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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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強さを求めて

 俺達は男性の店主から情報を聞き出した後、ソフィアが最後に「ありがとうございました」と礼を述べ、店を出る。


「家が破壊された、という話がありましたね」

「そうだな……」


 答えつつ、使い魔でさらに周辺を探ってみる。町の周辺を探ってみるが、とりあえず異常は見受けられない。

 というか、イベント通りにいかないとなれば、肝心の魔物化した傭兵はどこにいるのか……使い魔を操作しつつ歩いていると、


「ルオン様」


 ふいにソフィアから呼び掛けられた。


「次はあの店に……といっても、これ以上の有力な情報というのは難しいかもしれませんが」


 彼女が示す店は、ゲームでイベントを起こすための道具屋。頷いて店に入り、先ほどと同様ソフィアが店主に話し掛けた。

 それを聞いていると……うん、やはり一軒家に野盗が侵入したという情報が聞けるだけで、それ以上の情報が出ない。


 こうなると、当然俺のゲーム知識は何の役にも立たないわけで……どうするかな。

 そこからさらにソフィアと俺は町を歩き……とはいえ規模もそれほど大きくないため、一時間とちょっとで俺達はシルヴィ達と宿近くで合流。


 情報交換をした結果、シルヴィ達も似たような話しか手に入らなかったのだが、一点違うことがあった。


「西の森が広がる山の中腹に、猟師小屋があるそこで野盗らしき人物が何度か目撃されているらしい」


 ああ、そういう形で情報が出るのか……もしギルドの依頼を受けた戦士が依頼を放置しているのだとしたら、魔物化した傭兵は猟師小屋付近にいることになる。


 ただ現実となった今なら、当然日が過ぎればどこかに行っていると思うが……傭兵の詳細は悪党だったという点以外ほとんど明らかにされなかったが、猟師小屋付近で目撃情報があるということは、シルヴィの復讐相手と何かしら関わりがあったということなのだろうか。


「となると、そこに行くということですか?」


 シルヴィがソフィアに応じると、さらに今後の方針を提案。


「猟師小屋は町からそう遠くないらしいから、早めの昼食でもとってから行くとしようか。ソフィア、それでいいか?」

「はい、大丈夫です」


 今後の動き方も決定し、あとは猟師小屋へ行くだけだが……使い魔で遠目から探ってみるが、傭兵の姿はない。ひとまず町の周辺をもう少し探ってみよう。


 そして昼食といっても時間はまだ早い。よって、少しの時間自由行動ということになった。

 俺とソフィアは二人並んで町中を歩く。少しの間は双方沈黙していたが、やがてソフィアが話し始めた。


「……少々、いいでしょうか?」

「どうぞ」

「ルオン様の話の中で、伺っていなかったことがあると思いまして……バールクス王国の奪還についてです」

「……正直、その辺りは主人公が誰なのかで変わっていたからな」

「そうですか……戦うとすれば、やはりエイナですか?」

「そうなるな」


 返答すると、ソフィアは一度空を見上げた。


「エイナにはまだ私がルオン様と共にいることは話していません。おそらく今も必死に私を救うために動いているのだと思いますが」

「……すぐにでも話をしに行きたい、か?」


 まあそれは当然だろう……けれどソフィアは首を左右に振った。


「私の存在が、魔王との戦いに左右することは明白です。今はまだ、やめておくべきでしょう」

「……そうか」


 俺もそれ以上は言えなかった。実際、時期が来るまで話せないというのは俺も同意だったから。


「……ところで、ルオン様。話は変わりますが」

「ああ、何だ?」

「ルオン様の技量がどれほどのものなのか事情を聞いて把握しましたし……一度、何かしらの形で手合せがしたいと思うのですが」

「それは構わないけど、さすがに本気は出せないぞ?」

「それで構いません……今は」


 含みのある言い方と共に、ソフィアは微笑んだ――その視線には、魔王と戦わなければならないという使命感もあったが、それ以上に強くなりたいという野心があるようにも思えた。

 彼女にとって、強くなるということは魔王を討つために必要なことだと言えるのだが――それ以上に、思うことがある様子。


「なんだか、強くなるのが嬉しいみたいだな」

「……そんな風に見えましたか?」

「ああ」

「不謹慎でしょうか?」

「意欲はあった方がいいと思う……ソフィアにとっては魔王を倒せる力が欲しいという感じか?」

「目標は――」


 彼女は一拍置いて、俺に言う。


「ルオン様と、肩を並べるほどに」


 はっきりと告げた彼女に、俺は多少なりとも驚いた。


「……目標、高すぎますか?」


 言ってから苦笑するソフィア。それに対し俺は、首を左右に振る。


「むしろ俺を目標にしていいのか、という思いだよ……俺だってできたんだ。ソフィアだって可能だよ」


 やる気があるのならば俺としても嬉しい……そう考えていた時、使い魔から報告がやってきた。


「……ん?」


 声を上げる。猟師小屋からさらに森を進んだ場所……そこに、魔物の群れがいるらしい。


 上空にいる使い魔からは森の中がどうなっているか詳細に見ることはできないので、近づくよう指示を送る。魔物の群れは近隣にいる魔物の種類に当てはまっているようだが……いや、例外もいる。群れを成しているというのは、一体どういうことなのか――


「――これは」

「どうしましたか?」


 俺の発言を受けてソフィアが問う。


「あ、いや、なんでもない」


 俺は咄嗟に誤魔化したが……予想外の事態が起こっている。

 これ、シルヴィ達にさすがに話した方がいいだろうな。そう決心し、俺は町の中を歩き続けた。






 早めの昼食をとった後、俺達は猟師小屋へと向かうべく動こうとする。しかし、その前に一つ報告しなければならないことがあった。


「シルヴィ、いいか? 使い魔で周囲を探った結果なんだが」

「野盗に関することかい?」

「詳細はわからない。関係あるのかもしれないし、関係ないかもしれない」

「ずいぶんと抽象的だな」

「俺も判断つきかねているんだよ。そもそも野盗の姿も確認できていないからな」

「わかったが……表情が硬いな。余程の事態なのか?」

「下手をすると、町に被害が出るかもしれない」


 こちらの言葉にソフィアやクウザは驚いた様子。


「野盗が手下を引きつれ仕掛けてきたということか?」

「それに近い」

「近い?」

「魔物の群れが近くにいる……俺達が進む猟師小屋の先に」


 こちらの言葉に、シルヴィは森の方角を見据える。


「……群れか。数は?」

「確認できただけでも結構な数だ。ただ使い魔でざっと確認した程度だから、もっと多いかもしれない」

「魔物の種類は?」

「基本弱い魔物ばっかりだけど、色々と混ざっているな。ソフィア達でも十分対応できるとは思うけど、注意はした方がいいと思う」

「わかった。しかし引き下がるつもりはない……というより、魔物が近くにいるならば駆除するべきだな」

「今のところ、動いている様子がまったくないのが不気味なんだよな……ともかく、気を付けてくれ」


 言い含めた後、俺達は行動を開始する。さて、どうやらゲームのイベント通りには進まないことが確定しているようだが、ここからどういう形になるのか。

 使い魔は猟師小屋の周辺を見回らせているのだが……その時、俺はようやく魔物化した傭兵の姿を捉えることに成功した。どうやら今まで森の奥に隠れていたらしい。


 イベントにより破壊された壁が修理されていることを踏まえれば、時間的には相当経過しているはずだ。となると、それなりに強くなっているかもしれない。

 周辺にいる魔物は、傭兵が従えたのかそれとも他に原因があるのか……色々考えながら森に入った。


 それからしばし歩く……猟師小屋に到達しようかという時に、それは起こった。

 突如、森の中を風が吹き抜ける。攻撃能力の一切ないものだったが――俺達は、あることに気付く。


「……この先にいる野盗からの、威嚇ってところだな」


 クウザが分析。さらにソフィアは、別のことを言及する。


「気配は完全に魔物でしたね……瘴気の影響を受けたということですか」


 言うや否や、三人は駆けだした。俺はそれに追随し――猟師小屋の目の前で、傭兵を発見した。


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