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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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事前の準備

「ネレイド……か」


 クウザの発言を受けて、シルヴィが呟く。ソフィアは興味を示した様子。対する俺は、ネレイドの情報を記憶から引っ張り出す。


 ネレイド――この大陸には四大元素以外の精霊も存在し、また最高位と言える神霊もいるわけだが……ウンディーネやシルフといった属性を司る精霊は上級クラスの力を持っているとされ、人間と契約し共に戦うことができる。


 そうした属性の力を持っていない精霊が、ネレイドを始めとした下級精霊――下級、というのはあくまで人間が区別するための言い方であるため、精霊としては「差別するな」と言われそうな気がする。


 ともかく、そうした下級精霊が存在し――設定資料集か何かの話だと、そういう精霊の方が多いはずだが、ゲームではあまりかかわらなかったため、俺もあまり関心を持たなかった。


 ここでそうした精霊とかかわることに意味は……考えていると、ソフィアが口を開いた。


「精霊の住処を脅かしているのなら、対処しなければならないでしょう」


 ――精霊は基本人間とあまりかかわらないように生活しているが、その影響を少なからず受けて人間達は暮らしている。豊穣や大漁などの良いものや天災といった悪いものまで様々だが……この大陸において人の営みに欠かせないものであるのは間違いない。


「洞窟に存在する魔物を倒しましょう。出発は?」

「そちらの都合で合わせていいさ。この町に訪れたのはいつだ?」

「今日ですが」

「なら一日くらい空けるか?」

「いえ、私達は平気です……ルオン様とシルヴィさんは?」

「俺は平気」

「ボクも大丈夫」

「なら、決まりだな」


 クウザは述べると、俺達に背を向けた。


「明朝、町東の入口で待っているからなー」


 そう言い残し彼は去った……直後、シルヴィが肩をすくめる。


「相変わらずだな。ま、元気そうで何よりだが」

「そうか……ところで二人とも、武器は当然間に合わないわけだけど」

「精霊の住処が危機に陥っている以上、すぐにでも向かうべきです」


 これはソフィアの言。やる気満々の様子なので、俺はこれ以上何も語らないことにした。






 ――その夜。


 明日にはクウザと共に海岸線にある洞窟へ行くことになるのだが……俺の方は水王アズアについての居所も探らないといけない。その辺りの打ち合わせを町に到着した夜にしようとレーフィン達と決めていた。


 場所は町にある港。深夜であるため人の気配もまったくない。ただ波の音だけが周囲に響いている。


「お待たせしました」


 レーフィンの声。首を向けると、彼女とさらにアマリアがいた。


「ソフィア達には何て言ったんだ?」

「海の様子を見てくると。そちらに魔物の気配がないかを確かめるということで」

「なるほど……で、実際はどうなんだ?」

「昼間、クウザ様が語っていた通り魔物の質が上がっている以上、それなりに海からも気配がします。ですが、この町を襲うようなものではなさそうです」


 一応、クウザと別れて以降町の周辺に関する情報収集は行った。漁師などにも聞き込みをしてみたが、特段変わったことはないとのこと。


「相手も、南部侵攻のために少しずつ何か仕込んでいる可能性はありそうだけど」

「否定はできませんね。とはいえ現状では目に見えるような形で何かがあるというわけではないようです」


 南部侵攻はまだまだ先ということだろうか――いや、五大魔族は既に二体滅んでいる。魔王もそうした事態を重く受け止めさらなる侵略の準備を行っている可能性は十分ある。


「ただ今はとりあえず大丈夫ということ……で、アマリア。頼むよ」

「うん」


 俺の言葉にアマリアは返事をした後、海へと近づく。次いで両手を左右に広げ――その手先から、水を生み出した。

 それがやがて形を成し、おもちゃの人形くらいのサイズを持つ、彼女を模した使い魔が多数出現。


「私の分身を海に放ち、アズア様の住処を探す」


 語ったアマリアは、俺へと首を向ける。


「精霊である私なら、分身であってもその居場所を探し出すことができる……海中でも、私ならば海水を通して発する魔力がわかるから」

「どのくらいかかりそうだ?」

「近い場所ならば明日にも結果は出ると思う。見つかるまでは毎日今日のようにここに集まることにしていい?」

「構わないよ」


 これでやることは完了……帰ろうかと思った矢先、レーフィンから声が。


「ルオン様、クウザ様についてですけど」

「ああ」

「今回、共に戦うということは理解できましたが、その後はどうしますか?」


 ……仲間にするかどうかという話だろうな。俺が後衛をやっているので、彼が加われば前衛後衛が二人ずつ。バランスとして魔法使い系の仲間が欲しいのは事実なので、仲間にするのもありと言えばありかもしれない。


 ただ、予期せぬ遭遇だったため、正直考えがまとまっていないのが実状。今回共に戦うことを利用して『三強』通りの強さを持っているかどうかを見て判断してもいいか。


「その辺りは考え中だな。ソフィアやシルヴィとも相談しないといけないし」

「確かにそうですね。私達はその辺りについてはルオン様達にお任せしますので」

「わかった」


 話し合いは終了。俺は宿へ戻ることにした。






 翌日、俺達はクウザが指定した町の東へと赴いた。そこに既に待っていた彼。俺達を見て口の端を小さく歪め、笑みを見せる。


「さあて、行こうか」


 杖を肩に担ぎ、歩き出す。その威風堂々とした佇まいは、古強者の戦士という印象さえ与えてくる。その隣にシルヴィが赴き、会話を始める。俺とソフィアはその後方を歩く。


 しかし、武器を得るために訪れた町で『三強』とかかわり精霊のために一肌脱ぐことになるとは……そう考えた時、俺はふと思うところがあった。


 そういえば、これから行く場所には精霊がいるわけだが――


「……ソフィア」

「何でしょうか」

「レーフィンを呼べるか?」

「呼びましたか?」


 レーフィンが現れる。ここで一つ質問。


「大陸の色んな場所に精霊がいるわけだが……そうした精霊達は、魔族と戦う能力というのは保有しているのか?」

「……人間と契約できる私達と比べれば劣りますが、対応能力はあるでしょう。今回のネレイドもおそらくは」

「そういった精霊と、何かしら協力関係を結ぶことは?」

「可能でしょう。というより、アマリアを通じてそうした話をするべきでしょうね」


 様々な精霊の力を借りる……今回の戦いはそうしたきっかけの一つとなるように思える。ただ契約できるような存在ではないので、どういう形で協力をしてもらうかは考えないといけないけれど。


「しかし、疑問ですね」


 ここでソフィアが口を開いた。


「昨日情報収集した段階では、魔物達は海岸線の洞窟以外に目に見えた活動がないのが変です。本来なら、町へ襲い掛かってもよさそうなのに」

「こちらを狙わないのは、精霊の方に注力しているからかもね」


 俺達の話を聞いていたのか、クウザが話し始める。


「精霊達の行動を抑えることが狙いなのかもしれない」

「ボクとしては、南部の海を制圧するための行動のように思えるけど」


 クウザに続き、シルヴィが言う。


「確実に言えることは、南部は魔物や魔族の影響が少ない。しかし知らず知らずのうちに色々と行動しているということ」

「そうかもしれませんね。その中で、精霊を狙っている」

「海の精霊なら、当然海中の様子などを敏感に感じ取るはず」


 ここで俺が口を開いた。


「そうした能力を厄介と考え、精霊に干渉しているのかもしれないな」

「だとしたら、早急にやめさせないといけませんね」


 ソフィアの言葉にシルヴィやクウザは頷いた。俺もまた同意を示し――やがて、目的地の洞窟へと到着した。


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