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賢者の剣  作者: 陽山純樹
神霊の力

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南部の町

 翌日、ソフィアやシルヴィに今後の方針を伝え、さらに南へ行くことになった。


 このまま進むと海へ到達する。俺達が目指しているのは海岸線に作られた町なので、必然的に海を見ることになる。ちなみにソフィアもシルヴィも海は見たことがあるとのこと。俺も転生して何度か町を訪れたことはあるので、特に珍しいものではない。


 ソフィア達の目的は、新たな武器……戦いに備え剣を手に入れる。


 今後さらに戦いは激しいものとなるのは間違いない。五大魔族との戦いに加え、バールクス王国奪還のイベントなどにも遭遇する可能性がある。そうした戦いを見据え武器を今のうちに手に入れておくというわけだ。


 大陸南部にあるその町の鍛冶師に頼むというのは、ゲームでも存在していた人物だからというのがまず一番にある。無論、ゲーム上に存在しなかった有名な鍛冶師だっているのだが、今から訪れる場所は噂もあるし、ベストだろうというのが俺の結論だ。

 そして、剣を生み出す間に俺はアズアとの戦いを……南部でやることは、それで全て終了するだろう。


「武器を手に入れるわけだが……当てというのはあるのか?」


 町へと進む間にシルヴィが問い掛けてくる。俺は「もちろん」と答え、


「利用したことはないけれど、色々と戦士の話を聞いて名前が出てくる人物を知っている」


 というわけで俺達は旅を続ける。途中魔法によって旅程を削減しつつ――特に問題もなく、順調に俺達は目的地へと進んだ。






 ウンディーネのいた森からさらに南――とうとう辿り着いた場所は、風光明媚な海岸線に存在する町だった。


「綺麗ですね」


 ソフィアが感想を漏らす……転生前にも観光を目的とした海岸沿いの町というのは色々あった。俺は海外なんて行った経験もなかったから、基本写真とか映像でそういうのを見たくらいなのだが……ここはそうした美麗さを思い出すほどの場所だった。

 色とりどりの建物に加え、山を削って造られた町。一応警備のために兵士などが多くいるが、町の空気がどこか心を穏やかにさせる。


 俺達はひとしきり眺めた後、町へと入る。ちなみに名前はルナレート。観光客も多いこの場所は南部の町ということで魔族の影響も薄く、歩く人も平和を享受している。とはいえ避難している人もいるのか、ずいぶんと人が多い。


「さて、早速鍛冶師のところに行くか」

「はい。場所は?」

「通りに存在しているって話だから、歩いていたら見つかるだろ」


 俺はソフィアに答えつつ先頭を歩きどんどん進む。少しして見つかったその場所は、通りの中心部に程近い場所だった。

 場所などはゲームとまったく同じ。俺は確信を持って中へと入る


「ごめんください」


 店内へと入る。直後、カンカンという鉄を打つ音が聞こえてきた。


「いらっしゃいませ」


 その音と共に受付へと顔を出したのは眼鏡をかけた三十代くらいの女性で、エプロン姿がとてもよく似合う。


「剣をお求めですか?」

「俺ではなくて、後ろの二人を」


 ソフィアとシルヴィを指差す。するとそこで女性は頷き、


「わかりました。ただ二人分となると少々時間を頂くことになるかと」

「順番待ちとか、そういうことはありますか?」


 そこそこ有名であるため予約でいっぱいという可能性も危惧していたのだが――


「今のところは大丈夫ですよ。すぐに作成に取り掛かることができます」


 ラッキーだ。俺はすかさず依頼を行う。そこで鉄を打つ音が鳴りやみ、奥から男性が出てくる。


「いらっしゃい」


 ややぶっきらぼうな言い方の男性は、女性と同じくらいの年齢でちょっとヒゲが伸びる黒髪の男性。そういえば鍛冶師と言えどゲームでは名前が出てこなかったな。

 女性――たぶん鍛冶師の奥さんだと思うが、彼女が男性へと俺達の要望を話す。すると彼は頷き、


「お安い御用だ……それじゃあちょっとばかり検査させてもらうぞ」

「検査?」


 ソフィアが聞き返す。対して女性が声を上げた。


「お二方とも、魔力を相当所持しているご様子。さらにあなたは精霊契約者でしょう?」

「え、はい。そうです」


 あっさりと看破され、ソフィアは驚いた様子。それもそのはずで――


「そうした方々に武器を提供するには、その方に合わせたやり方が必要なのです……その検査は私がやります。こう見えても私は、アカデミアを卒業した魔法使いなんですよ」


 彼女の存在がいるため、ここでは魔法剣の作成もできる。ソフィアは感心したように「なるほど」と声を上げ、俺がここに連れてきた理由を悟ったようだ。

 二人は奥へと通される。魔力などを検査し、それに基づいて夫婦が武器を作成する……俺はどうするかと思っていると、男性が話し掛けてきた。


「俺はガナック=バロント。そっちは?」

「ルオン=マディンです」


 握手をする。ガナックは握手をやめた直後、俺へと話し掛ける。


「見たところ、単なる冒険者って感じじゃねえな」


 その言葉に俺は小さく頷き、


「色々理由があり……銀髪の女性を従者にして旅を」

「ここに来たのは、剣を求めにか?」

「そんなところです。精霊と契約し、合わせてここを訪れました」

「そういう奴は最近多くなったな」


 頭をガリガリかきながら話すガナック。ここで俺は質問してみた。


「ここにも、魔王侵攻の影響が?」

「そりゃあもちろん。避難民の存在も大きいが、何よりお前さん方みたいな剣士の来訪も多くなった」


 語ると、彼は自嘲的なため息を漏らした。


「ここの話を聞いて剣を求めに来るのは嬉しいが、魔物と戦うためということだと、内心複雑でね」


 それはそうだろう。忙しいということは、魔族との戦いが続いていることを意味しているわけだから。


「この辺りに影響は?」

「魔族が来たっていう話はないな。ただ町から少し行ったところにある海岸線の洞窟とかに魔物が住みついていたりする。町の人間の中には危惧している者もいるな」


 そこまで語ると、ガナックは思い出したかのように「あっ」と声を上げる。


「そういや、その洞窟の魔物を退治するとか、誰かが依頼を受けたらしいぞ。詳細は知らないが」

「依頼、ですか」


 俺は少し考えてみる。ふむ、ゲーム上で海岸線の洞窟なんて場所はなかった。ということはゲームの枠を外れた話である。


「興味があるのか?」


 ガナックが訊いてくる。俺は小さく肩をすくめ、


「まあ、それなりに」

「その人は仲間を探しているらしいから、ギルドにいるかもしれないぜ」


 ガナックの言葉に「考えておきます」と伝え、店内を見渡す。その時ソフィアとシルヴィが戻ってくる。奥さんからの説明によると二人の魔力調査は一日かかり、そこから剣を生み出すのにまた時間がかかるとのこと。


「普通の鍛冶と違うため、素材次第で期間は変わる」

「素材をこちらから提供するというのは?」


 問い掛けると、ガナックは「構わない」と答えた。


 今後魔族との戦いに使う以上、相応の素材が必要となるだろう。なら、答えは一つ……ということで、俺は召喚魔法により収納箱を呼び出す。ガナックや奥さんが驚く中で取り出したのは――


「これならどうです?」

「……ほう、またずいぶん面白い物を持っているな」


 ガナックが言う。奥さんも興味深そうにそれを見据えている。


 俺が取り出した物。それはこの世界における特殊な金属。退魔性の力を秘めた『霊鋼』と呼ばれるものだった。


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