付き従う者
移動の最中、アンヴェレートは新たに登場した敵について見解を示す。
「ルオンから話を聞かされて、疑問に思ったことが一つ。それはこうして人を招いたのは果たして星神の仕業なのか、ということ」
「星神の力を持っていた存在……ネフメイザのような存在は倒したし、リズファナ大陸で星神を降臨させようとする勢力も倒した。現在星神の近くに人間がいるとは思えないが……」
「順当に考えたらそうね」
俺の指摘に対し、アンヴェレートは応じる。
現在、俺達は全速力で魔王城へと向かっている。俺やソフィアは移動魔法を所持しているのだが、他の二人はアンヴェレートの補助もあって高速移動できている。そしてアンヴェレート自身も戦闘能力はないにしても移動魔法くらいなら、と完璧に扱えていた。
「でも、私達が観測できていない存在がいないとも限らない」
「……まだ、星神に手を貸す人間がいると。でも、そう思う根拠は何だ?」
「星神が降臨して破壊するには条件がいるのではと推測したわけだけど、それは人間などを媒介にするのでは、と考えたのよ。私達は現段階でどういうやり方で破壊を始めるのか完全に解明できたわけではないけれど……」
「……もしかして」
と、ソフィアがアンヴェレートへ口を開く。
「破壊の力は、人間を始めとした生物を介してでしか成しえない……?」
「可能性はありそうね。古代において真実を知る者が語っていた内容を照らし合わせると、星神はあくまで受動的に、自らが進んで破壊を引き起こすわけではない。これらの情報と推測を考慮すれば、星神は単独で悪さをするのではなく、必ず何者かがいることになる」
「……そうした存在が主導し、破壊が生まれるというわけか」
俺はそう発言した後、幾度となく頷いた。
「今まで得た情報から考えれば、筋は通っているな」
「そう考えると、平行世界から兵力を招いている……その役割を果たしている存在が、どこかにいる」
「その居場所を特定しないと戦いが終わらない、か?」
「かもしれないわね。星神の魔力を使って招いているなら文字通り魔力は無尽蔵と言えるかもしれないけれど、星神の魔力を身に受けてどこまで正気を保てるのかわからない」
「ただ、肉体が滅しても意識が残っていれば……」
「星神に取り込まれるわね。そうなったら今度こそ、世界の破壊が起きるかも」
「だとするなら、まずい状況なのか?」
オルディアが問い掛ける――確かに、俺達に攻撃を仕掛ける何者かが星神の近くにいるのなら、破壊へのカウントダウンが始まっている可能性がある。
「けれど、私達を妨害しているのであれば、まだ間に合うわ」
しかしアンヴェレートはさらに考察を進める。
「準備が整っているなら、わざわざ妨害する必要もない」
「今ならばまだ、手遅れになっていないと」
「そうね……さて、最大の懸念は敵の居所がどこなのかだけれど……」
「星神の近くにいるとしたら、どちらにせよ敵がいる中で決戦を挑まないといけないけど」
「うーん……近くが安全と言えるかもしれないけど、私達が攻撃しようとしているのだから、敵だって警戒はすると思うのよね」
「そもそも近くにいるなら星神のついでに倒せばいい話よね」
と、今度はリーゼが語る。
「そして人を媒介にしなければ破壊はできない……だとすれば、星神としては敵を招いている存在を近くにおいておくかしら?」
「星神はどちらでも良いと答えるかもしれないな」
俺が発言すると、リーゼは押し黙る……正直、どんな可能性もあり得る。
「魔王城へ着いたら、まずは周囲に星神以外の存在がいないか確認する必要がある」
そして俺は結論を述べる。
「索敵していなければ、星神との決戦に入る。敵は増えたがやることは変わらない。もし敵を発見したら、まずはそちらへ攻撃を……そういう段取りでいこう――」
やがて俺達は魔王城付近に到達した。その間に敵の姿はなく、仲間達と合流することができた。そして状況を確認すると、
「魔王城の周辺にいくつも気配か……」
「手出しはしてこなかったから、ひとまず様子見かつ、防衛するための態勢を構築していたが」
代表して俺と会話をするのはデヴァルス。天使は結構な人数が存在しており、彼らが主導的な動きをして防備を固めている。
魔王城の前には拠点としてベースキャンプができており、仲間達が余裕で眠れるくらいの規模になっていた。相当な人数がこの場にはいて、拠点には食料などを保管しておく場所まで用意されていた。
「敵が襲ってこないのは警戒しているためか?」
「その可能性が高そうだが……敵の意図はわからん。迎撃した敵の中には天使の姿もあったし、見覚えのある者もいたが、正直世界が違いすぎて思考も読めない」
「そりゃそうだ。相手は星神に従っているからな。あの魔王だって星神の臣下らしいから」
「そういう世界からやってきた敵ってわけか」
なるほどとどこか納得するようにデヴァルスは言う。
「敵はこちらの動向を観察してはいるようだから、継続して注意はする……とはいえ、魔王城へ踏み込む準備もしないと」
「そうだな……あ、魔王城の中を拠点にするというのは? 魔物とかいないだろ?」
「それ、最初考えたんだが星神へ繋がる道がある場所を……というのは、色々とリスクもあるかなと考えて結局止めた」
「そうか……まあこの拠点でも相当強固だろうし、問題はなさそうだ」
拠点の周囲は侵入を防ぐ柵が設けられ、さらに魔力障壁によって固められているような状況。敵がどれほどの力を有しているのか不明ではあるが、俺達は星神を打倒するために力を得た存在。そうした面々が構築した障壁を破壊するほどの……というのは、非常に困難だろうと思う。
「……所感でいいんだが、今回襲ってきた敵についてはどう考えている?」
「星神に付き従う信者、とでも言えばいいか。ただ相手の世界は支配が世界全土に広がっていることから考えると、その力や特性については警戒に値するな」
そうは言ったが……デヴァルスは肩をすくめ、
「とはいえ、戦ってみた感想としては力不足だ。俺達が油断をしない限り……対処は可能なはずだ――」




