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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者
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落ち度

 攻撃は、成功した……そして、星神の力が目に見えて減ったと俺は直感する。


『なるほど、そういうことか……!』


 全てを悟ったかのように、星神は叫んだ。


 俺達が放った一撃は、正確に星神の核……目の前の漆黒の存在が保有している核を傷つけた。これまではただ単純に星神が形成した器を直接斬っていたが、今のは違う。俺達の剣先に宿っていた魔力が槍のように鋭くなって器の内側にまで攻撃が届いた。

 俺とソフィアがこれまで得てきた技術と力。それに共鳴の効果が加わることで……例え巨大な光を成していても確実に核まで到達でき、なおかつ十分な威力を備えた一撃を叩き込めるようになった。


 結果、俺達の技は星神を傷つけ……滅ぼすだけの力を得たのだと確信できた。


『ああ、単純な力だけではない……この体の奥底に届く技術と力……これこそ切り札だったというわけか』


 星神は距離を置く。その時、周囲にいた魔物が吠えた。いまだ仲間達が優勢の中で……状況が変化する。


『攻撃を食らって始めて実感したぞ、この体に眠る理性……自我は、心のどこかで感じていた。驚異的な人間であり、間違いなくその力は星神に届く。だが、滅ぼせるとは思えない。絶対的で膨大な力の前に、屈するだろうと』

「けれど予想は外れた……そうだな?」

『その通り。だからこそ、認めなければならない』


 純白の平原が鳴動する。次いで白銀の魔物の魔力が高まる。


『舐めていたとは違う……が、星神という存在全てを使って、対抗しなければならない。食うか食われるか……そういう勝負だ』

「お前は俺が滅ぼす」


 その言葉に星神は顔を歪ませる。笑みを浮かべる余裕すらない。なぜなら俺とソフィアは文字通り、滅ぼせるだけの力を得たのだ。


『ならば――』


 星神の力が引き上がる。純白の平原が軋むような音を上げ、魔物がさらに出現する。


『全力を持って迎え撃とう!』


 星神が発した力は、まさしく限界……そう呼べるのではないかというほどのもの。形成された平原そのものが崩壊するのではと考えてしまうほどの魔力……俺とソフィアは周囲の状況を探りつつも星神から目を離さなかった。

 憤怒の形相すら見せる星神を目の前にして、俺達は……と、ここでさらなる変化が。突如鳴動が収まったかと思うと、平原は穏やかな姿に変えた。


『……何?』


 そしてどうやらこれは星神にとって予想外の出来事だったらしい。力を放出する際に何かあったのか……と最初思ったが、どうやら仕掛けを施したのは仲間だった。


「ようやく出番のようじゃな」


 アナスタシアの声だった。


「天使や精霊が頑張っている中で、竜はあまり活躍できなかったからな。ここで鬱憤を晴らさせてもらうとするか」

「魔族は入らないのか?」


 と、横にいるエーメルからの質問が飛んだ。すると、


「そちらは今から大暴れする気じゃろう?」

「うん、正解」

「まったく……さて、星神。貴様はどうやら核の力を使うことで星神全体の魔力を動かし、戦場へ放とうとした。結果、大量の魔物が生まれさらにルオン殿達へと攻撃し……というのが目論見じゃっただろう」

『何をした?』

「自我が存在し、理性を成す……それには人の器を模さなければならぬ。そこに貴様の致命的な落ち度が存在する」


 俺は一瞬だけ振り返りアナスタシアを見た。彼女はユスカやカトラに守られた状態で、片膝をついて右手を地面に押し当てていた。


「此度の戦いを通して確信した……星神は地上に出れば破壊の限りを尽くす。じゃが、その際に理性などは消し飛んでしまう……膨大な力の前には、思考など無意味ということじゃな。ルオン殿を取り込んで維持できるかどうかも、不明じゃな」

『何が言いたい?』


 怒気を発しながら問い返す星神に対し、アナスタシアは尋ねる。


『理性を持っているが故に、一度に放出できる星神の力には限界があるということじゃろう?』


 ……沈黙が生じた。けれど俺はアナスタシアの発言を受けて合点がいった。

 目の前にいる星神は精神を有し自我を確立している。それが人間のまねごとであったとしても、自らが思慮し考えるのは間違いない。だがそれを維持するには……力を放出した場合は砕け散ってしまう。つまり、アナスタシアが言ったとおり意思を消し飛ばさないレベルでの放出しかできない。


「無論、先ほど宣言と共に発した力は人においては膨大じゃよ。いや、竜にとっても、あるいは天使にとっても同じこと……しかし、あの力の規模であれば介入することができる」

『介入、だと!?』

「といっても力を奪うことなどできんよ。元々、星神の意思が消えた際、暴走するのを防ぐために用意した術式……氾濫する河川を整え、流れを一定にするのと同じように、魔力の流れを作り制御する……そういう魔法じゃ。今さっき放出したくらいの力であれば、用意した術式によって容易く抑え込める――」


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