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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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新たな可能性

 勝負が決まり、ソフィアとシルヴィは息をつく。魔力を吸われた影響からか、二人は肩を落とし疲労を露わにする。


「やれやれ……どうにか倒せたな」

「ああ、これで終わりか」


 クウザは同意し、彼女達と同様息をついた。

 戦いは終わり――傭兵との戦いは終わったのだが、まだ続きがあった。


 突如、周囲に魔物の声がこだまする。即座に剣を構えるソフィア達。直後、森の中にいた魔物達が姿を現した。


「やはり先ほどの魔物化した傭兵が操っていた、ということですか」

「の、ようだな」


 俺は同意し……二人の前に出ようとする。すると、シルヴィはそれを止めようとする。


「おい、ルオン――」

「魔物の強さはそれほどじゃない。疲労していてもソフィア達なら対処はできるはずだ」


 俺は告げた後、素早く詠唱し――手に魔法で構築された槍を生み出す。


「つまりここで介入しなくても、問題なく対処できる……が、さすがに疲れただろ? 後は俺に任せてくれ」

「援護は、いるか?」

「必要ないな」


 上空にいる使い魔で周囲の様子を確認。森の中に魔物はいるが、その全てが倒した傭兵の背後にいる様子。


 そして、先ほどの戦いで相当な魔力を発したためなのか、魔物達の目は例外なく俺達へ向けられている。数が多いため取りこぼすと町まで行ってしまう可能性もゼロではないが、この調子だと大丈夫そうだ。


「三人の実力はしかと拝見させてもらったよ。今度は俺が動く番だ」

「けど、この魔物達じゃ全力を出す必要はないんだろう?」


 シルヴィが質問。俺は当然とばかりに頷き、


「ああ。けど、実力の一端を知ることはできるんじゃないかな」


 言葉と共に槍を構える……実のところ、ソフィア達の戦いを見て、少しばかり気持ちが高ぶった。それを発散させるのに、十分な相手だ。

 魔物が突撃してくる。俺は魔物と真正面から戦うべく――魔物と同様、突撃を開始した。






 ――戦いは、俺にとってまったく苦にならない一方的なもの。迫る魔物を槍で一薙ぎして倒していく……その光景は、見ているソフィア達から見ても気持ちいいものだったかもしれない。


「ふっ!」


 槍の一撃によって魔物を数体まとめて撃破する。槍を握り直しもう一薙ぎすると、襲い掛かってくる魔物が一瞬で消えていく。


 以前、地底で魔物を狩った時のことを思い出す。あれと比べれば数は少ないし、対応も楽。ただ後方にソフィア達がいることを考えると、突破されないようにしないといけない。


 まあ、それ自体さして難しい話ではないし――考える間にさらに魔物撃破。ここで一つ、感想を漏らす。


「これだけの数を従えていた、というのは驚きだな」

「あれだけの魔力を抱えていたにしろ、何か原理がないと説明がつかないな」


 シルヴィが後方から言う。


「しかしルオン……気持ちがいいな。そこまであっさりと倒すと」

「言っておくが、特別なことは何もやっていないぞ。この魔物の強さなら、シルヴィやソフィアだって同じようなことはできるさ」


 魔物を吹き飛ばしながら解説する。槍を振り始めておよそ十五分。確実に気配は減っている。


「ガルク」

『うむ、どうした?』

「一応確認だが、どこかに魔物の発生源とかはないよな?」

『ないな』

「よし、なら大丈夫」


 声に出し、突撃してくる魔物をさらに迎撃。魔物化した傭兵の洗脳が解けたためか相当攻撃的で、俺達を真っ直ぐ狙ってくる。本来ならばこちらの動きに合わせて動くような存在もいるのだが、理性をかなぐり捨てて向かってくる様は――疑問を感じるほど。


「――あの傭兵が操っていた余波、かな」


 クウザが後方で分析している。それに対し、俺は声を上げた。


「どういうことか、解説してもらえるか?」

「構わないが、あくまで推測だぞ?」

「それでいい」

「なら……私が言いたいのは、これほどまでの魔物を操っていたのは、自身の魔力を魔物に植え付けていたのではないか、ということだ」


 推測の後、僅かな間を置いて彼は説明を行う。


「ソフィアさんやシルヴィはあの魔物に魔力を吸収された……魔物に対しては食べていたことを考えると、完全な肉体を持つ俺達を食うことはできないが、体に触れれば力を奪い取ることができると推測できる。で、魔物に対しては逆に魔力を送り込むことが可能なんじゃないかと」

「つまり魔力を送り、動きを止めていたと?」


 俺の質問にクウザは「そうだ」と声を発した。


「つまり、傭兵は消えたがその魔力は残っている。魔物達が注ぎ込まれた魔力の影響下にあるというのなら、そいつが暴走し俺達へ向け攻撃を仕掛けているのも納得できる」

「……なあ、一つ質問いいか?」


 勢いよく魔物を吹き飛ばし、首をクウザへ向ける。


「それ、傭兵と同じような能力を持っている可能性は?」

「魔力を奪う能力か? さすがにそれは固有能力だろう」


 魔物が近づく気配。視線を戻すとなおも断続的に襲い掛かってくる魔物達。

 だが俺は平然と槍を振る――それからおよそ五分ほど。ついに勝負はつき、魔物は全滅した。


「……ま、ここで襲い掛かってもらった方が町にとっては好都合だな」


 一息つき、俺はソフィア達へ言う。


「傭兵を倒した後、散り散りになってしまったら厄介なことになっていた」

「あれだけ攻撃的な魔物ですから……もし逃げられてしまったら、駆除も大変だったでしょうね」


 ソフィアが同意する。ここで俺は彼女を見据え、問う。


「さっきの技だが……契約している三精霊の力を一つにまとめたのか?」

「はい。アマリアが考案した手法なのですが……けれど精霊の力を完全に収束できてはいませんし、何より私の力を加えるといったことがほとんどできていませんが」

「それであの威力か……ともあれ、これは相当な武器になるな」


 ゲーム上では精霊の力を融合するなんてことはできなかった。加え、俺がこの世界で得た知識でもほとんど例を見ないもの。ゼロというわけではないが、使い手は相当な実力者に限られていたはず。


「ここはやはり、賢者の末裔ということが効いているのか?」


 クウザが言うと、俺は「どうだろうな」と言葉を返す。


「確実に言えるのは、決して誰もが真似できる技じゃないってことだ……まだサラマンダーと契約していない状態で、あれだけの威力。さらに練り上げれば、途轍もないことになるな」

「魔王を、倒せるくらいにか?」


 シルヴィが訊く。そこで俺は考えてみる。

 四精霊とソフィア自身の力を結集した技……そこへ神霊の力を組み合わせて創り出す剣があれば、間違いなく魔王に対する最強の一撃となるだろう。


「……やることが、もう一つ増えたな」

「ですね」


 ソフィアは嬉しそうに語る。


「アカデミアで精霊について学ぶ。その中で、この技をさらに追求するわけですね」

「そうだ。まずはサラマンダーとの契約ってことになるのかな」


 クウザに視線を送りながら言うと、彼は頷いた。


「だろうな。ナテリーア王国内――都の周辺ならそれなりに案内できる。任せてくれ」

「頼む……それじゃあ――」


 戻る、と言い掛けて重要なことを思い出す。猟師小屋。そこに、シルヴィの復讐相手に関する情報が眠っている。


「……そういえば、一つ疑問がある」


 俺が話し出す前に、シルヴィが口を開いた。


「なぜ先ほどの傭兵は、ここにいたんだ? 町で聞いた話によると、家を破壊したのは結構前だと聞いている……つまり、奴はここを拠点にして魔物を食い強くなっていたということになるが」

「調べますか?」


 ソフィアが提案。シルヴィやクウザは相次いで頷き、猟師小屋へ向かう。

 情報を知った時、シルヴィがどういう反応をするのか。ゲーム上では情報を見つけた段階では大した反応を見せなかったのだが――


 シルヴィが先導して中へと入る。室内はそれなりに埃っぽかったが、構わずシルヴィは中を調べ始める。

 どういう反応があるのか……こちらが沈黙を守っている間に、シルヴィがある物を発見した。


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