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賢者の剣  作者: 陽山純樹
世界を救う者

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反撃開始

 ソフィアとリーゼへ再び肉薄する竜と天使――とはいえ、その攻防の勝敗がどうなるのかは既に見えていた。最初、ソフィア達は押され気味のようにも見えたわけだが、それにはもちろん理由がある。

 というより、相手の能力を推し量るためにあえて受けに回っていたと言うべきか。星神との戦いにおいては最初から全力で応じた方がいい……と事前に決めていたが、今回の場合は違う。魔力を抑えて相手に手の内をバレないように立ち回りつつ、敵の能力について少しでも情報を得る……ソフィア達の動きにはそういう意図があった。


 そして、情報を手に入れたのでいよいよ反撃開始――ソフィア達が相対する敵へ踏み込んだのはまったくの同時だった。

 そして両者の刃が相手の武器に触れると、敵は勢いよく押し戻された。相手の能力を見極め、圧倒できるだけの力で倒す……今やろうとしているのはそれだ。


「な――」


 竜が呻く。さらに天使は力を引き上げて対抗しようとする。両者とも思わぬ反撃に、驚いているのがはっきりとわかった。


 ――こんな風に戦っているのはソフィア達がこれから何が起こるのか理解できているためだ。魔王城周辺にいる味方も攻撃されているのを踏まえれば、目前にいるような者達が今後も出てくる。

 それを考慮し、可能な限り自分達の手の内を見せないようソフィア達は戦っている……こういう風に戦えと指示していたわけではないが、ソフィア達はそれを実行している。それはひとえに、この前哨戦がまだ続くだろうと考えているためだ。


 シェルダット達を倒しても、後続が控えている。それを踏まえ、自分達の実力については隠す方向で……星神からこの世界について基礎知識を与えられているにしろ、俺達について詳細は知らないことから、そう立ち回れると判断してのことだ。

 実際、こちらが最初から本気になったらシェルダット達は何をしでかすかわからない……勝てないと考えるや、俺達の妨害しようと動くかもしれない。よって、手の内を隠し敵に情報が行き渡らない間に決着をつける。それがベストだと判断しての戦法だ。


「ちっ……!」


 竜は声を荒げつつ、どうにかリーゼの攻撃を弾き返す。戦況は一変し、ソフィア達が圧倒し始めた。敵は防戦一方であり、反撃の糸口すらつかめていない。

 その中で、竜と天使は攻撃を受けきれず体勢を崩す――相手だって達人級の力は持っているはず。実際、姿勢が崩れたといってもそれはほんのわずかな時間。両者ならばすぐさま立て直すことができたはずだ。


 けれど、それは今のソフィア達にとって絶好のチャンス……修行により、わずかな勝機を見いだせるようになった。修行の成果――それがまさしく、この戦いで現れていた。

 もはやこの場にいる者達の実力は、この世界において……いや、もしかすると数多に存在する平行世界においても――ソフィアとリーゼの攻撃が、相手に入る。天使と竜は声を荒げ、どうにかして後退しようとする。


 だが、それは隙をさらに晒す結果となる。ソフィア達は容赦なく追撃。そして二撃目が叩き込まれ――戦っていた戦士二人は消え去った。

 星神に構築された体であるため、魔族のように消え去るようだ……俺はシェルダットへ視線を移す。彼も『オルディア』も、目前の光景に瞠目していた。


「……実力を、隠していたというわけか」

「星神に教えられていなかったのか? それとも、教えを受けてなお侮っていたのか?」


 シェルダットは答えない――ただ、星神はこちらの動向を観察しているにしろ、その実力を余すところなく把握できているかは不透明だ。よって、俺は星神が観測し切れていないからこそ、目前の結果が生じたのではと推測しつつ……俺は横にいるオルディアと共に仕掛ける。

 俺はシェルダット、そしてオルディアは自分自身へ向けて……シェルダット達は同時に剣を構え、まず俺とシェルダットがぶつかった。


 その力は、さすが魔力というほどのもの。おそらく目の前にいる存在は、この世界にいたシェルダットを大きく超える力を所持しているだろう。

 しかし今の俺にとっては――シェルダットが一度俺の剣を弾いて体勢を立て直す。直後、魔力を発した。それは全身に魔力を収束させ、俺を迎え撃つ所作。


「容赦はしない……ならば一撃で決めてあげるよ!」


 宣言と共にシェルダットが一転、突撃してくる。それに俺は応じるべく足を前に出した。一気で間合いが詰まり、俺とシェルダットの剣が一閃される――!

 勝敗は、一瞬でついた。剣が激突した瞬間、俺の剣がシェルダットの剣を切断し、その体へ一撃を叩き込んだ。


「あ……」


 シェルダットは声を発する。同時、その体が大きく吹き飛び……倒れ伏した直後、シェルダットは消え失せた。

 残るは『オルディア』だが、こちらも勝敗がついた。二刀流というのは変わらないが、連撃を受け圧倒された『オルディア』は幾度も剣戟を食らい、驚愕の表情を見せる中で消滅した。


「……対処できる相手で良かったわね」


 と、リーゼは呟く。圧倒的な力で勝利できた……が、これを星神が見ているとしたら――


「ガルク、魔王城周辺の状況は?」

『こちら側の勝利だ。被害もゼロ、怪我人もゼロだ』

「それは良いけど、ガルクが戦う前に話した通り、威力偵察の可能性が高そうだな」

「……無限に存在する平行世界から人を招くことができるなら」


 と、ソフィアは剣を収めながら言及する。


「延々と同様の敵が出てくる可能性があるのでは?」

「どうかしらね」


 と、否定的な見解を述べたのはアンヴェレート。


「さすがに無限とはいかないでしょう。そもそも、平行世界から人を招き寄せる……それがあくまで意識だけで体は生み出すにしても、魔力を相当消費するはず」

「星神の魔力は世界とイコールと言っても差し支えない規模ですから、そうした魔力を用意するのは困難ではないでしょう?」

「ソフィア王女の言う通り……だけど、これは本当に星神がしでかしたことなのかしら?」


 それは一体どういう――俺が尋ねようとした時、アンヴェレートは告げた。


「とにかく、魔王城へ向かいましょう。移動スピードを上げて……このメンバーなら夜通し進むこともできるでしょう。強行軍になるけれど、それが一番やるべきことね――」


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