共闘者との再会
俺とソフィアは五大魔族グディースの実験により暴れる魔物を倒し始める。ソフィア単独でも十分だが、俺の援護が加わり、盤石な戦いを見せる。
「――ルオン様、一つ確認ですが」
街道で発見した魔物を撃退した後、ソフィアが口を開いた。
「アルト様と合流以降、ルオン様は後衛に回る形をとりますか?」
「……アルト達には居城に存在する瘴気との相性が悪いって、以前手を組んだ時言ってあったな。ともあれ克服したとか道具で対処していると言えば問題ないし、どうするか。俺も前以上に力を露見しないよう戦うことはできるようになったし……ま、アルト達や騎士団と合流して決めるのでも遅くはない」
一番の得意魔法である『デュランダル』については十分な威力を出せるようになっている。遭遇する魔物の種類を見る限りは、今の状況でも問題はなさそうだ。
「ついでに言うと、このリボンにはもう一つ隠された効果があった」
「効果、ですか?」
「そんな大層なものでもないかもしれないけど……リボンを使って試行錯誤した結果、色々と魔法の扱い方が上手くなったということさ」
「それは、つまり」
「以前と比べて魔法なんかの威力が高くなっている……けどまあ、これ以上さらに強力なってどうするんだという話でもあるけど」
力の調整も以前より上手くできるようになっているので、この辺りについては収穫と言えるだろう。
そうした会話を行いながら俺達はアルト達と合流すべく先を急ぐ。エイナ達も五大魔族との戦いよりまずは周辺の状況を落ち着かせてからという感じらしく、まだグディースの居城に向かってはいない。
「アルト様も、強くなっているんでしょうね」
「ああ、それは間違いないな……ただどうも、妹のステラさんは別所にいるみたいだ」
「ということは、この戦いに参戦はしないと?」
「みたいだな」
レドラスと戦った時のメンバーは魔物と戦い続けレベルが上がっているのは間違いない。アルトは本来ゲームの主人公なので成長能力が高いことも頷けるが、彼の仲間である神官のイグノスやキャルンも十分強くなっている。彼らと俺達だけでもグディースの居城を攻略できるかもしれない。
そうした判断をしつつ魔物を狩る。数が結構多く、ソフィアは剣を振りながら言葉を零す。
「本当にキリがないですね」
「ああ。それに根を断たない限り、勢力範囲は広がっていく……アルト達と合流したら、すぐにエイナ達と会うことにしよう」
「わかりました」
アルトを観察する使い魔と逐一やり取りしつつ、進んでいく。いよいよ合流する……という段になって、新たに報告が。
「また敵か……」
ゲームの時も面倒なイベントだと思っていたのだが、現実になるとさらに面倒だ……いや、無差別に敵をバラまいているんだから、当然と言えば当然の結果なんだけど。
しかしここで腐ってもまずい……よって、俺とソフィアは淡々と敵を倒していく。その時、
「おい、大丈夫か!?」
聞き覚えのある声だった。俺とソフィアは魔物を倒しつつ視線を交わし――同時に振り向いた。
「――って、ルオンとソフィアじゃないか!」
そこにいたのはアルト。前と格好は変わっていないが、握る大剣だけは少々高そうな物へと変わっている。
「久しぶりだな……そっちも噂を聞きつけて魔物を狩っているのか?」
「ああ、そうだよ。ステラさんとかは?」
「ステラについては別に用があって今回同行していない。今俺と一緒にいるのはイグノスと――」
「ルオン!?」
キャルンの声だった。視線を転じると、横にあった茂みから、短剣を握る彼女の姿。
衣装は前と異なり黒一色になっている。ソフィアはそれが意外だったのかまじまじと見つめる。すると、キャルンは肩をすくめた。
「ああ、この格好? 知り合いにもらった、ちょっと良い防具だよ。見た目は、あんまり気にしないで」
「……元気そうで何よりです。ところで修行は完了したんですか?」
「まあね。本当なら私の力を見よ、とか言いたいところだけど、そんな場合じゃないか」
気付けばさらに魔物が。俺は小さく息を吐き、
「話は後にしよう。今は魔物達の撃退を」
「そうだな。キャルン」
「うん、わかってる」
「ルオン様、この場にいる以外にも魔物がいるでしょう。ひとまず分かれませんか?」
「そうだな……アルト、それでいいか?」
「いいぞ。周囲の魔物を倒したら改めて話をしよう」
そう会話を成し――俺達は、再び戦い始めた。
その後魔物を撃破し、落ち着いたところで合流。全員で再会を喜びつつ、魔物のいなくなった平原で話を開始。口火を切ったのはアルト。
「どうやら際限なく魔物が現れている……しかも、この周辺では見ない魔物らしい」
「これは俺が手に入れた情報だが」
と、俺は前置きをしてから話す。
「レドラスのように居城を構える魔族……そいつが原因らしい」
「マジかよ。ということは、そいつを倒さない限り終わらないということか?」
「そういうこと。で、色々な国の騎士団が集った一団が戦っていると聞き、俺達はそこへ向かっている。アルト達はどうする?」
「……騎士団は、居城を構える魔族と戦うつもりでいるのか?」
「そこまではわからないが、延々と出現し続ける魔物の原因とわかれば、黙っていないと思う」
俺の言葉にアルトも「そうだな」と同意する。
「なら俺達もついていくことにするさ」
「いいのか? というか、他に用事とかは?」
「ないよ。そもそも俺達はこの魔物をなんとかしようと思っていたところだ。居城を構える魔族が相手なら……受けて立つ」
強い言葉。となれば話は早い――のだが、言っておかないといけないことがある。
アルト達はソフィアの素性を知らない。そこは話しておいた方が今後の話も早いだろう。さすがに俺のことについては語れないけど。
「……ソフィア」
「そうですね」
あっさりと同意。俺が言わんとしていることがわかったらしい。
「それじゃあ行こうか」
「ああ、だがその前に」
俺の言葉に、アルト達はこちらへ視線を送る。
「言っておかないといけないことがある。今思えばレドラスを倒した時点で語ってもよさそうなものだったが」
「何だ?」
「ソフィアについてなんだけど」
――と、彼女自身の言葉を交え語った結果、全員が一様に呆然となった。
仲間のクウザは割とすんなり受け入れたんだが、アルト達は違う……というか、これが本来の反応か。
で、俺達を見据えアルトが驚愕の声を放つ。
「……えっと、マジか?」
「信じられないというのは無理もないけどな……だけど、これから赴く騎士団の面々の中に、彼女の従妹である騎士もいる。実際そこへ行けば、本当かどうかわかるぞ」
何気なく語った俺に対し、アルト達はソフィアを一瞥して沈黙する。うん、この様子だと信じてくれるようだ。
「それじゃあ改めて、行くとしようか」
俺の言葉にアルトは「お、おう」と応じ、ぎこちなく歩き出す。そんなに衝撃的だったのだろうか。
キャルンに至っては共に旅をした期間がそこそこあったためか、なんだか委縮している様子。ソフィアが苦笑するくらいのレベルであり、まだ説明しない方がよかったのかなと思ってしまう。
ま、少ししたら慣れるだろうと思いつつ騎士団の所へ向かう。道中魔物を倒すのは至極当然ながら、フィリ達の方へ行っているシルヴィ達の状況も逐一確認した方がいいだろう。
そして思うのは、アルト達でこうならエイナと再会したならどうなるか……大騒ぎするような人物ではないと思うんだけど。
その反応がどうなのかちょっと想像してみたりしつつ……アルト達と共に、目的地へ向かった。




