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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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残された謎

 この勝負は一瞬で決着がつく……そう確信させられる、直感のようなものが働いた。

 実際その通りであり……俺の剣と『ソフィア』の剣がぶつかった直後――彼女の剣を俺は易々と両断し、その体に一撃を入れた。


「……どれだけ修練しようとも」


 体を斬られ、消滅していこうとする中で『ソフィア』は呟いた。


「どれだけ力を得ようとも、勝てない相手のようですね……それが、星神を倒すために鍛錬した結果ですか?」

「もっと複雑な理由がある……けど、あんたが消滅する時間で語ることは無理そうだな」

「ああ、そうですか。別に構いませんよ。私としても、理由を知ったからといってどうなるものでもありませんから――」


 彼女の姿が消える。それと共に、交戦していた魔族や竜、さらに天使達が消えていく。

 魔族の中には最後まで踏ん張っていた『シェルダット』もいたが……俺へ向け自嘲的な笑みを浮かべた後、消え去った。


「……これで」


 ふう、と俺は息をつく。


「本当に終わり、だな」

「お疲れ様」


 リーゼが声を掛けてくる。それに対しこちらは、


「むしろ大変だったのはリーゼ達だっただろ。怪我人とかは?」

「ゼロね。それに、百パーセント全力というわけでもなかったし……戦果としては上々かしら」

「切り札を一つ見せたくらいで済んだってことか……」


 俺は周囲を見回す。天幕などはまだ残っているが、人の気配はまったくない。どうやら『ソフィア』が消えて全員いなくなったらしい。


「戦いは終了だな。帰還して改めて星神との決戦準備に入るとしようか」

「ええ、わかったわ……この拠点はどうするの?」

「誰もいなくなったわけだし、放置でも別に――」


 そう言いかけた時、俺はあることに気付いた。


「……リーゼ」

「ええ、どうしたの?」

「この天幕などは、誰が用意したんだ?」


 その質問にリーゼは押し黙る……さらに言うなら、答えられる人は誰もいない。

 カティが適当な天幕の中へと入る。しかしすぐに出てくると、


「生活用品など、野営するときに使うような道具ばかりね」

「そうか……ガルク、これらの道具は魔力で作られた物か?」

「違うな。この世界にある物を購入したと見受けられる」

「であれば、なおのこと疑問だな……仮初めの体とはいえ、この場所にいた者達は実際に作成された天幕の下で休んでいたことになる。休むこと自体は問題じゃない。誰がどうやってこれを用意した?」

「召喚した魔族ではないのか?」


 問い掛けはシルヴィからのもの。けれど俺は首を左右に振る。


「最初の拠点があっただろ? この場所はあそこが破壊されるのを見越して用意された物だとは思うが……他ならぬ魔族が知らない可能性が高い」

「ああ、確かにそうだな……そもそも魔族がこれを用意できたのかは――」

「資金を手に入れる手段はいくらでもあるから良いけど、誰がこの場所に用意したのか、だな」


 もしかすると、まだ敵がいるのでは……というより、そう考えないと理屈に合わない。


「カティ、ガルク。念のために周囲の索敵を頼む」

『了解した』

「わかったわ」

「他の人は何かヒントになる物がないか、天幕の中を調べてみよう」


 俺の指示に仲間達は動き出す。唯一ロミルダについては索敵をするカティの近くに立っていて、護衛の役割を担う。

 その間に俺は天幕の中を調べてみるが……さすがに資料など、情報になりそうなものは見当たらなかった。意図的にそういうものを残さないようにしたのは確実だし、仕方がないか。


「とはいえ、意図的だとしたらこの天幕を用意した存在を隠しているようにも思えるな……」

「ルオン、索敵をしたけど魔物一匹すら見当たらないわね」


 カティからの返答。さらにガルクも『同じだ』と答えたので、俺は決断した。


「なら、一度戻ることにしよう……ガルク、この場所を常に観察し続けるようにしようか」

『そうだな』

「俺は使い魔を上空に張らせておくけど、ガルクの方でも森の中を見られるようにとか、頼む」

『任された』


 というわけで俺達は引き上げる。森へ入る寸前に一度俺は主のいなくなった天幕を見据える。


「最後に残された謎、というわけだな……」


 星神はこの辺りも何か考えているのだろうか? ただ、力を望んだ存在を助けるといっても、それはあくまで魔力面だけのはずだ。となれば、こういう物質面で何か提供する存在がいるということだろうか?


「星神の力を利用している存在……俺達が倒した魔族だけではない。何か他の勢力があるということか?」


 疑問を口にしてみるが、答えは出ない。もし、他に策があるのなら俺達が拠点に戻った際に何かがあるはず。もしなければ――


「このまま、決戦だな」


 本当に、いよいよ……などと思いながらも、心のどこかで引っかかりを感じ取る。とはいえ、ここで迷っていても仕方がない。俺達は魔王城に星神と決戦をするためにやってきたのだ。


「ソフィア達とも相談して、改めて判断するにしても……これ以上障害が生まれなければ、そのまま戦いに入る……ガルク、それでいいよな?」

『ああ、それで問題ないだろう』


 ガルクの声を聞きながら、俺達は森へと入る……そして、何の障害もなく魔王城前にある俺達の本拠に、帰還したのだった。

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