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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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攻略前夜

 夜、俺はあてがわれた家の一室でシルヴィ達と連絡を行う。使い魔は映像を送るようなことはできないのだが、上手く調整すれば声だけ飛ばすことができる。もっとも、それなりに魔力を消費するけど。


『どうにか、こっちも合流できたぞ』


 クウザが報告。俺達の状況を話した後の発言だ。


『ルオンがいないことについて疑問を抱いたみたいだが、別行動だと話すと納得してくれたよ』

「それはよかった……で、クウザ。五大魔族のところへ行く用意はできているのか?」

『ああ。不穏な空気が居城に近づくにつれはっきりと感じられるよ。フィリさんに魔法実験でもするんじゃないかと説明したら、すぐに向かうべきだということで意見が一致した』


 よし、あちらも態勢は整ったと考えていいだろう。


『で、だ。ルオンさん。ここからが相談なんだが』

「五大魔族ダクライドの能力だろ?」

『正解だ。改めて説明してもらえないか?』

「ああ。まず能力について。五大魔族はそれぞれ属性を司っている。レドラスが風。ベルーナが地」

『ほう』

「その中で、ダクライドは水属性……いや、主体的に使うのは氷属性かな」

『面倒そうだな』

「確かに面倒だよ、動きを止めてくる攻撃が多いからな」


 五大魔族ダクライドは、見た目は二刀流の鎧武者。本当に東洋風の鎧に身を固めたデザインで、この世界観に対しどこか違和感の残る見た目であったことは間違いない。


「防御能力なんかはまあそこそこで、二刀流の剣はどちらかというと防御に使うパターンが多い」

『魔法主体ということか?』

「その通り。攻撃パターンについては反撃主体かつ、距離を置くといった消極的なものから前に出る突撃仕様まであるけど……どの攻撃パターンにおいても、氷属性の魔法を利用し動きを止めにかかる」


 シナリオが進むごとに剣術能力が強化されていくので、序盤は剣の技術に関する能力が弱まっているのだろう。


「そいつには氷属性の専用技能が二つある。一つは『アイスバインド』という魔導技で、魔力を込めた衝撃波を生み出す。直撃すると当たった部位が氷漬け。もっとも、攻撃を受けた人物の防御力が高ければ、すぐに氷をはがすことはできる」

『どのくらいの時間拘束される?』

「十秒にも満たない時間だとは思うけど、戦闘においては致命的になるかもしれない。その間にダクライドはもう一つの専用攻撃……魔法である『アイシクルスフィア』を発動させ――深手を負う可能性もあるな」

『厄介だな……拘束を防ぐ手段は?』

「衝撃波を避けるか、武器で弾くかだな。氷は人間の魔力に反応して凍りつくという設定だったはずだから、体に触れなければ大丈夫なはず。魔法の方は氷柱が取り囲むように襲い掛かってくるけど、クウザの能力なら『アイスシールド』により防げる。二つの専用技はセットで攻撃してくることがほとんどだったが……物語のようにはいかないと思う。クウザは魔法を特に注意してくれ」


 ゲームにおいて『アイスバインド』は盾で防げば回避できたから、問題はむしろ専用魔法か……と、ここで今度はシルヴィの声がした。


『ルオン、ボクから質問したいことがある』

「シルヴィ? 聞いていたのか」

『今しがた戻ってきたところだ。で、ルオン。居城に入り込む際の注意点などは?』

「ダクライドの居城は、構造自体はそれほど複雑じゃない。ただ、少々魔物の数が多いと思うから気を付けろ」


 エンカウント率の高さが問題だったはず……理由としては他と違って力を分散させていないから。


『わかった。できる限り万全の状態で臨むとしよう』

「……シルヴィ」

『なんだ?』

「同時攻撃という形になったため、敵の強さはそれほどでもないはず……出てくる魔物によって五大魔族の強さも推定できるはずだから、もしまずそうだったら連絡を頼む。使い魔を通してもらえれば、すぐに伝わるようにする」

『何か考えがあるのか?』

「優先順位としては、そちらが上だからな……数日以内に攻略が無理そうだったら、俺が全速力で向かう」

『……なりふり構わず、という感じだな』

「正念場だからな」


 シルヴィから笑い声が漏れる。とはいえそれは、明らかに苦笑だ。


『そうならないよう頑張るさ。ルオン、そちらの武運を祈っている』

「シルヴィ達も」


 連絡を終える。そこで次は、ガルクに話し掛けた。


「ガルク、魔王の魔法対策はどうだ?」

『今のところ魔王側に露見はしていない。対策も進んでいる。順調と言いたいが……少々気になることが』

「どうした?」

『どうも精霊達の動向を観察している魔族がいるらしい』


 それは懸念事項だな……俺はさらに質問を行う。


「敵も怪しみ出したということか?」

『いや戦況が徐々に悪くなっていることから、精霊達がどう動くのかを監視している――と、ノームの王は推測していた』

「それを通じてこちらの対策がバレるのは勘弁してくれよ」

『そこは細心の注意を払っている……この辺りについては、物語と照らし合わせてどうだ?』

「微妙だな。俺はあくまで人間と魔王との戦いしかわからないからな……魔王が精霊達に対しどう動いていたかは、読み取れなかった」


 これが物語通りなのか、それとも違うのか……どちらにせよ、違うと考えた上で行動した方がいいだろうな。


「ガルク。南部侵攻について、五大魔族を同時撃破したタイミングですぐに動き出す可能性もゼロじゃない。俺達の戦いはそう長くはない。その後南部侵攻が始まり……となると、間に合うか?」

『出来る限りのことをしよう』


 ガルクはそう応じ、会話が終わる。ふむ、次はレーフィンに確認するか。そう思い動き出そうとした時、窓にレーフィンの姿を発見した。


「……どうした?」


 窓を開けて迎えると、彼女はほのかに笑みを浮かべた。


「そろそろ他の方々ときっちり話し合いをすると思いまして」

「お見通しだな。シルヴィ達と連絡した。ガルクから魔王の魔法対策についても聞いた。後は、南部侵攻だ」

「カナン王の動きは?」

「最大限の動きをしてくれているよ。南部から敵が来るということを知っているためか、動きもずいぶんといい。十分に対抗できる戦力を得ることができると思う」


 しかし、リチャルが話したことを考えるとまだまだ懸念は拭えない。


「レーフィン、精霊達は協力してくれるのか?」

「それは心配いりませんよ。さすがに南部侵攻の情報が漏れるのは厄介なので、あくまで人間側が危機的状況に陥ったら動き出す、ということにしてあります。今のところはそれで精霊達も納得しているようです」

「ちなみに、精霊達は言うことを聞いているのか?」

「私の名を含め、ノームの王も呼び掛けていますし、さらにアマリア達の連名とあらば……」


 ほぼオールスターじゃないのか、それ。


「四大精霊と呼ばれる私達は、他の精霊と比べ格が高いという風にみられることも多い。そうした要素も効いているかと思います」

「……この戦いが終われば、間違いなく南部侵攻が始まる。時間がないから、可能な限り急ぎ、かつ露見しないように」

「難しい話ですが、頑張ります」


 レーフィンは立ち去る。一通り情報の確認はしたので、後は明日以降に備えて寝るだけだ。

 ソフィアはエイナとまだ話しているようだが、翌日から戦いになるのでほどほどにして休むだろう。俺も眠ることにしよう。


 眠る準備をする。そういえばバルザードにこの戦いが終わったらどう動くかというのは詳しく聞いていなかったな……ま、明日確認してもいいし、今日は寝よう。


 とはいえ一応……最後に、俺は使い魔を生み出して周囲の状況を探ることにする。眠る間に怪しい存在を見つけたら、報告がいくように……村の周囲を見張る騎士の姿や、明かりが灯る家が俺の脳裏に浮かぶ。


「……ん?」


 その中で、俺は一つ気付く。村から多少離れた草原。そこを進めば五大魔族の居城に到達するのだが……そこから、魔物の群れが近づいてきていた。


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