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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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若王の国

 アズアを味方に引き入れ、俺は町へと戻る。レーフィンにその報告を行い、今後の方針について会議を行うことにした。

 時間はその日の夜、またも港……周囲に誰もいないのを確認して、アマリアとレーフィンと共に話を始める。


「ひとまず、次の目標はフェウスか。サラマンダーの住処に近い場所だろうから、いずれにせよ向かう必要はある」

「はい、そうですね」


 俺の言葉にレーフィンは頷く。


「剣の完成を待つ間は、いかがしますか?」

「使い魔を利用して情報収集に終始するよ」

「わかりました……こちらは協力していただくことになったアズア様と話し合いを行い、対策を継続したいと思います」

「ところで、アズア様は?」


 アマリアが訊く。すると俺の肩に子ガルクが出現し、


『現在は別所にいる。いずれ、顔を突き合わせて話をするべきだろうな』

「そうですか。ひとまずは、剣が完成するまでは待機ということですね」


 話し合いは終了。レーフィン達は今後継続して対策を練るということにして、俺達は宿へ戻ることにした。






 方針も決定し、剣が完成するまで町に滞在することになる……その間にソフィアやシルヴィは訓練を行い、クウザも修行と称し周辺の魔物を狩ったりした――彼自身時折こうして戦っているらしい。


 一方の俺は情報収集を行う……五大魔族が二体潰えたためか、人間側も盛り返し始めている。残る三体はまだイベントも発動していないため、動きがない。この辺りはまだまだ先と言っていいのだろうか。


 フィリを始めとした主人公達も、現在五大魔族に関連するイベント近くにはいない。エイナ達もバールクス王国奪還のために動いているわけではない。人間側が反撃に転じ始めたということで、連携を模索し動き回っているようだ。逆にそれがシナリオ本編から逸れることにつながっている。


 他にいる三人の主人公も人間側が盛り返し始めた情勢を見て、行動はしているようだが五大魔族に挑む気配はなし……俺達にとってこれは都合がいい。今後の予定としてはサラマンダーとの契約へ向かい北へ進む。俺は神霊フェウスと会うため。そしてソフィアはサラマンダーとの契約に合わせナテリーア王国のアカデミアへ向かい、自身の能力を強化する――時間が必要なのは間違いないので、よかったと言うべきか。


 さて、情報収集はある程度終わったし、どうするか……そう思い宿の一室で考えていると、部屋を訪ねる人物が。


「ルオン様」


 ノックと共に聞こえたのはソフィア。俺は「どうぞ」と呼び掛け、彼女が入ってくる。

 俺はクウザと同部屋なのだが、現在彼はいないので一人。ソフィアはそれに気付いたか部屋を一瞥した後、俺へと話し掛けた。


「少し、お話が」

「ああ、いいよ」


 俺はテーブルを挟んで向かい合っている椅子を手で示す。彼女は頷き、俺も彼女に合わせ席に着いた。


「それで、話って? 見たところ、あまりよさそうな話題ではないけど」


 どこか深刻な顔をする彼女を見て言及。すると、


「……今後のことについて、話を」

「気になることが?」

「はい」


 頷いた後、ソフィアは改めて口を開いた。


「三体目の精霊とも契約し、さらに剣も……確実に強くなっている実感もありますし、さらに人間側も反撃し始めました。非常に良い傾向だと思います」

「そうだな」

「その中で、私自身がどう動くべきなのかを、少し考えました」

「動くべきって……サラマンダーと契約しに行くんじゃないのか?」

「そのつもりではあるのですが……一つ、寄りたい場所が」


 寄りたい場所――ここで俺は、一つの可能性を頭に思い浮かべながら、言葉を待つ。


「ルオン様は、アラスティン王国のことを知っていますか?」


 やっぱりか――彼女の言う王国は、大陸の中央に存在する小国。とはいえこの国は有名。そして俺自身、しっかりと記憶している国名でもある。


 この国の王は、いずれ南部侵攻に対する盟主となるからだ。


 以前、レーフィンとも話し合った時に話題に出たが……ソフィアから言及が来るとは思わなかった。


「ああ、その国のことは知っている。退魔の力を持つ宝剣を所持する国だからな」

「はい……魔王の侵攻で、懇意にしていた国王が亡くなられたと聞きます。王族で残っているのは、近日中に十五歳を迎える若王のカナンだけ。そして噂では、何やら不穏な動きもあると」


 噂レベルではあるが、確かにアラスティン王国に魔族が攻撃を仕掛けるという話が出ている――実際ゲームではアラスティン王国首都ラハイトを防衛するイベントが生じる。


 俺としてもこの戦いに関与したく思っていて、使い魔で観察をしている。まだゲーム上で見られた兆候はないのだが……シナリオの進捗を考えても、イベントが起こり得る状況にはなっている。


 犠牲を出さないという意味では、攻撃を仕掛ける魔族そのものを事前に倒せばいいのかもしれないが……居所がわからない上、魔王側がさらなる魔族を用意する可能性は高く、そうなれば俺もシナリオの流れが読めなくなるため、非常に危険。それに、このイベントはカナンが宝剣の使い手として覚醒するきっかけにもなる以上、今後のことを考えると止めるべきではない。


「ソフィアはそこへ行きたいと?」

「はい……私自身、まだ姿を現すのはまずいとは思っているのですが……カナンは私にとって弟のような存在。魔族の侵攻があると聞き、非常に危険な状況なのではないかと」


 ソフィアは口を結ぶ。彼女としては自分が行って何ができるのか、という考えも頭に存在しているはず。だが、国が滅んだ彼女としては、同じような悲劇を繰り返したくないと考え、駆けつけたいと思っているのかもしれない。

 このイベントには関わるつもりだったし、同意していいが……そこで俺は、彼女に質問した。


「カナン王と会うのか?」

「……ルオン様自身、まだ私の存在を明かすべきではないと考えているはずですし、私もそう思います。正直、私自身アラスティン王国へ行ってどうするのか頭の整理がついていない状態なのですが……」


 彼女としてはさらなる国の存亡危機。いてもたってもいられなくなったということだろう。

 その気持ちは理解できるし、いずれ国へ向かう様子ではあったので、俺としては構わない――ただ、カナンとソフィアを引き合わせるべきか。ここについては悩むな。


 人間側が反撃し始めた状況だがまだまだ予断を許さない状況だが……内密に話をするのなら問題ないかな? 魔族の中には心を読む存在もいるが、精神抵抗の魔法なので今のソフィアならば対策を立てれば十分いけると思う。問題はカナン側か。彼にどれほどの力が備わっているか――


「……噂が本当なら、一度様子を見に行くべきではあると思う」

「ならば――」

「ああ。北部へ行く途上にある国だし、丁度いいだろう。真っ直ぐ北へ突き進む予定だったが、情報を集めつつそちらへ向かってみることにしよう。ただ、カナン王と会うかどうかは……状況次第だな」

「ありがとうございます」


 綺麗な微笑と共に礼を述べるソフィア。俺もまた笑みを見せ頷き返しつつ……アラスティン王国のイベントについて思い出す。


 これこそ、俺が回避したいと思っていたイベントの一つ……ゲームでは南部侵攻の時と同様、シミュレーション形式で行われる戦いだ。

 難易度そのものは、はっきり言って高くない。基本的に主人公パーティー以外のキャラの配置は決まっているし、なおかつ魔物の戦力もそう高くない。よってクリアする分にはさほど難しくない。


 しかし、問題はここからだ……この戦いを握るのは将軍と二人の騎士。北と東西から攻め寄せる魔物に対し、騎士や兵士を指揮し食い止める役目を担う――騎士二人は戦いの後仲間にすることができるが、この戦いでどちらかが死んでしまい、残った方だけを仲間にできる。つまり、二者択一。


 そして、将軍もまた死んでしまう――そういう戦いだった。


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