに騎士達の中にいる裏切り者を探す方が重要です。レーフィン、お願いします」


 話はまとまった。ここでバルザードが「ならば」と言って口を開く。


「ひとまず、村にいる騎士達は待機を――」

「いえ、それもまずいでしょう」


 レーフィンが彼の言葉を止める。どういうことなのか。


「騎士達が持っていた剣、あれはどうやら今回活動させている魔物と同じ気配を漂わせていました」

「とすると、武器を生み出したのは居城の主ということか?」

「まさしく。本部にいる可能性のある裏切り者が同じなのかどうかはわかりませんが……居城にいる魔族は、裏切りの騎士が捕まったという情報を手に入れていると考えていいでしょう。策を破られたという状況である以上、居城に近いこの場所にいるとさらなる苛烈な攻撃を加えられる可能性は否定できません」

「待機する間に、攻撃を受け続け危険だというわけか……ならば、我ら騎士団の選択肢は二つだな」

「はい。居城へ向かうか、一度退くか」

「俺達は、行くぞ」


 ここで発言したのは、アルトだった。


「悪いが、俺は騎士さん達の方針に合わせる気はない。そっちが退いたとしても、俺達は向かわせてもらう」

「待つことはできないか?」

「本部がどこにあるかは知らないが、少なくとも数日以上は時間が掛かるだろ? 今だって被害が出ている以上、できるだけ早く倒さなければと思っている。無謀と思われるかもしれないが、説得しても止まる気はない」

「それは、私も同意です」


 ソフィアが発言。それにいち早く反応したのはエイナ。


「王女……」

「エイナ、私自身旅を続け、様々なことを見てきました。その経験から考えても、ここで退くつもりはありません」


 宣言し、ソフィアはレーフィンを見る。


「けれど、本部にいるかもしれない裏切り者を見つけだすためにレーフィンが向かうのは同意」

「……わかりました。騎士バルザード、いかがしますか?」

「確認だが、こうした話を私にもするということは、信頼してもらっていると考えていいのか?」

「はい」


 即答したレーフィンに、バルザードは笑みを見せた。


「わかった。ならば私があなたに同行しよう……リリシャ、君が騎士の指揮を行ってくれ」

「残る騎士を率い、居城を攻略すると?」

「ああ。しかし魔物達が周辺にいるだろう。それらを倒すだけでも一苦労だと思うが」

「――騎士バルザード。こちらから一つ助言が」


 今度は俺が口を開いた。


「俺とソフィアは二度、魔族の居城に入ったことがある。その経験からすると、居城内はむしろ手薄。少数でも攻略可能だ」

「今回攻略を行う居城でも、同じことが言えると?」

「外にあれだけ魔物を放出しているんだ。居城の魔族だって生み出せる魔物には限界があるだろうし、おそらく同じだと思う。もしまずいと感じたら引き返せばいい」

「うむ……だがもし居城に入り込んだ時点で散らばっていた魔物が戻って来たら?」

「それが一番の懸念だとは思う。ならやることは、外から中に入って来ようとする魔物を食い止めることだ」

「二手に分かれるというわけか」

「なら、俺達は突入するってことでいいだろ?」


 アルトが問う。それに口を開いたのはエイナ。


「あなた達が? 大丈夫なんですか?」

「十分な戦力になると思う」


 今度は俺が言う。エイナは眉をひそめたが、ソフィアが頷くのを見て、矛を収めた。


「……人選については、居城に向かった状況に応じて考えなければならないだろうな」


 バルザードが語る。次いでリリシャに目を向け、


「状況に応じ、対応してくれ。難しい話だとは思うが」

「できる限りのことはする」


 リリシャが言う。これで話は一段落か。


 騎士団の人数はそれなりにいる。彼らが一斉に攻め寄せてきた場合グディースがどう動くか気になるところではあるが……この辺りはやってみないとわからないところもあるため、今はどうとも言えない。


 ゲームにおいては別段誰からの介入をされることもなく、主人公のパーティーだけで攻略していた。その場合と今とではどう違うのか……その点については、注意が必要だろう。


「では、明朝に行動を開始することにしよう」


 バルザードが最後に告げ、会議は終了。解散することになった。


「ルオン、明日はよろしく」


 家を出る際アルトが言う。頷き返すと、今度はキャルンが俺に宣言する。


「今度こそ、しっかりと活躍して見せるからね!」

「ああ、楽しみにしてるよ」


 アルト達が去る。次いでリリシャが騎士達へ連絡するためか家を出た。

 ここでソフィアはバルザードへ体を向ける。


「騎士バルザード、レーフィンのことを頼みますね」

「もちろんです」


 礼を示した彼は、そのまま民家を出る。さらにレーフィンがソフィアとアイコンタクトをとった後、彼に追随するべく外へ出た。

 残るは俺とソフィアとエイナ……ここで俺が外に出る番なのだが、一つソフィアに確認しなければと思うことがあった。


 とはいえエイナがいる手前切り出しにくい……と思っていると、逆にソフィアから話し始めた。


「ルオン様、いくつか確認しておきたいことが」

「……ああ」

「それで、エイナ」

「はい」

「少しの間、外に出ていて欲しいの……お願い」


 指示にエイナは俺とソフィアを交互に見る。特に俺に注目し……何か言いたそうな様子ではあったが、最終的に頷き家を出た。


「……エイナとしては、気になるのでしょう」


 ソフィアが言う。


「ルオン様について疑っているわけではないようですが」

「それは仕方のない話だと思うけどな……ちなみに、俺の事はどう説明したんだ?」

「命の恩人であることなど、色々と」


 その色々の部分が気になるけど……まあいい。


「それじゃあ、グディースとの戦いへ向け、最後の打ち合わせだな」


 俺の言葉にソフィアは頷き――二人だけの話し合いが始まった。


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