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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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星神が望むこと

「どういう形であれ、私達はあなた方の切り札を一つ潰した」


 こちらが残る賢者の血筋を注視する中で、どこか淡々と『ソフィア』は語り出す。


「この世界の星神にとって、自らの目的を達成するための大きな一歩と言えるでしょう」

「……そちらは、星神から指示を受け、こちらの切り札を使わせるようにしているのか?」

「そういうわけではありませんよ。この世界における星神から力と情報を多少受け取ってはいますが、あなた方の詳細を含め、全貌は教えてくれませんでした」


 こちらが圧倒している戦況を見れば、彼女の言葉はおおよそ真実だろうと推測はできる。


「ただ、その意図は理解できます」

「何?」

「星神は、この戦いの勝利者をなくしたいわけです……いえ、勝利者というより、この戦いで得をする存在をなくしたいと言いますか」


 やや曖昧な言い回しであったため、俺は眉をひそめるが……警戒は続ける。


「この世界の星神にとって私達は異物でしょう。例え星神を信奉し、その助力をするにしても、必要ないか邪魔だと考えているのでは?」

「……つまり、力は分け与えるけど俺達との戦いで滅びてくれと?」

「そのようなものかと」

「鉄砲玉みたいな扱いってことか……それにあんた達は納得しているのか?」

「どのような経緯であれ、仮初めの体を得てこの世界に顕現した以上、目標とすべきものは遂行します。それが例え星神の意にそぐわぬものだとしても」


 ……矛盾した物言いであるのは間違いない。だが、目の前にいる存在は元々仮初めの体だ。矛盾に満ちた物言いでも、問題はないのかもしれない。

 なおかつ、彼女が語った内容は……なるほど、この世界の星神が仮初めの体を持つ存在を利用だけしてやると考えているなら、共倒れになるのが一番だろう。


 俺達に手の内を出させ、なおかつ必要以上に情報を伝えないことで『ソフィア』達が勝利することを妨げる……星神を信奉していながら負けるよう促されている状況に彼女達はどう考えているのか疑問ではあるけれど……目の前の敵は例え自覚していても、俺に剣を差し向ける。

 ただ、俺としては星神の考えに賛同する部分はある……仮初めの体であったとしても、彼女達はこの世界にいてはならない存在だ。この戦いで確実に仕留めなければならない。


 会話をする間も戦局はさらに変化していく。魔族を指揮していた『シェルダット』の下に、とうとうリーゼが到達した。敵の数はかなり減っており、今はクウザとロミルダの魔法が敵の動きを縫い止め、仕留めている状況だった。


「以前の拠点と同じような状況だな」

「ええ、まさしく」


 俺の言葉に『ソフィア』はあっさりと同意した。


「なおかつ今回はもう後がない状況ですね」

「……おとなしく負けを認めるか?」

「こちらは戦術を用意していましたが、それに対し圧倒的な力でねじ伏せられた……ということでしょうか。なるほど、あなた方は確かに星神という存在を討てるだけの資質を持っている……のかもしれません」


 そう告げる『ソフィア』だったが、いまだ戦意は保っている。


「しかし、最後の最後まで抵抗させてもらいます……見たところ、あなたが星神を討つ中心人物であるのは間違いない様子」

「ああ、そうだな」

「であれば、あなたを始末すれば……それが叶わずとも、手傷を負わせられれば、この世界における星神にとって有益なはず」


 それは正解だし、俺が戦線から離脱すれば、星神との決戦は不可能になるだろう。


「実力差がわかっているからこそ、総大将であるあなたがこの場に立っている……リスクがあるでしょうし、本当ならば星神との決戦まで後ろに控えるべきでしょう?」

「そうだが、相手が他ならぬ賢者の血筋であったことなどを踏まえ、俺が出た……もし、そちらが賢者の血筋を隠していたのなら、戦いの結果は違ったものになっていたかもしれない」

「なるほど、私達のことを早く見せすぎたというわけですか……参考にさせていただきます」

「参考にしようにも、仮初めの体だ。元の世界で記憶を持って行くことも無理だろ?」

「あなたに敗れれば、難しいでしょうね」


 勝てばいい、というわけか。俺は呼吸を整え、剣に魔力を集めた。


「それじゃあ――決着をつけようか」


 走る。一気に間合いを詰め『ソフィア』へ挑もうとする。


 だがそれを阻むように『エイナ』が進路を塞いだ。なおかつ彼女の後方に『オルディア』が控え、交戦した直後に俺へ踏み込んで斬撃を叩き込もうという思惑が読めた。

 ならばと、俺は――剣を振る。上段からの振り降ろしで多少なりとも隙はあったはずだが、相手は受ける構えを見せた。一瞬の隙を捉えることができなかったらしい。


 そして、剣が激突し――俺の剣は『エイナ』の剣を易々と破壊し、その体に斬撃を刻みつけた。


「あ……」


 彼女の体がグラリと傾き、消え失せる。直後、後方に陣取っていた『オルディア』が迫り、仕掛けてくる。二振りの剣は鋭く、こちらの世界のオルディアを彷彿とさせる剣閃を見せたが……俺はそれを全て剣で防ぎきって、反撃に転じた。

 その矢先、俺は視界の奥……力を溜め始める『ソフィア』の後方にいる『ラディ』が、魔法を発動させようと構えているのを見て取った。もし『オルディア』に気を取られていたら、魔法を食らっていたかもしれない……と考えたが、俺は気付いた。故に、敵の策は通用しない。


 俺は『オルディア』へ剣を叩き込み、その体が消滅するより先に『ソフィア』へと接近した。もし魔法を放てば、彼女にも害が及ぶ……そういう意図を察したか『ラディ』は魔法を中断し『ソフィア』を守る方に切り替えた。

 俺の剣が『ソフィア』へ届こうとした寸前、結界が生まれ俺の剣を受けとめた。とはいえ、それは一瞬で砕けるくらい強度しかない。相手は全力で魔力を注いでも、今の俺ならば容易く破壊できる。


 そして『ラディ』は前に出て身を挺して俺に立ち塞がる。一方で『ソフィア』は準備を済ませたか剣を構えた――そこで俺は『ラディ』を斬り、その体が消滅した。

 これで一対一。俺と『ソフィア』は、まったく同じタイミングで、剣を振り抜いた。


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