血筋との攻防
一斉に敵が襲い掛かってきた瞬間、俺は全身に魔力を込め、さらに剣を強く握りしめた。そして迫る敵を見据え――最初に襲い掛かってきたのは『アルト』だ。
「はああっ!」
大剣には剣先から柄の部分まで魔力が収束し、その一撃は悪魔でさえも一撃で屠るものに違いなかったが……俺はそれを真正面から受けた。腕に伝わる衝撃と共に、この斬撃の威力を俺は即座に理解する。
相手はこちらの行動に驚いた様子を見せ……わずかな隙を狙って俺は剣を『アルト』へ入れた。体を両断する軌道を描いた刃は、相手の体から魔力を消し飛ばし……消滅する。
「ふっ!」
一撃で倒したにも関わらず、それでも他の敵は追いすがる。次に迫ったのは『フィリ』であり、今度は純粋な威力ではなく技量で……そんな意図を感じさせる剣が放たれた。
俺が受けてもかわしても間合いを自在に変えられる剣筋であり、他の敵はこちらの行動次第で動きが変わる――俺は足を前に出した。そして『フィリ』の剣を真正面から受けた後、弾き飛ばしなおも踏み込む。
強引な攻めに対し『フィリ』は果敢に挑もうとした――が、相手が次の一手を繰り出すよりも先に俺の剣戟が彼の体に入った。それで勝負はつき、彼もまた消滅する。
……おそらく、リーゼなど周囲で戦っている仲間が相手をする場合は、一撃とまではいかないだろう。剣から伝わる感触は相当な魔力が仮初めの体に宿っている。俺はこれまで得た技術によって難なく撃破しているが、もし一撃で倒せなければ今度は俺が逆に踏み込まれるだろう。
能力的に、周囲で交戦する仲間達の所へ行かせるわけにはいかない……次は『エイナ』が動いた。その一歩後方には『ラディ』がいて、今まさに魔法を放とうとしていた。
さらには俺の背後に回る形で『オルディア』が詰め寄る。挟撃かつ、魔法の援護もある。ここで俺はどう動くべきか選択に迫られた。
「決めなさい!」
そして『ソフィア』が叫んだ。これが最大の好機であることを見逃さず、全力で叩き潰せという声を放った。それに対し俺は……まず真正面から来る『エイナ』へと狙いを定めた。
彼女との剣と俺の剣がぶつかり合う。鍔迫り合いに発展した場合、後方から迫る『オルディア』に剣を叩き込まれるだろう。だから即座に剣を弾いて、今度は背後で今まさに剣を放とうとしている彼へ反撃する。
二振りの剣が俺の剣と激突し、金属音を奏で弾かれた。続けざまに今度は背を向けた『エイナ』の剣戟に対し体を反転させて受ける。そこで俺はまず横へ逃れた。
一度間合いをとる……そこへ今度は『ラディ』の魔法が炸裂した。放たれたのは光弾だが、その魔力収束具合は、明らかに天使や魔族のそれを超えている。
もしかわせば仲間に当たるかもしれない――仲間は防ぐことはできただろうが、俺は受けることを選択した。ラディの魔法が俺へ向け射出され、こちらは剣を盾にして――防いだ。
衝撃が腕に伝わってくる。光が拡散し、弾け衝撃波が俺の体へと叩き込まれる。ダメージはない……とはいえ、修行して得た魔力障壁でなければ、多少なりとも衝撃により動きを止めたかもしれない。
攻撃は不発に終わり、隙を見て攻めようとした『エイナ』と『オルディア』の足を止めた。俺はここで一歩退き、状況は仕切り直しに。ただ、
「……いきなり二人やられるというのは、さすがに予想外だったんじゃないか?」
「ええ、そうですね」
あっさりと『ソフィア』は応じる。
「あなたの剣をまともに受ければ、どうやらこちらは一撃もたないようです」
「なら、おとなしく降参するか?」
「まさか。フィリとアルトについては残念ですが……あなたの力をより理解しました。次は絶対にしくじりません」
そう明言した『ソフィア』は剣を抜く。消滅した二人の代わりに今度は自分が動くというわけだ。
「……さっき一斉攻撃をした時に仕掛けていれば、勝敗は違っていたかもしれないぞ」
「かもしれませんね。とはいえ、私は軽々に戦ってはならない存在なので」
「なるほど、自分が消えれば他の者達も……というわけか」
星神の力を利用しているとはいえ、彼女達がここにいるのは魔族が開発した魔法。その支配権は現在目の前にいる『ソフィア』に委譲され、運用されている。
もし魔法を維持する存在がいなくなったら……というわけだ。仮初めの体が消滅するのか、あるいは意思が強制送還されるのかわからないが、この戦いを終わらせることになる。
「俺に教えてしまっていいのか?」
「別に構いませんよ。あなたを倒すことができれば私を倒せる者はいなくなるでしょう」
断言だった。よほどの自信があるようだ。
「ただ、私が戦うのはリスクがある以上、確実な方法をとらせて頂きます」
彼女達が同時に動く。すると先ほどのように間合いを詰め――という雰囲気ではなく、強引に懐へ飛び込むような形だった。
なおかつ『ラディ』も今までにはない規模で魔力の収束を始め……それで意図が読めた。間違いなく『エイナ』達は身を挺して俺の動きを止め、その代わり『ソフィア』の剣を俺に入れるつもりなのだ。
先ほど他ならぬ『ソフィア』が告げた内容から、そう容易に推察できる……それにこちらは、剣を握り直し応じる構えを見せた。




