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賢者の剣  作者: 陽山純樹
精霊世界

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同時攻略による問題

 五大魔族の二体同時攻略……ゲームにおいても異なる魔族に同時攻撃を仕掛けるケースなんてなかったし、俺にとっても初めての状況である。


 今まで二体倒してきた時点で、同時に話が進行するということはなかったわけだが……予測していたとはいえ、面倒な事態となった。


「レーフィン、確認だが」

「はい」

「魔王の魔法対策については、まだ時間が必要だよな?」

「そうですね。急ぐ場合大々的に動く必要がありますが、そうなると魔族達に露見してしまうでしょう」


 そこだよな……準備をするだけなら可能なんだろうけど、バレないようにする場合話が違ってくる。

 どうしようか考えていると、シルヴィから質問が。


「ルオン、五大魔族と戦うために必要な出来事……それを止めることはできないのか?」


 もっともな質問。しかし俺は首を左右に振った。


「前提となる出来事というのは、言ってみれば五大魔族がそれぞれ動き出しているという兆候を発見することだ。もし途中で邪魔に入っても、五大魔族が動き出している以上、間違いなく魔族側は動き出す。それにきちんとイベントの流れに沿わないと居城に入り込むことができなくなるなんて可能性もある。下手に邪魔立てするのもリスクがある」

「ルオンさん、その五大魔族を打倒するのを待ってもらえればいいんじゃないか?」


 今度はクウザの質問。


「例えばエイナさんの方……確かソフィアさんの従妹だろう? 彼女が話をすれば間違いなく聞いてくれる。どう説明するかについては検討の必要があるけど」

「それも無理だ。特に片方は」


 今回戦う五大魔族は西部を根城とするグディースと、東部を根城にするダクライド。どちらも動き出すと非常に厄介な出来事が待っている。


「まず西部……グディースという魔族なんだが、レーフィンには以前説明したよな?」

「賢者の力を用いて実験する魔族ですね」

「そうだ。賢者の力を利用し、多数の魔物を生み出す。例えばレドラスなんかは策のため魔物を放っていたわけだが、グディースの場合は魔物を多量に生み出し尖兵とする実験。つまり実験することが目的となっている」

「放っておくと魔物が大量に発生し被害が出る可能性があるってことか」


 クウザが苦々しく語る。俺は即座に頷き、


「そうした現状を鑑みて……騎士達が納得すると思うか?」

「うーん、なさそうだな」

「グディースは確か、実験を大陸中央部を覆うくらい拡大する予定だったから、放置しておくと甚大な被害が……それも、南部侵攻に対する防衛に支障をきたすほどになる可能性もある。その上時間が経てば魔物が強くなる……放置しておくとどうなるかわからない」

「なら、もう一方の五大魔族は?」


 シルヴィが問う。それに俺は――首を左右に振った。


「こちらは、絶対に防がないといけない」

「そうやって断定する以上、マズイことをやるのか?」

「まずいなんてもんじゃない。下手をすると、居城周辺が全て荒野になる」


 俺の発言にソフィア達は全員視線を集め言葉を待つ。


「……もう片方の五大魔族、ダクライドは魔王が放つ強大な魔法に関する調査などをしている。奴がやろうとしているのは、魔法の検証実験だ」

「とすると、もし発動した場合は縮小版ですが魔法が発動すると?」


 ソフィアの質問に、俺は「そうだ」と同意する。


「物語の中では被害が出ないまま事なきを得たので、問題はなかった。けれど放置しておいたらどうなるか……」

「その魔法実験は、どれほどの日数で行われるのですか?」


 今度はレーフィンからの問い掛け。俺は渋い顔をしながら答える。


「わからないな。物語上でどのくらいの日数が経過したかは描写がない……でも、さすがに一月以上猶予があるわけじゃないだろう」

「確かに、早急に対策が必要でしょう。こちらも急がないといけませんね」

「魔王対策を?」

「南部侵攻の対策についても、です」

『うむ、こういう状況となった以上、全力を尽くさねばなるまい』


 ガルクの声。テーブルの上に子ガルクが出現し、全員に説明を始める。


『現在、フェウスやアズアも行動をすることにより予定よりも対策の完成が早まっている……が、それでも急がねばならないだろう。そこでルオン殿』

「何だ?」

『南部侵攻についてだが、それはどのくらいの期間で終わるのだ?』

「正直、わからないな。とはいえ、一日二日で終わるような話ではないのは確か。南部に魔物が集まっている情報を聞き、カナン王を中心に兵力が集中し始め、戦いを始め……その時点で、一月くらいは経っていそうだな」

『うむ、そうか』

「対処できそうか?」

『見立てでは、ギリギリではあるな……もし我ら神霊が動き出していると知れれば、対策を講じられる危険性が高い。よって、魔王に悟られるぬよう動く必要があるため、時間が掛かる』

「――ルオン様、もう一つ問題が」


 ソフィアが話し出す。俺はなんとなく、想像がついていた。


「言いたいことはわかるよ。バールクス王国などのことだろ?」

「はい。五大魔族との戦いの後、南部侵攻が始まるとしたら……バールクス王国を始めとした、国に侵攻した魔族達はどうなりますか?」

「例えばバールクス王国の場合、南部侵攻が始まった時点で解放されているケースばかりだったからな……」


 この辺りはイベントフラグの都合なのか、放置していても最終的には南部侵攻後は奪還した扱いになっていた。解放しなかったペナルティなども特になし。ゲーム的には人間側が勝利した結果、様々な国に侵攻していた魔族達も退却したとかいう感じなのかもしれないが――俺は、見解を述べる。


「放置しておけば、南部へ集まる戦力に対し挟撃、なんて可能性もあるな」

「だがそちらに戦力を割けば、間違いなく南部における戦いは苦戦するだろうな」


 シルヴィは冷静に分析しつつ、俺へとさらに言及。


「それに、他で活動している魔族などの状況もまずいことになるのでは?」

「……使い魔である程度カナン王の動向を調べているが、予想以上に対処が早い。俺達が騎士達を救ったため、兵力も物語以上に確保できていると思う。このままいけば、五大魔族を四体撃破した段階でも、ずいぶんと余裕ができるはずだ」


 そこで俺はソフィアへ首を向ける。


「タイミング的には丁度いいかもしれないな……もしエイナ達のところへ行くのならば、ソフィアが同行し引き合わせるのがベストだろう」

「このタイミングで話すということですか?」

「ああ。バールクス王国側の魔族が動き出す可能性も否定できないが……王の周辺も安定してきているし、今ならカナン王の動きが魔族達を牽制している面もあるから、大丈夫だろう」

「で、ルオン。両方同時に攻略するわけだが、肝心の賢者の力についてはどうするんだ?」


 シルヴィがさらに質問。俺は彼女を見返しつつ、


「現状、魔王の魔法対策をしていることもあるから、実質賢者の力は魔王に対抗できる存在を増やす、という意味合いに変化している。現状力を持っているのはソフィアとラディの二人……フィリやエイナの実力を考えると、戦力として欲しいところではあるけど――」


 最悪、精霊達の力を結集した剣を生み出すため賢者の力を所持している人物が一人いればどうにかできそうな状況になっている。その人物もソフィアであるなら、これ以上に賢者の力を得る人物が増えなくとも――


「ルオン様」


 ここで、ソフィアが声を上げた。


「私は……できるだけ、賢者の力を得る人物を多くした方がいいと思います」


 彼女の主張――俺はそれに聞き返す。


「それは、様々なことを考慮してか?」

「はい」


 ――今まで不測の事態も起きてきた。さすがにソフィア自身がどうにかなるなんて未来は全力で避けるが、色んな可能性を考慮する必要はある。


「わかった。なら、できる限り賢者の力の所持者を増やすような方向に動こう」


 俺はそう発言し、ソフィアは深く頷いた。


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