精鋭部隊
――翌朝、俺は仲間と共に敵を倒すべく動き始める。メンバーは昨日と同様にフィリやアルト、カティとキャルンといった面々に加えて、クウザやシルヴィといった主戦力もいる。
「それなりの人数で行動することになる上、俺は敵の大将クラスと戦うことになるから、その間は別の人にリーダー役を任せる……というわけで、頼んだ」
そう言って視線を向けたのは、
「緊張するわね……でも、指示されたのなら、しっかり応じるわ」
リーゼであった。指揮能力は祖国を守っていたこともあり高いし、彼女なら任せられると踏んでのことだ。
「頼む……それと護衛はロミルダ、任せた」
リーゼに傍らにロミルダの姿が。そこでリーゼは一つ質問をした。
「彼女は敵陣の中にいないのかしら?」
「観測できた範囲ではいなかったけど、招かれている可能性はゼロじゃない……が、彼女なら大丈夫だろ」
「どういうこと?」
「オルディアの言葉を受けて、同一人物同士で戦うのは何かしら問題が出るかもしれない。対処法は短期決戦に持ち込むことだけど、ロミルダはそれが可能だ。相手がいかに星神の力を有しているにしろ、竜族の力を結集させた武具を所持しているとは考えにくい」
「なるほど」
――ロミルダの能力は、武器の能力を含めれば間違いなく組織メンバーにおいてトップクラスだ。今では武具も自在に扱えるし、もし自分自身と遭遇しても魔法により一撃で仕留めるだけの力がある。
「ただリーゼ、向こうに『ロミルダ』がいた場合、状況によってはこちらのロミルダが動揺する可能性がある。その場合はリーゼが発破を掛けて、場合によっては加勢してくれ」
「ええ、わかったわ」
同意の言葉を受けたので俺は一つ頷いて、
「それじゃあ、行こうか」
進軍開始。敵の拠点については事前に把握しているため、索敵を行いながら奇襲を警戒し進んでいけばいい。
「ガルク、観察はしているか?」
『やっているが変化はない。とはいえ、向こう側が気付いていないはずないが……』
「まだ悠長にしていても構わないと考えているのか、それとも……」
森の中を進んでいく。やがて俺達の拠点と相手の拠点、その中間地点に到達した段階でガルクが『動いた』と言葉をこぼした。
『隊を組織し拠点を離れ展開しているな。その主戦力は主に天使と魔族、竜だ』
「拠点にいる敵はどうしている?」
『拠点に残る面々。さらに後方へ移動する者達がいる。状況に応じて逃げられるよう退路を確保したと考えてよさそうだ』
「こちらに攻めてくるのは一部隊?」
『塊として大きな隊が一つだけだな。とはいえ人数的には向こうの方が上だ。敵の動き方によっては囲まれる危険性はある』
「それを踏まえた上で、指揮官は誰だ?」
ガルクが一時沈黙する。魔法を使い精査しているのだろう。やがて、
『……向こうの王女はいない。そちらは拠点の防衛だな。指揮官はどうやら、エイナだ』
「彼女か。隊を率いている人物が人間ということで、賢者の血筋というのはかなり重要なのかもしれないな」
「……疑問なのだけれど、相手の世界における賢者の役割は何なのかしら?」
ふいにリーゼが発言。それに対し俺は少し考え、
「星神が支配した世界だと考えるなら、何かしら影響を与えた人物ってことなのかもしれない。でなければ、指揮官という役割は任せないだろうし」
「この世界で賢者は星神降臨を止めるために尽力したけれど、向こうの世界では……」
「降臨を手伝ったとか、あるいは……どのタイミングで星神が世界を支配したのかわからない以上、いくらでも推測はできるな。古代の時代より支配していたなら、賢者だってこの世界とは立ち位置が違うはずだ。けれど、賢者が抵抗してなお、支配されたなら……」
「賢者自身は私達の世界と同じように動いていた可能性もあると」
「そうだ。ただこの推測の場合は、賢者は星神に刃向かった存在ということになるから、指揮官という形で抜擢されるのは奇妙だけど――」
俺達は一度森を抜けた。開けた空間で、そこには既に敵が待ち構えていた。
「早速戦闘だな……全員、気合いを入れてくれ」
指示と共に仲間達は臨戦態勢に入った。同時、俺は一人前に出る。それに対し相手もまた――あちらの世界の『エイナ』が、俺と対峙した。
「ここで雌雄を決しようというわけだな」
その口調は、俺達の世界にいるエイナと同様にしっかりとしたものだ。
「そちらが私達のことを観察していたのは知っている。もう少し留まっていたのならば、仕掛けていたものを……」
「準備が整わなかったという話か。おかげで俺達は無傷でそちらの情報を得た。情勢的には不利だと思うが」
「あくまで情報戦は、だな」
彼女は手を振る。それに応じて後方にいる天使や魔族が臨戦態勢に入った。
「ここまで難なく私達の攻撃を対処できたことは驚嘆に値する……が、その進撃もこれまでだ」
「今度は精鋭部隊というわけか」
「星神という存在を打つべく修練を重ねてきたというのは、相当な努力をしたのだろう。私達からすれば、大いなる存在に反逆するなど到底考えられるものではないが、そればかりか滅ぼそうという時点で、驚嘆に値する……が、同時になんと無謀な行いかと思う」
「そこは価値観の違いだな」
俺は肩をすくめつつ、彼女へ言及。
「そちらは生まれた時から星神の支配を受けていたのかもしれない。というより、そんな話しぶりだ。だとすれば、反旗を翻すなんて発想には至らないかもしれない。だが、俺達は……星神の手によって世界が壊されるなんて、到底許せないしだからこそ戦う」
「星神から救いの手があれば、答えは違っていたか?」
「どうだろうな……とはいえ、結局戦うことにはなっていたと思うぞ。もしかするとそれが……俺の役目かもしれないからな」
「……問答は無意味か。ならば、刃を交えることでどちらが正しいか決めるとしよう」
『エイナ』の気配が濃くなった。それは間違いなく、今までとは異なる力だった。




