連なる者
敵が最初に拠点としていた場所からさらに先へ進む間に、一度だけ戦闘があった。今度は森の中であり、遮蔽物が多く身動きが取りにくい戦場ではあったのだが、
「はっ!」
声と共に、俺は魔族を斬る――白兵戦に持ち込んでも、俺達が勝利した。敵の数はそれなりに多かったし、相手は竜や魔族……さらに言えば頭上に天使もいたが、俺達はこれまでに培ってきた連携によって対処できた。
最前線でシルヴィやリーゼが奮起し、クウザやロミルダの魔法が天使を射抜く……こちらの方が数は少ないにしろ、的確に対処できている。
戦闘は十五分ほどで終了し、俺達が怪我もなく勝利した……と、俺は最前線で戦っている面々を見る。リーゼやシルヴィと共に肩を並べているのは、
「ユスカ、大丈夫か?」
「はい」
頷くユスカ……息をつきながら、リーゼ達についてきている。
今回動員したメンバーの中で、一番気を吐いているのがユスカだった。彼が同行しているのは、彼自身はゲーム上の主人公ではあったが皇帝候補というわけではなかったことから……ただ傍らにはカトラもいる。彼女については不安要素もあったので、とある確認作業もしている。
「……アナスタシア」
俺は懐から魔石を取り出す。それは拠点にいるアナスタシアと遠隔会話ができるアイテムだ。
「竜と交戦し、魔石を通して魔力を分析できたはずだ」
『検証は終わった。どうやらこいつらは先代皇帝に連なる者達じゃな』
……アナスタシアは今回召喚された竜については、魔力によってどういった存在なのかがわかるかもしれない、と語っていた。幾度か交戦し、そして今回も調査を進め……ようやく結論が出たらしい。
「ということは、例えば星神が支配している世界ではアベルが皇帝にはなっていたわけだ」
『うむ、先代皇帝が謀略でとか、ネフメイザがどうとか、そういった要素が皆無なのじゃろう。星神の支配による世界じゃ。そのくらいの差異はあってしかるべきじゃろう』
「つまり皇帝の側近とかが今回召喚されている……ならユスカは問題ないにしろ、カトラなんかは大丈夫なのか?」
『皇帝候補にまでなる資格を持っている。ならば、いる可能性も考えられたが……』
と、ガルクが今度は語り出した。
『現時点で影も形も見当たらない……騎士として活動するアベル殿の姿もないとくれば――』
「皇帝が候補となりうる存在を避けていた、という可能性もあるわけだな」
『うむ、そうじゃろうな』
アナスタシアは応じると、自身の見解を語る。
『星神の支配による恩恵を受けている皇帝は、間違いなく自分に害をなす存在や、皇帝という地位を脅かす存在を除けるじゃろう』
「アベル、カトラ、ロミルダ……その三人は候補であるため、いないということか」
『これまで散々竜と戦ってきたが、この世界で抵抗組織に所属していた者はいないことを踏まえると、そういうことなのじゃろうな』
「……ユスカについてはたぶん問題ないけど、カトラについては敵にいることを見つけたら退避させるからな」
『うむ、それでよいじゃろう』
俺はカトラへ目を向ける。視線に気付き首をやる彼女と目が合い……やがてカトラは小さく頷いた。問題ないということだろう。
「先へ進もう」
俺は指示を出して森の中を進む――これ以降、戦闘はなく俺達は拠点近くまで到達した。
「さて、いよいよ本番といってもよさそうだが……ガルク、敵の数などはわかるか?」
『うむ、そうだな――』
問い掛けにガルクは説明し……戦力が結集しているのはわかった。
「ただ、ここまでの戦いではこちらが圧倒していた……なおかつ俺も全力では戦っていない」
『ルオン殿がまだ本気を出していないのは大きいだろう。問題は大将格と戦うルオン殿を敵がどう見るか』
「一番面倒なパターンは、精鋭が一斉に俺へ向けて仕掛けてくることかな」
『その場合はどうする?』
「こっちは全力で応じて瞬殺する……のが理想だけど……」
「問題は賢者の血筋よね」
リーゼがここで発言した。
「私達と同一の存在だから呼ばれた、というのがわかりやすい理由ではあるけれど……わざわざ戦力として残しているのは……」
「この世界にいる同一存在とどうしても戦わせたいという思惑もあるんだろうけど……あちらの世界における『ソフィア』の能力を考えると、精鋭である可能性もありそうだな」
もしそうなら、一斉に突撃してくる可能性もあるか……? 疑問に思っていると、
『待った』
ガルクが俺達にストップを掛けた。
『森の出口が見えたな。あの先に敵がいる』
木々が途切れている場所がある。その先に、小さいながら天幕と思しき人工物が見える。
『敵は動いていない。旧拠点や森の中で仕掛けた戦力以外、あの場所に残っている』
「もうこれ以上、本陣から戦力を割くことはなさそうだな……リーゼ、いけるか?」
「ええ、もちろん」
「ボクも問題なしだ」
シルヴィもまた応じる。そして近くにいたユスカもコクリと頷いた。
他の面々も疲労の色は見えないし、このまま敵を無傷で倒せている勢いを維持して決戦に持ち込む方がよさそうだ。けれど、確認しておくべきことはある。
「ガルク、カティ、地中に仕込みなどはあるか?」
『調査しているが、感じられないな』
「私も同じく」
「わかった、二人はそのまま魔力の動きを監視していてくれ……ロミルダ」
「うん」
「カティの護衛を頼む……が、戦況次第で援護に回るなど、適宜判断して欲しい。できるか?」
問い掛けにロミルダはしっかりと頷いた。
「よし、頼むぞ……それじゃあ、先に進もうか」
俺達は一斉に歩き始める。思わぬ妨害を受けて星神との決戦が阻まれてしまったが、今回の戦いで決着をつけたいところ。
敵の数は多く、またどう動くかわからない以上は現場の判断が何よりも重要になる。リーゼにその辺りを念押ししつつ、俺達は……とうとう森を抜け、真正面に大きな拠点が姿を現した。




