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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者
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白銀の魔物

 俺達が動き出した矢先、白銀の魔物達もまた一斉に動き出した。一方で漆黒の男性だけは――星神だけは動かない。まずは小手調べ……微笑を浮かべる相手の顔から、そんな感情さえ読み取れた。

 ならば、まずは目前の敵を……先陣を切ったのはアルトとキャルン。二人は持ちうる力をフルに活用して、剣戟を放った。アルトは渾身の横薙ぎで、キャルンは短剣を活かした突撃。同時、二人の攻撃が白銀の魔物とぶつかり……魔物を吹き飛ばすことに成功した。


 すかさず後続の面々が交戦を始め、今度はリーゼのハルバードが複数体の魔物を吹き飛ばす光景が見えた。魔物の数は相当多いが、今の俺達ならば……修行を経た俺達ならば、対抗できる。この場にいる仲間達は全員が一騎当千の実力を持つに至っており、その力によってまさしく戦場となったこの空間を制圧し始めた。


『……さすがに、この程度では無理か』


 ここで星神から声が聞こえた。俺はまだ魔法により剣を生み出していない……仲間達が敵を倒す光景を、じっと見据える。


『とはいえ、その勢いがいつまで続く?』


 星神は指をパチン、と鳴らした。それと同時に白銀の光が集まり、さらなる魔物が出現する。


 ――この場所が星神の核の内側であるなら、内に抱える魔力は膨大だ。人間などと比べることすら愚かなほど、途轍もない量を抱えているはずであり、その力によって生み出される魔物は、まさしく無尽蔵だろう。

 このまま魔物と戦い続けても意味はない。一刻も早く星神の核を破壊しなければ……問題は漆黒の衣服を着るあの存在が星神本体なのだろうか、ということ。俺は気配を探りながら思考する。真正面で最終決戦が始まっている。しかしこれは単純な力押しでもない。相手の策を読まなければ、勝てない――


『大いに悩め人間。とはいえ残念だが勝敗は決まっている』


 星神が言う。だが俺は無視して意識を集中させ、感覚を研ぎ澄ませる。

 目前に見える黒い存在から発せられる気配は、白銀の平原にいるどの魔物よりも遙かに巨大だ。その身の内にどれほどの力が備わっているのか……先ほど容易く魔物を生み出せたように、少なくとも星神の力を自在に操れるだけの権限を持ち合わせているのは事実だ。


 ではあれが星神本体なのだろうか? そこについてはわからない。


「ガルク、あれが星神の本体か? それとも、他にいるのか?」

『……この空間に取り囲まれるより前に確認した星神の本体……球体にある魔力量と比較すれば、その量は少ない。ただ、この空間が球体の内側だとすれば、外殻を除いた核の部分……それが集結しているという可能性は否定できない』

「可能性はあるけど、確証は持てないというわけだな」

『とはいえ、まずは目先にいるあの存在を打ち破るほかないだろうな。どちらにせよ、この空間を打破しなければならない以上は』


 会話の間に戦況は変化していく。前線を支える仲間達は相変わらず魔物を倒し続けており……そこにクウザやカティといった面々の魔法が加わった。練り込まれた魔力によって打ち出される彼らの魔法は、容易く白銀の魔物を撃ち抜いていく。中級クラスの魔法であれば一撃であり、魔法もまた決定打になるのだと認識させられる。

 とはいえ現状はあくまで魔物を倒せるだけだ。出現し続ける敵を倒せるのはいいが、圧倒しているだけでは解決しない。こちらも動く必要がある。


「……ガルク、まだ敵が本気を出していないにしろ、この状況を突破するには」

『うむ、ルオン殿の力も必要だろう』


 俺はソフィアへ視線を移す。彼女もまた動いてはおらず、事の推移を見守っているが……こちらの視線に気付くと首を向け、小さく頷いた。

 俺はそれで決心し、仲間へ号令を出す。


「あの漆黒の男を仕留める! 道を作ってくれ!」


 その言葉に呼応するように仲間達が動き出す。同時、男は手を振りさらに魔物を生み出して始めた。

 対する仲間達は魔物を倒すペースがさらに増す……ここで俺とソフィアは走り始めた。その狙いは漆黒の存在。ソフィアは剣を抜き放ち、その一方で俺はまだ魔法剣を生み出すことはせず……ただひたすらに星神と視線を合わせる。


 そこで、神霊が動いた。フェウスの炎が一気に魔物を舐め回すと、敵が相次いで消滅していく。さらにアズアも呼応するように魔法を発動させ、白銀の空間において対極とも言える闇の魔法が炸裂した。

 神霊達の攻撃によって、道が大きく開かれる。それに続き仲間達がダメ押しの攻勢を仕掛けたことで、とうとう星神への道ができた。


 俺とソフィアはさらに疾駆する。襲い掛かる魔物を置き去りにする勢いで相手へ肉薄。その間に星神もまた剣を生み出し対抗する意思を示す。

 そこで俺は魔法剣を生成する。それは金色の剣……星神を打ち砕くために用意された、切り札であった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 実際仲間達って今どのくらいの強さなんだろう 以前戦った魔王ぐらいならもう余裕で戦えちゃうんかな
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