表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1054/1082

力の変質

 ――翌朝、俺達は日が昇り始めた段階で活動を開始した。


「相手は人間である以上、さすがに首をはねて終わり……というのは、さすがにまずい」


 敵だし、戦争をしているも同然であるのは間違いないわけだが――


「ただ、その辺りの方策については……」

「手は打ちました。皆さんは捕縛をお願いします」


 ソフィアが言う。本来ならば容赦なく……というのがベストなんだろうけど、相手から情報を得たいという思惑もあるので、


「わかった。俺達は全員とっ捕まえて魔法を使い拘束する……で、いいんだな?」

「はい」

「……それじゃあ動くとしよう。リーゼ、そちらは任せた」

「ええ」


 頷いたリーゼ。彼女と共に随伴するのは、アルト、フィリ、ラディ……といった賢者の血筋。オルディアやロミルダもいて、盤石といった状況。なおかつ、それぞれがともに行動していた仲間も随伴している。

 一方で俺とソフィアが行動を共にするのはエイナに加えてクウザやシルヴィといった、共に行動していた仲間。ユスカやカトラなど他大陸のメンバーもいるがこちらの方が少人数。


「さて、それじゃあ……拠点を出たら一目散に動く。そこからは時間との勝負だ。どれだけの速度で敵の拠点へ向かえるか……そこが決め手になる」

「ま、基本的にルオンさん達が先導すればいいだろ」


 と、クウザは苦笑しながら口を開いた。


「そもそも二人には誰も追いつけない」

「……実質、俺達が先行してクウザ達は後詰めという形になりそうだな」

「そういうこと。敵の出方によってこちらは立ち回りを変えるさ」

「了解……それじゃあ、行くとしようか」


 俺達が北でリーゼ達は南。彼女の方も戦い方は俺達と同じらしく、賢者の血筋を持つメンバーで先行して、他の仲間が後詰めをするという形になるだろう。状況は常に使い魔で観察することにして……、


「ガルク、そちらも準備はいいな?」

『うむ、問題ない』


 ガルクには敵の動きを観測してもらう役割を頼んでいる……というわけで準備はできた――


「作戦、開始!」


 俺が号令を告げた瞬間、俺達は弾かれたように動き出す。門から出て俺達は北、リーゼ達は南へと急行する。

 俺とソフィアは魔力を高めて一気に森の中を突き進む。そして同時のタイミングで『バードソア』を使用。次の瞬間、俺達は木々の間を縫うように魔法によって駆け抜ける。


 それは敵にすぐ伝わったらしく、


『ルオン殿、動きがあった。こちらが向かってくるとのことで、迎撃態勢に入った』


 どうやら戦う気があるらしい……作戦的には失敗しているはずだが、星神からの指示もある以上は退却することはできないというわけだ。ならばと俺はさらに速度を上げる。呼応するようにソフィアもまた速度を引き上げ――瞬く間に敵の拠点へと肉薄した。

 それは平行世界の『ソフィア』達がいたのと同様の見た目をした拠点。それを見て俺は察した。先日戦った『ソフィア』達の拠点は彼らが用意したものなのだと。


 俺は入口付近で魔法を解除する。同時、敵が向かってきた。その得物は剣や槍、様々ではあるが統一感がない。その見た目も全員が冒険者風ではあるのだが、中にはずいぶん真新しい装備をまとっている人物もいて、戦士でも新参な人もいる様子。

 正直、連帯感があるとは思えない者達。星神の力を信奉し、それによって集った者達。こちらとしては連携されなければ烏合の衆と言っても差し支えないかもしれないが――


「……あ?」


 その時、異変が起こった。剣を構え俺へ挑もうとした剣士の一人が声を上げたかと思うと――突如、悲鳴を上げた。


「なっ……!?」

「おいどうした……!?」


 そして周囲にいる人間が口々に叫ぶ。それに対しこちらも驚いて立ち止まった。まさか交戦するより前に――


『ルオン殿! 注意しろ!』


 だがそれに対しガルクの反応は真逆であった。悲鳴を上げた相手に向けて最大限の警戒をしている。

 というより、その悲鳴で星神の狙いがわかったらしく――


『そういうことか、これは……!』

「ガルク、一体何が――」


 問い掛けをしようとした瞬間だった。今度は別の人間が悲鳴を上げ始め……いや、それどころではない。拠点にいた者達が、何事か声を上げ始めたのだ。


「何だ、これは……!?」


 俺もさすがに驚愕し、剣を構えることを忘れるほどの光景。するとガルクが、


『ルオン殿、これは罠だ』

「罠……!?」

『といっても、拠点に仕掛けがあるわけではない。その対象はここへ集められた者達。ただ星神から力を得たくて来た者達……それはどうやら――』


 解説がなされようとした瞬間、突如最初に悲鳴を上げた剣士の体から、漆黒のもやみたいなものが出始めた。俺は瞠目し、ソフィアと共に大きく後退する。


「これは……」

『星神は、我らが近づくと罠が発動するようにしていた……星神自身、この戦いで我らに勝てるとは思っていないだろう。だが、我らの策を見極めようとしている。それはつまり』


 剣士の体が黒に包まれ……やがて、一体の異形へと形を変えた。


『力を求めた者達を変質させ、力を強化した……我らがどんな策を持っているか、情報を得ようとするため理性を喪失させ異形に変えてしまうほどの力を……人間達に与えたのだ――』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ