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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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事情を知る仲間達

「それで、ボクらはどう動く?」


 問い掛けてきたのはシルヴィ。俺は頭をかきつつ、考えながら答える。


「それを言う前に、状況の確認だ。現在フィリは東部、エイナが西部にいてそれぞれ行動を開始している。使い魔を用いた他の主人公の居所としては……まず、ラディはフィリと同じく東部にいるな。アルトは、西部だ」


 そこで俺はレーフィンに確認を行う。


「フィリ達に賢者の力が適合するか、確認できるか?」

「どなたに適合するかはその人物の近くでないと判断は難しいですね。ただ、魔族が保有する賢者の力についての解析は、一両日中にはできるかと」

「ずいぶんと早いな」

「私自身、部下を各所に派遣しています。その者達を通じて、調べることができるのです」


 なるほど……俺は頷き、今後の方針を提案する。


「五大魔族のうち東部のダクライドについては、それほど距離もないため今フィリが行っているイベントにも十分間に合う。しかしグディースの方は遠いからな。全力で魔法を使ってもエイナがある程度イベントを進めてしまっているだろう」

「で、ボクらはどちらかに集中するのかい? それとも、二手に分かれる?」


 さらにシルヴィからの質問……とはいえ、仲間達の表情を見ればどう思っているかはわかる。


「……二手に分かれるしかないな」

「ならボクとクウザはダクライドの方を担当するってことでいいのかい?」

「その方がいいだろうな。もしシルヴィ達がエイナの所へ向かっても、門前払いされる可能性だってゼロじゃないし」

「決まりだな」


 俺の言葉にシルヴィは笑みを浮かべる――心配するなと言いたげな、頼もしい笑み。


 ――アカデミアでも修練を重ね、シルヴィもクウザも強くなった。なおかつ二人は俺のことを知り協力してくれている、信頼できる仲間――


「事前に、俺もできるだけフォローする」

「そう心配するな。明日から行動開始ということでいいのか?」

「ああ、それで構わない……ただ使い魔を通し、常に連絡できる状態にしておくべきだろうな。何かあったら、すぐに連絡してくれ」

「わかった」


 作戦会議終了。俺達は明日に備え、準備を始めた。






 レーフィンが賢者の力について調査を行っている中で、俺とソフィアは町で色々と準備をする。とはいっても精々食料の準備くらいで、数時間もすれば準備は一通り終わってしまった。


「ソフィア、長時間移動魔法を行使することになる。大丈夫か?」


 道中ソフィアへ尋ねると、覚悟を秘める表情を示し答えた。


「もちろんです……こういう時に備え、色々と準備をしてきたのですね」

「そうだ。しかし、今回はかなり面倒な戦いとなるだろうな」


 俺の言葉に、ソフィアは頷いて見せる。


「エイナ達と会った以降は、五大魔族との戦いに入るわけですが……」

「俺は能力を悟られるわけにもいかないから、やっぱりサポートに回る……あ、そうだ」

「どうしましたか?」

「話していなかったが、ガーナイゼでソフィアが訓練をしていた時、エイナ達と会ったことがあるんだよ」

「あの時、何をしていたんですか?」


 そこで俺はリリシャのイベントについて説明する。ソフィアは「なるほど」と小さく呟き、俺へ言及。


「事情は理解できました。私達が騎士団と話をするのはそう難しくなさそうですね」

「その辺りは心配する必要はないと思う……ところでソフィア」

「はい」

「父親である王の事だけど……気になるか? ソフィアのことを公にするなら話をするべきだとは思う。少々迂回する形になるけど……移動魔法を使うなら話ができる余裕も多少は生まれる」

「……確かに、お父様に話はした方がいいですね。そのような形でお願いします」

「ただ、一つ言わせてくれ」

「はい」


 明瞭な返事。彼女は俺が言うことを察しているのだろう。


「ソフィアの存在は、この戦いに不可欠となっているのは間違いない。もし王様に戦うことを反対されても、戦ってもらう必要がある」

「ご心配には及びません」


 その言葉を聞いた直後……俺は、小さく息を零した。それにソフィアは首を傾げる。


「いかがしましたか?」

「いや、あのさ……ほら、王はソフィアを師匠の所へ送り届ける、としか知らないわけだろ?」

「そうですね。けれど、既に亡くなっているという情報は知っていてもおかしくありませんよ」

「その状況下で、俺がソフィアと一緒に現れるとなると……その、なんというか」

「私が説明しますから」


 微笑みを浮かべソフィアは言う。俺は「頼む」とだけ告げ、宿へ戻るべく足を動かすこととなった。






 ――翌日、様々な情報が俺のところへと舞いこんでくる。


 まず、フィリとエイナの動向。両者は仲間と共にイベントをこなしており、確実に五大魔族と戦うような状況になっている。


 一方、フィリの近くにいるラディについても、何やら異変があるとして動いている様子。この調子だと、シルヴィ達が干渉しなくてもフィリと共に戦いに進んでくれそうな感じだ。そして、彼らは全員元々戦っていた仲間達と共に行動している。


 エイナに至ってはバルザードに加えリリシャが傍にいる様子。彼女はゲーム上で仲間になることはなかったが、前線で戦える力を所持しているのは間違いなさそうだ。


 アルトについては西部に近い場所で活動している。グディースの行動範囲に入っているかはギリギリだが、もしイベントが発動し魔物が出現し始めたら、彼もまた参戦することになるかもしれない。


 加え、彼の仲間には意外な人物も。


「……どういう経緯かは調べて無かったが、こういう形で参戦するのか」


 以前行動を共にしたキャルンもまたアルトと共に行動している。リチャルは以前「彼女が魔族と戦うことになる」と予言していたわけだが、こういう事実を暗示していたのかもしれない。


 また、オルディアは……単独で行動しているな。なおかつ各主人公とは離れた場所にいることから、五大魔族との戦いに加わってくる可能性は低そうだ。

 状況は把握した。これから本格的に行動を……と思いながら、俺は朝食事の席でレーフィンの報告を聞いた。


「解析は終わりました。後は近づいてみて、判断することになるかと」

「シルヴィ達の方についてはどうする?」

「それについては私に考えが。シルヴィ様、私の部下が同行します。今から言う場所にまず向かってもらえますか? この町から数時間の場所です」

「ああ、構わない。もしフィリに力が宿らないとなったらどうする?」

「……ラディも近くにいる。彼には力が入っているけど、消滅させるより彼に力を入れるのも一つだろう」

「戦いに参加させるのか?」

「どの道、現在いる場所を考えると居城に向かいそうではある」

「なら、どうするかはボク達が判断してもいいか?」

「報告だけは頼む」

「わかった」


 こっちもアルトが近くにいるので、どうするかは考えることにしよう。


「……ルオン、ここで一つ確認したいことがあるんだが」


 唐突にシルヴィが発言する。


「構わないが、どうした?」

「ルオンのことだ。ボクとしては賢者の力を得る人物くらいには伝えても良い気がする」

「……まだ不特定多数の人物に拡散するのはやめたほうがいいと思う。まあ俺のことがわかってもその能力を察しない限りは大丈夫かもしれないが……ひとまず、語らない方向で」

「わかった」


 こうして俺達は話を終え――いよいよ、行動を開始した。


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