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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者
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最終決戦

「正直、ユスカやカトラについては問題ないと思うけど……アナスタシアは大丈夫なのか?」

「不安になるのもわかるが、こちらが用意した方策はわしが自ら使うものじゃからな」

「……本当に、大丈夫か?」

「星神の力はわしも認識しておる。引き際もちゃんと考えている故、心配するな」


 ……俺は黙って頷いた。そこまで言うのであれば、止める手立てはない。

 俺は次に横にいる魔族――エーメルへ視線を移す。彼女もまた、この拠点では天使と共に防衛を任せていたのだが、


「……戦いたくてうずうずしている様子だな」

「バレたか」


 というか、ソワソワしている様子を隠そうともしていない……。


「俺がここまで防衛側を頼んでいたのは、喜び勇んで突っ込むのを防ぐためだぞ」

「それがわかっていたから、ここまで辛抱してきたぞ」


 ……胸を張って言うようなことではない。あれだな、褒めてくれと主張しているような気さえしてくるな。


「まったく……最後の最後になってしまったわけだが、ここからはもうリミッターは外してもらって構わない。存分にやってくれ」

「そうさせてもらう」

「ただし、死にに行くような行動はやめてくれよ」


 エーメルは笑う……どうなるかわからないという雰囲気ではあるのだが、彼女だってさすがに無理はしない……と思う。正直、不安感は拭えないけど。


「そう心配しないでも大丈夫」


 エーメルは言い……俺は渋々頷いた。そんなこちらの態度に彼女は最後まで苦笑していた。

 次に視線を移したのは……幻獣ジン。ちなみに幻獣テラはデヴァルスの配下と共に防衛に回ってもらっている。


「そちらは……問題なさそうだな」

「幻獣を代表して、参加させてもらう。どこまで役に立てるかは未知数だが、勝利に貢献できるよう全力を尽くす」


 そうしたシンプルな言葉に俺は頷き返し、さらに横へ視線を向けると……神霊フェウスとアズア、人間バージョンが立っていた。


「今回は人間の姿で参加を?」

「地下だし、元の姿で活動は厳しいでしょう」


 フェウスが返答……確かに、狭そうだもんな。


「場合によっては元の姿に戻って対応するわ」

「そうか……ガルクについては――」

『我の本体は地上で星神の状況を観察する』


 と、俺の肩に子ガルクが出現、本体は……どうやら拠点の外にいるらしい。


『ルオン殿達が踏み込んでいる間に、地上で動きがある……という可能性も否定できないため、我はそれを観察する。分体については今まで通りだ』

「わかった……さて、突入する面々の状態も確認できた。それじゃあ――入るか」


 魔王城へ目を向ける。そして俺達は、ゆっくりとした足取りで歩き始めた。






 ゴゴゴ……と、ずいぶんと重い音を上げながら俺達は魔王城の扉を開ける。中は暗闇で、俺達は魔法の明かりを生み出して先へと進んでいく。

 やがて以前調査した時と同じ姿で、地下への扉が現れた……結局、鍵を捜索したけれど見つけることはできなかったため、強引に押し通ることとなった。


「魔王が持っていたのかもしれないな……」


 俺の呟きに対し、ソフィアなどは小さく頷いた。

 そういえば、リーゼと見た平行世界における出来事。そこでは星神を打倒していた世界もあったわけだが、おそらくあの世界の俺はこの扉を抜けて戦ったはずだ。


 その場合、鍵は……魔王との戦いで手に入れたか、あるいは魔王が残していたのか……戦いの経過を全て見ることはできなかったし、どういう経緯で決戦にまでたどり着けたのかは判然としないけど……まあ、ここは考えても仕方がない。


「ソフィア」

「はい」


 名を呼ぶと彼女は一歩進み出る。俺と彼女の力によって、扉を強引に突破する。

 目前で改めて観察すると、相当強固であるのがわかる……魔王城そのものも頑丈に作られているはずだが、この扉はそれに輪を掛けて特別……とはいえ、今の俺達ならば問題なく破壊できる。


 剣に力を集めると、俺とソフィアは同時に剣を一閃した。途端、扉に斬撃が走り……派手な音を上げて、破壊された。

 ……こうして扉そのものを壊したのは、決意表明の意味合いもある。この状態で放置すれば、星神はここを経由して地上に出てくるだろう。俺達はそれを防ぐため……すなわち、星神との決着を果たすまで、絶対に戦い続ける。


「問題は、俺達の無視して星神が地上に出ることだけど」

「それを防ぐのがガルクやデヴァルスになる」


 と、フェウスが解説を入れた。その通りだと俺は頷きつつ、仲間へ先へ進むよう促す。


 決戦――幾度となく、大きな戦いはあった。その度に覚悟を決め、俺達は戦場へ向かったが……今回は、本当の最終決戦だ。

 破壊した扉を越えると、明らかに魔力が違っていた。扉そのものがこの魔力を遮断していたのだろう。先には下り階段が存在し、俺達はそれをゆっくりと歩んでいく……階下から感じられるのは莫大な魔力。俺はそれを身に受けながら、無言のまま進み続けた。



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