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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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星神の気配

 天幕の中で一眠りした後、夕刻前の段階でガルク達の索敵が終了した。で、その結果についてだが――


『魔王城周辺……さらに天幕などが存在している敵拠点周辺。加えて、ここへ辿り着くまでの街道……それら諸々を調べた結果、街道方面に何かしら武装している集団がいた』

「それは俺達を脅かす存在か?」

『現段階では調べてみないとわからん』


 うーん、どうするか……。


「その集団についてですが」


 俺が悩む間にソフィアがガルクへ問い掛ける。


「遠視の魔法などで素性は確認できますか?」

『平行世界の者達を調べていた時と同様に、何かしら魔法を使っているのか詳細はつかめなかった。しかし術式がわかれば調査はできるし、人数などはおおよそわかった。より詳しい内容は、距離があるためもう少しだけ待って欲しい』

「人数のほどは?」

『五十名ほどだな』

「結構多いですね……」


 ソフィアが考え込むと、今度は俺がガルクへ話し掛ける。


「しかも街道側ということは、俺達は退路を塞がれているのか?」

『観測した存在が敵であればそういう形になる』

「……魔王城付近に誰かが来る理由は本来ないし、星神と関係している存在という予想で間違いはないだろうな」


 さて、どうするか……俺が悩んでいるとガルクから提言が。


『ひとまず敵の詳細を探ることにする。星神に関連する敵であれば、いずれここへ攻撃を仕掛けてくる可能性は高い。まだ相手側に動きがない以上、今のうちに調査するべきだ』

「そうだな……距離があるから時間が欲しいと言ったな? どのくらい掛かる?」

『居所は判明しているため、数時間あれば』

「わかった。それなら頼む」


 ひとまず話し合いは終了し、俺達は決戦準備を進めることにする。今回発見した存在が敵であったとしても、準備はしなければならない。場合によっては今度こそ決戦である以上は――


 けれど、数時間後に判明したことは、


『星神の気配を観測した』

「ということは敵だな……でも、なぜ襲ってこない?」

『向こうは動きを止めている……推測なのだが、我らが打倒した者達と連携を取ろうとしていたのではないか?』

「ああ、なるほど。でも俺達が早期に倒してしまったため、敵はどう動くのか悩んでいる、というわけか……それで間違いなさそうだな」


 俺は納得し声を上げた後、


「それで、敵の詳細は?」

『うむ、さすがにまたも平行世界の存在……というわけではない。ただ、少々疑問に思う者達でもある』

「それは?」

「人間なのだ、星神の力を持っているのは間違いないが」


 人間……それだけ聞けばなぜ疑問なのかと首を傾げるところだが、ガルクがそう言うのも理解はできた。


「その人間達は星神の力を持っているんだよな?」

『うむ、それは間違いない』

「だとしても、なぜこのタイミングで……そしてどうして人間が、というのが疑問なのか」

『そうだ。ただ星神を信奉する人間が集った、ということであれば我らに攻撃を仕掛けようとするのも納得はいくが……』

「呼び寄せた、ということかもしれません」


 ふいにソフィアが発言した。それに俺は首を傾げ、


「どういうことだ?」

「平行世界の私達を招き寄せた魔族、さらに星神の力を持つ人間……彼らが私達のことを聞きつけて攻撃を仕掛けた……というよりは、星神から何かしら情報を受け取ってここまで来た、と考えるのが自然だと思います」

「魔族の方はそんな気配まったくなかったけど」

「私達の注意を引きつける役目を担っていた、ということなのかもしれませんね」

「だとしたら、喋ることはない……か。ガルク、もしソフィアの推測通りであれば、まだ観測し切れていない敵がいる可能性もあるんじゃないか?」

『現段階で観測はできていないが、あり得なくはないな』


 そう発言したガルクは、一考する。


『ふむ、単純に周囲を索敵するだけでは足らないか? あるいは、魔王城から星神へと繋がる道の方にも何かあるのか?』


 なんだか全てを疑うような事態になってしまっているが……俺としても、ソフィアの推測通り星神が自らを支持する存在に情報を流し、集結させたと考えた方がいいかもしれないと感じた。


「……もう少し、待つべきかもしれないな」


 俺の言葉にソフィアやガルクは不本意といった様子ではあったが、頷いた。


「ガルク、拠点周辺をもう一度索敵してくれ。今度は単純に地上だけでなく、地中を含めて」

『地底にいるかもしれない、というわけだな』

「そうだ。あらゆる可能性……というより、常識などを排除した上で調査を頼む」

『わかった。地中や空なども調べることにしよう』


 ……空なんて荒唐無稽すぎるとは思うのだが、相手は星神の力を宿している存在だ。俺達の考えを上回る何かを持っていてもおかしくはない。


「ソフィア、この拠点をもっと強固なものにしてくれ」

「わかりました」

「それと物資の方は大丈夫か?」

「今回のようなことを想定していたわけではありませんが、物資面については問題ありません。少なくとも敵を発見し、決戦に持ち込むまでは問題ないかと」

「わかった。ガルク、敵の詳細がつかめたら即座に俺が部隊を編成して叩く。平行世界の存在、というような相手でなければ援護要員として天使などを編成しても問題はないよな?」

『そうだな。とはいえ、主戦力はルオン殿と共に鍛練を積んできた者達だ。よって、必然的にルオン殿達に負荷が掛かる結果となるが』

「最終決戦には万全な状況で臨みたいし……どうするかは話し合って決めることにしよう」


 それで俺とソフィア、そしてガルクは――弾かれたように動き始めた。


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