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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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自動防御

 俺が仲間に声を発した直後、いち早く動いたのはソフィアだった。手に持っている神霊の剣へと魔力を注ぎ、それに反応した魔物は視線を彼女へ向けた。

 魔物が迫る。様々な形を持っている魔物達の中で、特に厄介なのは剣を握っている魔物だろうか。技術による勝負の場合でどう転ぶかわからない。これほど異形にまで変化している以上、元々冒険者が持っていた技量に星神は何かしらプラスしているはずだ。


 となれば、迂闊に攻めると……魔物が剣を振る。それにソフィアは、真正面から挑んだ。


「やああっ――!!」


 裂帛一閃。渾身の一振りと魔物の剣が激突し――勝敗は、魔物が大きくのけぞった。ソフィアの勝ちだ。

 確かに脅威ではあるし、その技量についても底が知れないため警戒に値するわけだが、それでもソフィアは応じ、見事捻じ伏せた。修行の成果……かつ、彼女の目には魔物の能力をすかさず判断するだけの能力が備わっている。


 相手が持つ魔力だけではなく、剣や腕に収束している魔力量など……それを瞬時に判断して対抗できる手段が今のソフィアにはある。俺は彼女の戦いぶりから問題ないと判断し、並び立つようにして足を前に出した。

 それに反応したのは――新たな魔物。獅子を模したような見た目をしているそれは、どうやら標的を俺にしたらしい。頭部を向け……こちらへ迫る。


 獅子をモチーフにしているためか、その動きは恐ろしいほど俊敏だった。こちらが迎撃しようと構えた時には、既に肉薄しようとしていた。元人間とは思えない驚異的な身体能力……だが、俺はその動きを全て見切り、反撃に転じる。

 飛び込んでくる魔物の横をすり抜けるように移動し、すれ違いざまに一閃。それで魔物の身体は大きく抉られ……だが、一撃とはいかない。


「防御能力がずいぶんと高いな」

『というより瞬時に防御している』


 俺の呟きに対しガルクはそうコメントした。


『ルオン殿の刃が入った瞬間、魔物の皮膚に変化があった』

「それで攻撃を防ぐのか」

『星神が仕様を作り上げたのだろうな』

「異形に変化したのだって星神の仕業なんだ。魔物の特性も全部決めていると思った方がよさそうだな」

「――はああっ!」


 会話をする間に一際声を上げる人物が。それはエイナであり、彼女は別の魔物――狼を模した魔物と交戦していた。

 首を狙い噛みつこうとする魔物にエイナは避けながら剣戟を浴びせる。俺が戦う獅子の魔物と同様に耐性があるらしいが……彼女は連撃を繰り出すことで確実に魔物へダメージを与えていた。


 それだけでなく、彼女の攻撃によってその特性が浮き彫りになっていく……魔力の流れを感じ取るに、こちらの魔力に合わせて皮膚が変化する……魔物の意思で変化しているのか、それとも自動反応しているのかは不明だが、攻撃を受ける瞬間強化が施されるらしい。

 常時強化ではなく瞬間強化である点は、おそらくその防御が長く持続しないことに起因しているのだろう……魔力収束は一瞬ではあるが相当な魔力を消費している。それを常時使い続けるのは困難、というわけだ。


「俺達の攻撃を、こういう風に防ぐとは……」

『ルオン殿、どうする?』

「とはいえ、このくらいは対応できる……いけるな?」


 仲間達に問い掛けると全員が頷く。そして先陣を切ったのはソフィア。人型の魔物と相対し、今度は魔力をさらに高めて間合いを詰める。

 魔物の方もそれに応じるように魔力を高める……まず双方の剣が激突。だが次の瞬間、魔物が持っていた剣にヒビが入った。


 そのまま振り抜けば剣を破壊できる……雰囲気だったが魔物は即座に後退を選択。異形に変化したことで理性など失っているようにも見えるが、どうやら戦術的な判断はできるらしい。

 けれどソフィアは前進する。一歩で踏み込み追撃を仕掛けると、魔物は追いすがる彼女に対し防御の構えに入り、全身の魔力を高める。先ほど見せた防御とは異なり、魔力障壁のように全身を固め、どこへ剣を叩き込まれても即座に防ぐ……そういう目論見のようだ。


 けれど、相手はソフィア。俺は真正面にいる獅子の魔物へ目を向けつつ、ソフィアの戦いぶりを観察する。防御しようとする相手の動きをソフィアはしっかりと捉えていたはずだが、それでも方針は変わらない。魔力を高め、神霊の剣へと注ぎ――回避できぬと判断した魔物は、さらに魔力を高めた。


 ソフィアの剣が魔物の体躯へ入る寸前――その軌道を察した魔物が斬撃に触れる場所へ魔力を集中させたのがわかった。全身を守る魔力は維持しているので、接近する刃の魔力に反応して自動発動している。こんな特性、今までになかったはずだが……もしかすると星神は、俺達が決戦を挑む準備として、こういう特性を開発したのかもしれない。

 あるいは、まだ別の何かが……? そんな考えを抱く間にソフィアの剣が魔物と激突し……防御をものともせず、その体を両断した。


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